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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第五章 Unidentified

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堕落、からの覚醒

Side Finlay


そうして、いくらか過ぎた。


俺の離宮は、年若いメイドにとっては、人気の就職先になっていた。

大の大人が、未だ成人してない俺に抱かれに来る。

それが、あまりにも滑稽で、同時にこの国の闇を描いていて、そして何よりその中に自分がいることが、どうしようもなく情けなくなった。


だが俺はやめない。この国の王になることは諦めた。民衆は、俺から離れていった。家族や婚約者は、俺への興味を失った。

もはや、俺を見てくれるのは、彼女たちだけなのだ。


惰性で続けている勉強だって、俺を見てもらう材料に成り下がっていた。


俺は一体何をしたかったのか、忘れた。ただ惰性で、俺は昨日と変わらない日々を過ごす。

いいものを食べ、惰眠をむさぼり、遊んで暮らす。

これが、死ぬまで続くと思うと、発狂したくなった。


贅沢は、こんなにつまらないものなのか。だが、もう俺には何も残っちゃいなかった。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



そうしてさらに数年が過ぎた。

その時になると、俺は更にメイドたちの中でも人気になった。

だが、その人気はあまりにも空虚だった。


そんな時だった。

俺に、セオドアへの留学が決まったのは。


その時の俺は、暗殺者からも狙われていた。

どんなに評判を落とそうが、俺は最初からかなり悪印象だった他王族よりは人気だ。それが、クソ兄貴よりも俺が王になった方がいい、という派閥ができたのだ。それも、高位貴族が何人か所属しているらしい噂も聞く。


結果、俺はクソ兄貴が無事に王座につけるよう、暗殺者を送られる羽目になった。


だから俺は、私財を投じて護衛を付ける。暗殺者から、俺を守るために。

流石に俺だって、死にたくない。当然の帰結だった。


だが、俺は何年も前から、小遣いはなくなっており、自由に使える金がなかった。


そこで、俺は離宮にあるものを、いくつか売り飛ばし、そこで作った金で護衛を雇う。

それを繰り返しいたが、限界はあるもので。


その限界は、もうすぐそこまでやってきていた。そんな矢先の出来事だった。


「セオドアに行くか」

セオドアは、元々ロースタスの貴族だった一族が興した国だ。


だから、俺は行きたくなかった。ロースタスは、女に現を抜かした結果、喧嘩別れで国を三つに分断させた、愚か者が統治する国だ。

一体何を言われるのか、分かったもんじゃない。



そう思っていた。だがそこでは、イーストフールを半ば追い出される形で留学した俺を、軽んじる者は誰もいなかった。


更に、イーストフールで学んでいた時よりも、高度な学問を学ぶことができた。

すぐに迎えた初めての定期テストは、惨敗だった。


俺は、なんだか負けるのが悔しくて、久しぶりに真面目に勉強した。

すると、すぐにテストの点は伸びた。しかし、いい得点を取ったとしても、上をいく者がいる。


それでも、さほど悔しくはなかった。

昔感じていた、鬱屈とした気持ちは、もはや欠片も感じなかった。


寮では女人禁制で、なおかつ夜は外出を制限される。普段の外出だって、許可がいるくらいだ。女と遊ぶことはできなかった。

だが、俺は女と遊ぶことが好きでもなかったため、どうでもよかった。



だが、相も変わらず暗殺者たちは、送られてくる。俺は、気になることがあり、あえて無防備に夜の寮を歩き回ったのだが、一向に暗殺者たちは現れない。しびれを切らしていると、血の匂いがした。

急いで駆けつけると、先客がいた。

一人はマティアス王子の護衛のアイン、もう一人はAクラスのラファエルという青年だった。


元々、暗殺者は何者かにひっそりと倒されていた。

一度、寮の部屋に入られたことがある。その時に、覆面の男に助けられたことがあり、それで気づいたのだ。


その覆面の男は、ラファエルだろう。


俺は、そんな実力者二人に囲まれ、かなり緊張していた。

俺を殺すメリットは、何もない。そのことだけが、妙に俺を勇気づけていた。


だが、それも杞憂だったようで、この暗殺者たちを送ってきたのは、マクレーン公爵だと知った。

俺は、清廉潔白と名高い公爵家にすら、命を狙われる羽目になったのか。絶望のあまり、つい声を荒らげてしまうが、アインは冷静な声で、マクレーン家の本性を語りだした。


俺は、その話が本当か、判断がつかなかった。でも、本当であれ、と願うべきなのだろう。

ただ、それと同時にイーストフールの闇の深さに、やるせなくなった。


クソ兄貴が、あの国をまともに統治することができるのか。いや、無理だな。でも、俺はもう、何もしたくない。

何をしても否定される。真面目に生きるのが馬鹿らしい。真面目に生きて損をするのと、贅沢に生きて得をするなら、皆後者を選ぶ。


だが、アインはそんな俺に、イーストフールの王になれ、と言った。

比較的ロースタスの中でまともな王族は、俺しかいないから。


そのあとで、アインに手引きされ、夜の街へと繰り出すことになることを、当時の俺は知らない訳だが、そんなのはどうでもいい。



生徒会に入った。俺が、初めて認められた気がして、内心嬉しかった。

副会長という役職を貰い、そして仕事をする、というのはとても楽しかった。

俺は、書類仕事が向いているらしい。しょっちゅうミスをするマティアス王子やカーティスの不備を訂正する毎日。

それが、案外楽しい。


そんな日々が、ずっと続くと思っていた。


しかし、イーストフール、及びロースタスの問題を片付けないと、俺はそんな平和で幸せに満ちた日々を、送ることができない。

だからこそ、イーストフールに帰ってきた。全ての因縁を、終わらせるために。

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