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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第五章 Unidentified

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恋バナ

Side Sue


「俺たちは、とある人物に依頼されて、貴女を護衛していたんです」

「とある人物……。イアンかしら?」

「「「イアン……?」」」

イアン――要の名前を出すと、彼らは首をかしげる。どうやら、要が依頼した訳じゃなさそうだ。


じゃあ、皇君?でも、要のことを知っているように見えたけど……。


「えっと、依頼主は……」

「馬鹿、依頼主がいくら知り合いでも、言わないの!」

「もも、もちろんだよ!まさか、この俺が口を滑らせる訳ないだろ?」

「へえ……?」

「な、なんだよ!」

彼らは、とても仲がいいようだ。私は、にこにこしてその様子を見守る。


「じゃあ俺はちょっと知らせてくるから」

ラファエルさんは、私たちに背を向けた。


「何で」

「そういう約束なんだよ。じゃ」

そう言って、立ち去っていってしまった。


「終わった」

「絶対笑顔で詰められるやつだこれ」

「何であいつこんな時まで真面目なんだよ!!」

そして、何人か地面に手をついていた。


「だ、大丈夫かしら……?」

「いえ、貴女が心配する程ではありませんよ!」

「そうです。ただ、笑っていてくださるだけで、我々は幸せです」

「ああお美しすぎる……!身も心も!」

「えっと?」

そのうちの青年たちは、私の手を取って、跪いた。

その顔は、とても輝いていた。



「なら僕が笑ってあげようか?ちょうど、性転換薬があるんだよね」

「出たー!!」

突然聞こえてきた、聞き覚えのある声に、彼らは絶叫した。


「あ、皇君!」

「外ではアインと呼んでよ、スーさん」

「皇君?スーさん?」

「あ、そうね。ごめんなさい」

確かにそうだ。皇君も、隠れなきゃいけない人だ。


「美女に謝らせるんじゃねーよ」

「そうだそうだ!」

「なら、僕の依頼を完璧に遂行してから言ってくれる?」

皇君は、笑顔で彼らを威圧する。かなり気安い関係のようだけど、まさか?


「アイン君、まさか――お友達かしら?」

「え?スーさん、違うよ、彼らは――」

「え、お友達いなかったタイプの人?」

「マジか」

「めっちゃいそうなのにな」

「スーさん、余計なことを言わないで!――それよりも、大丈夫?」

彼らからの茶々に耐えきれなくなったのか、少し大きな声を出す皇君。要以外の友達がいて、嬉しいな。


「ええ、大丈夫よ。助けてくれたんだもの」

「ならいいけれど……。今後は、不用意に外出しないでよ?」

「そうね、心配かけてごめんなさい」

私は、素直に謝った。要と夫婦になってからずっと、平和だったから、いつの間にか平和ボケしてしまっていた。


「それにしてもアイン、奥さんいるなら言えよ」

いつの間にか帰ってきていたラファエルさんが、そんなことを言った。

私は、驚いて終黙り込んでしまう。


「いないけど」

「え?いやだって――」

「スーさんが僕のことを夫だって?スーさんはかな――イアンのことを愛しているのに」

「その、イアンさんって誰?」

「はあ」

少女がした質問に、皇君は溜息を吐いた。


「イアン・ネルソン。若きA級冒険者で、愛妻家。その妻は、そこにいるスーさん。僕がした依頼は、そのスーさんの護衛依頼。僕もイアンも、しばらくここを離れることになったから、その間のことをお願いしたんだ」

「そうなんだ。それにしては、早く戻ってきたな」

「事情ができてね。ただ、機関一杯はきちんと護衛してもらうからね」

皇君は、大変そうだ。あ、そう言えば。


「すめら――アイン君、その親指の指輪、どうしたの?まさか、好きな人から――!?」

「え、好きな人いるのか!?」

「恋バナ恋バナ!」

私の発した言葉に、一気に色めきだす面々。特に、少女たちが興奮していた。しかし、その中でラファエルさんは心当たりがあるのか、まさか……、とつぶやいていた。


「違うから。これは、僕の身分を証明してくれるもの。用事の一つが、ステラでの叙爵式だったんだ」

「叙爵式?」

「なにかしら、それ?」

「元々、二年前くらいに公爵になっていたのを、ずっと躱し続けていたけれど、とうとう逃げれなくなったから、公爵になってきたんだ。その時にもらった指輪。そもそも、好きな人からもらうなら、別の指にするよ……」

確かに、要から聞いた話だったから、少しあやふやな部分がある。確か、指輪は結婚の証として、左手薬指につけるのが風習、だった筈。


「それにスーさん、僕は結婚する気もないから。何なら切り落としてもいい」

「だめよ!そんなことしないで」

「それに、僕が恋するのは――ね。世間体が悪いし」

「あ」

確かに、要と皇君の婚約状態は、今も続いたままだ。確か、夫側は重婚できるけれど、妻側は重婚できなかった筈。

それは、婚約者にも言えることらしい。だから要が私と結婚しても、皇君は何も言わないし、何も思わない。

けれど、自分のことになると、たとえ仮のものでも浮気。本当に、真面目だなあ。


「世間体……?」

「匂いますなあ、これは」

「ひとまずスーさん、家に帰ろう」

「え、ええ、そうね。じゃあ――」

「えー!!恋バナしてかないの!?」

「ラファエル、スーさんに目隠し必要?」

皇君は、そんな声をすべて無視して、ラファエルさんに話しかけた。あれ?これもしかして――。

皇君の体の話は、皇君から許可を得た要から聞かされている。それにより、皇君の恋愛対象が、男性よりという事も。


「悪いな。あまり、ここへの道は覚えて欲しくないんだ」

「そこは、スーさんも理解してくれる」

「大丈夫よ」

私は、笑って見せた。すると周囲からは、可愛い、とか、美しい、とかそういう言葉が聞こえる。


「もしかして、アイン君の好きな人って――」

「どうしたの、スーさん」

「ラファエルさんって、格好いいわよね」

その瞬間、皇君がピシッと固まった。それはもう、突然医師になったのかと、勘違いしてしまうくらいには。


「――それ、イアンには聞かせないでよ。僕が怒られる』

「そういう意味じゃないの!」

「そう?でも、冗談でも言っちゃいけないよ。イアン以外の男は、皆醜男だと言い切るくらいじゃないと」

そういう皇君の顔は、とても青い。私は、皇君に悪いことしちゃったな、と反省した。


「あ、もしかしてアインの好きな人って、ラファエルのことか!?」

「違う。全然タイプじゃない」

そうか。もしや、と思ったのに残念。あ、でも性格的に自分に絶対的な自信を持っていそうだったわね。

ラファエルさんじゃ、少し違うかもしれない。――隠している、というのも考えられるけど。


「おい、俺が振られたみたいになるだろ、やめろ」

「そういうラファエルはさ、アインと一緒にいて、なんかないのかよ」

「ない。俺の恋愛対象は女性だ」

ラファエルさんはきっぱりと言った。

確か要は、魔族は、恋愛に性別は関係ない、というのがほとんどらしい。といっても、男女で結婚することが多いらしいけれど。


「そういうこと。僕の好きな人は、誰にも言わないから。――ほらスーさん、行くよ」

皇君は、そう口早に言って、私に目隠しをまいた。


しばらく移動して、次に視界が開けた時には、家の目の前にいた。

私は、そのまま皇君と別れ、あの時のことを思い出す。


そうすると、なんだか暖かい気持ちになれた。

星、評価、感想お願いします!



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



Side Raphael


「なあ、さっき性転換薬って言ってなかったか?」

アインとスーさんがここから去った後、そう呟く声が聞こえた。


「言ってたな、性転換薬って」

「マジで!?同人誌でよくある女体化属性もあるのかよ、この世界!」

「ラファエル、次会ったらもらってきてくれよ!」

「いいけどさ、確約はできないぞ?」

まあ、アインがあの言葉を発してから、こうなることは読めていた。


「そこを何とか!」

「無理なものは無理だからな!?一応、聞いてみるが」

「やっふーい!!持つべきものはコネがある友だぜ!」

「ホント、男子って好きよね、そういうの」

「だって、気になるじゃんかよ」

「あのアインだって、気になったから作ったんだろ?」

「マジかよ。同類じゃん」

この非モテたちは、何とかアインと自分の共通点を探そうとして、興奮していた。


「悪いが、恐らく違うと思うぞ」

「何でそうなるんだよ」

「お前の願望だろ」

「三行で説明しろ」

「元々作りたかった薬の、副産物らしい。かなり処分に困っていたから、まあくれるかもしれない。が、危険な薬があるということを理由に、部屋に入るのを断られたことがある」

「嘘乙」

「はい嘘」

「ピュアすぎワロタ」

俺の言葉に、腹を抱えて笑っている奴がちらほらいるが、アインとはたまに、試験管持っている所に出くわす。

いや、部屋以外でも研究してんのかい。


「命令だ、アインの部屋に忍び込んで来い」

「何でお前に命令されなきゃいけないんだよ。そして、俺はアインから真っ当に許可を得て入るから。流石に、毒薬にうっかり触れて死にたくない」

「……マジ?」

「あと、とんでもない媚薬とか、解毒剤がない毒薬とかもあるらしい」

「媚薬……」

「やめとけよ?命に係わるレベルの毒薬と一緒の扱いだぞ?」

数人、媚薬という言葉に反応したが、釘を刺した。


「とにかく、待て。俺が聞いてくるから」

かなりの不安を抱えつつも、俺はここから外に出た。もうそろそろ、寮に帰らなきゃな。

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