護衛依頼
ちょっと間が空いてすみません!これからも、ちょくちょく投稿していきます!
Side Sue
「あらやだ!卵買い忘れちゃった!」
私は、慌ててバッグを持って家を出る。
そう言えば、あの時も皇君と一緒に買い物に行ったな、と思い出す。
あの時は、物凄く気まずかった。
けれど、八百屋の店主のお陰で、打ち解けることができたんだっけ。
今もその店主は健在だが、息子夫婦も一緒に店頭に立っている。
将来、どうやら跡を継ぐ予定らしい。
ああ、時間を感じるな。
今日は、息子さん夫婦はいないようだ。店主夫婦で店に立っている。
「いらっしゃい!お、スーちゃん!相変わらずの美魔女だなぁ!」
しわが増え、白髪が増えた店主が、相変わらずの世辞を言う。
「こらあんた!なーに人妻に鼻伸ばしてんだい!」
「あいた!」
相変わらずの店主に、店主の奥さんがやってきて、店主を豪快に叩く。私は、相変わらずな二人に笑ったが、10年前よりも、しわと白髪が増えた。
でも私は、昔と全く変わらない。今も、要と結ばれた時と同じ、20代の見た目。
今は、全然誤魔化せるが、いつか誤魔化しが効かなくなるかもしれない。
「卵を買い忘れちゃって。――いいのあります?」
「おうよ!うちの卵はみんな新鮮さ!」
「あんたねぇ!ほらスーちゃん、この卵がお勧めだよ!」
店主の奥さんが、いい感じの卵を見繕ってくれる。
「いつか、その美貌を保つ方法を教えてくれよ」
「ははは……」
私は、適当に誤魔化した。流石に、彼岸の魔族と結婚すれば、寿命がかなり延びる(その彼岸が半身だった場合に限る)という事を、教える訳にはいかない。
人族の国では、魔族はかなり少ない。
素性を隠す要のためにも、それを言う訳にはいかない。
「毎度あり~」
「ありがとね~」
店主夫妻に手を振り、私は帰路についた。
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「君さ、めっちゃ美人じゃん。なあ、俺たちの相手をしてくれよ」
「天国を見せてやるぜ?」
ガラの悪い二人組の男たち。私は無視した。
私は不倫はしないし、要という愛する夫がいる。
それに、私は要がいなかったとしても、絶対相手にしない。
「ほら、俺たちめっちゃモテるんだよ。めっちゃ顔いいしな」
「な?テクもいいしさ」
「……」
私は、ひたすらに無視する。一体どこが顔がいいんだろう?
昔の客とか、要や皇君の方が、ずっと綺麗だ。
それに、にやにや笑っているのが、気持ち悪い。昔、私をベッドに誘おうとした客のような目つきをしている。
「おい、調子に乗んなよ!」
「美人だからって、お高く留まりやがって!」
そう言って、男たちのうち一人は、私の腕を掴んだ。
「キャッ!」
かなり強い力で掴まれたため、思わず口から悲鳴が漏れる。
「こっちこい!」
「優しく言っているうちに素直に応じればよかったのにな?」
「いや!放して!誰か助けて!!」
男たちは私を裏路地に引き込もうとする。
私は、必死に抵抗するが、男の力に敵う訳もなく、ズルズルと、引きずられていく。
必死に助けを求めたが、通行人がいない。それでも、諦めない。
「誰か!助けて!」
「黙れよ!」
「――!!」
私を掴んでいない方の男が、私の口をふさぐ。それでも髪を振り乱しながら、何とか拘束から逃れようとする。
しかし、一向に拘束は緩まない。涙があふれてくる。
「おい、やめろよ」
唐突に、そんな声が上から聞こえた。
「誰だ!」
「これは合意なんだよ。関係ないやつは引っ込んでろ!」
私を掴んでいる男たちが叫ぶ。
上を見てみると、そこには三人の男女がいた。
「そうは思えないな」
「女の子襲うとか、サイテー!」
「そんなことしなきゃ、相手がいないんですかー?」
「てめぇ!」
「降りて来い!」
彼らは、男たちを煽る。男たちは、その挑発にまんまと引っかかり、懐からナイフを取り出した。
それと同時に、私は解放された。
「!!」
私は、逃げようとしたが、足が震えて動けない。逃げなきゃ!で、でも……。
「こっちだ」
「え……?」
私は、声がした方を見た。そこには、白髪赤眼の青年がいた。
「ダッサ。悔しければここまで来たら?」
「調子に乗るなよ!」
男たちは、すっかり彼らに夢中になっていた。
「じゃ、さっさと逃げるか」
「え?」
私が困惑している間に、青年は私を抱え上げ、そのまま飛んだ。
「えええ!?」
「じっとして。落とすから」
「は、はい……」
私は、すっかり青ざめてしまった。
こっそり下をうかがうと、そこには家の屋根が……。
「あ、ちょっと!」
私は、その青年の慌てた声を最後に、気絶してしまった。
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「おい、どうするんだよ」
「なんで連れてきた」
「さすがに、知らない人に家知られてるとか、怖いだろ」
「いや、依頼人と知り合いじゃん」
「それでもだ。それに、見た感じ普通の人間ぽかったし、目隠しすればいい」
そんな会話が、聞こえてきた。私は、びっくりして飛び起きてしまった。
そこには、少し年齢がバラバラな、男女がいた。
その中には、私を助けてくれた人たちもいた。
「お、起きた?」
「あ、ええと、はい……」
「ラファエルが空飛ぶから~」
「まさか、気絶するとは思わなかったんだよ」
「うわ。そういう所がモテないんだよ」
「お前だってモテてないだろ」
「なにを!」
「ええっと……」
「ちょっと!困惑してるでしょ!」
私は、言い合いを始めた彼らに、何を言ったらいいか考えあぐねていると、それに気づいたらしい少女が、彼らに注意した。
「あの、助けていただきありがとうございます。それで、ここは……」
「隠れ家的な?あまり人に話してほしくないんだ」
「分かりました」
「悪いがな、そういう――って、え?」
なにやら、訳ありのようだ。別に、秘密にすることは問題ないため、素直に了承する。
「それは嬉しいけど……」
「それよりも、聞きたいことがあるの」
私は、白髪赤眼の青年――ラファエルさんに、目を向けながら言った。
「貴方、彼岸ね?」
「えっと……」
「いいのよ、隠さなくても。私の夫は、彼岸だから」
要は、空を飛ぶことができないけれど、翼を生やすことはできる。だから、魔族の翼は何度も見たことがあった。
彼は、翼の形から見て、天使なのだろうか。
「ええ!?」
「じゃ、こ、この人って、ま、まさか……」
「羨ましい!!!なんで、イケメンはこんな美女と結婚できるんだよ!それに、まだめっちゃ若いだろ!」
「俺もイケメンに生まれたかった!!!」
「お、落ち着いて……」
どうやら要を知っているらしい。要、物凄い有名人ね。
「い、一体、どんな人なの!?」
「えっと……?」
「貴女の旦那さんよ!」
「とても格好良くて、強い人です。いつも私を気遣ってくれて……。笑顔が素敵な人ですよ」
「……想像がつかない!」
「顔か!?やっぱ顔なのか!?」
「いつも仏頂面なのに!?」
「のろけだ……のろけだ……」
そ、そんなに要は不愛想なの……?街の皆から、旦那さんはいつも笑っていていい人ね、とか言われているのに!?
「そ、そうだ、血!血はどう吸うのか!?」
「それはちょっと……」
「ちょっと、デリカシーどこに置いてきたのよ、このノンデリ!」
「だって気になるだろ!?」
他の吸血鬼のことを、よく知らないけれど、普段しっかりしている要は、吸血の時は甘えたになる。そこが、また可愛いのだ。
「ともかく、その、依頼という言葉が聞こえたんですけど……?」
「「「あ」」」
私の言葉に、あの助けてくれた、ラファエルさん以外の三人が、物凄く叱られていた。




