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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第五章 Unidentified

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堀を築く人と堀を埋める人

Side Noah


僕は、影からこっそりと、その一部始終を見ていた。


「さすがだね」

「まさか、あそこまでやるとはな……。貴族の教育なんか、全く受けてないだろ?」

「それでも、普段から貴族に囲まれて過ごしているから、自然と学んだんじゃない?」

僕は、ゼスト君と一緒に婚約破棄騒動を、アイン君がどう解決するのか、見ていたのだ。


「それにしては、色々と慣れてた気がするがな」

アイン君は、僕たちの存在に気づいている。先ほどから視線が送られてくる。

その視線の中に、助けて欲しそうな色はなかったが、少し僕たちを非難するようなものが混ざっていた。



貴族の統制はうまく行っていないと思われたかもしれないが、ある程度は本人の良心とともに政治をする。


こんな身勝手に、目先の利益に囚われて他人をないがしろにするような人材を、近くにはおかない。

唯一無二の価値を示してもらわない限りは。



「ところで、アイン君は名誉貴族になるって」

「意外だな。アインなら、貴族になるメリットも分かる筈なのに」

「そのメリットが、魅力的じゃなかったんじゃない?だって、絶対に誰とも婚約しない、って前々から言われてたよ?」

蝙蝠に括りつけられた手紙から、貴族になりたくない、という文言と共に送られてきていた。



「なんだか、色々とフォローする必要もないくらい慣れていたし、拒否の理由は、気遅れじゃないのは確実だな」

「そうだね。アイン君、なんだかんだ言って遠慮しちゃうけど、あれは違うね」

そもそも、アイン君はきっと、これを考えての辞退だっただろうし。



アイン君の生まれは、久遠の魔王族。そこの第九魔王子。

だからこそ、貴族への対応は手慣れているし、面倒な事態を避けるためにも、叙癪を固辞したのだろう。


結果、僕にほぼ強制的に貴族にされたが。

リズちゃんに指輪を先に作ってもらってよかった。そして、それを伝えておいてよかった。


アイン君は、リズちゃんのお願いに案外弱い。

それは、自分の武器を作ってもらっている、という感謝の念からくるものだ。


だから、公爵位を証明する指輪を付けて欲しい。もう作ってあるんだ、と頼まれれば、流石のアイン君も頷かざるを得なかっただろう。



「それにしても、あいつら覚えておかなきゃな。役職の方も、考えておかなくてはな」

「そうだね。それと一緒に令息の方の婚約者も、見繕ってあげなきゃね。流石に、九星が起こした問題だから」

アイン君に目が眩んだ結果だ。


あの子は、見た目だけの存在じゃない。

というか、九星内で最も頭がよく、そして立ち回りも上手い方だ。


かなり苦しい立ち回りばかりを要求されるが、多分あの子のことをよく知っていたとしても、あの子の思いのままにしか動けないんじゃないだろうか。

未来が見えない僕にも、同じことが言える。


だから正直、ラース君に色々と話を聞けて、そして僕に協力して貰えたのは、かなり嬉しい。



アイン君は、相手に自分がさせたいことを強要させる。

だからこそ、相手が自分に強要することも、最終的には受け入れる。


だから僕は、ずっと強要する。アイン君に、これから先を生きることを。


そしてそのためには、外堀も内堀も埋めなければいけない。

そう簡単には埋めてくれないだろう。


でもこれは足掛かりだ。僕は、しばらくはアイン君の名誉貴族化を受け入れるつもりはない。


いずれかは認めなきゃいけないだろうけれど……。それは、まだ先の話だ。



「はあ、そういうことは、俺にすべて任せるんだろ?」

「もちろん。頼りにしてるよ、ゼスト君」

面倒くさそうな表情を擦るゼスト君に、僕はとびっきりの笑顔を浮かべる。

そんな僕に、ゼスト君は溜息を吐いた。


「アインにも協力してもらうか……」

「そうだね。アイン君、結構貴族に関しての情報を持ち合わせてるし」

アイン君が皇月影なら、知っていても当然だと思うし。


ミリアちゃんの実家である、ツァオバークンスト侯爵家を潰したのは皇月影だ。

元々、軍にあまりいい感情を抱いていなかった、選民主義の魔術師一族。


だからこそ、あそこの当主は皇月影にもいつも突っかかっていたらしい。

それを邪魔に思った皇月影によって、殺された。

不正をでっちあげて、議会で糾弾したのだ。


ツァオバークンスト家がそんなことをやっていないことは、恐らくかなりの人物が知っていただろうが、もはや手遅れだった。


証拠はすべてそろっている。あとは、処分を下す。たったそれだけ。

それに、皇月影はかなりの権力者だ。

彼の意向をすべて無視した処分を下すこともできなかった。


一番は、彼が九星という、手駒を持っていたからだろうが。



そういうこともあり、アイン君はかなり貴族の情勢に詳しい。


「そうなのか?これからいろいろと調べてもらおうと思っていたが、手間が省けたな」

ゼスト君は嬉しそうだが、そもそもアイン君が生活している国は、セオドアだ。

アイン君だから、全て知っていても許されるのか?


そんな馬鹿な。あの子まだ13歳だぞ!?


「確かに、この国の貴族を昔暗殺しまわっていたし、他国の貴族のことも詳しそうだな。アインは几帳面だから、情報の更新は欠かさないだろうし、理解できるかもな」

ああ、確かに……。でもアイン君は情報を取る前に暗殺していると思うよ。


でも、そんな不自然なことを言える訳もなく、翌日にアイン君を呼び出すことを決めるのだった。

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