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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第五章 Unidentified

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気まずい弟とそうでもない護衛

セオドアに戻って翌々日。


今日は、マティ様とジェシカ様、更にジーク様も一緒に、街へと繰り出すらしい。


元々、その日にお出かけするのが決まっていたらしい。


ただ、気楽に行きたいものの、王族とその婚約者という組み合わせであるがゆえに、護衛は欠かせない。

更に、視覚からの牽制も必要なため、仰々しい護衛も必要だ。


だから、当初は近衛騎士団長である、エドガーさんが付いて回る予定だった。



しかし予想外に僕の予定が空いたため、特に近くにいても違和感がない上に強い僕に、任されることになったのだ。


と言っても、他の護衛がいないという訳ではない。

いくら強くても、一人では限界がある。



僕は、セオドアでは特に組織に所属している、という事はない。

ただ、仕事内容が近衛と被るため、エドガーさんとは自然に親しくなった。


アルフレッド様よりも威圧感が少ないのもあるからだろう。


そして、エドガーさんはかなりの実力主義だった。

僕が、昔手合わせした際に、エドガーさんを瞬殺してしまい、それから尊敬の念を抱かれるようになった。


僕の今の身分は平民なのに、様付けで敬語なのだ。周囲の視線が痛い。

何とかマティ様も巻き込んで、様付けをやめてもらった。



「今日、貴方がいるお陰で心強いですよ」

「そうですか?エドガーさんも、強い方でしょう」

「それでも、アインさんには瞬殺されましたから……」

「相手が悪かったのですよ。そんなことより、今日のルートを教えてください」

「はい、わかりました」

近衛騎士団では、長が僕に瞬殺したことは公然の事実だ。

彼らは、エドガーさんに洗脳され、完全な実力至上主義に染まってしまった。


だからこそ、彼らの中で最も強いエドガーさんを倒してしまった僕は、かなりの崇敬を集めてしまっているのだ。


だから、よそではかなり厳しい目を送られるこの状況も、近衛騎士団の中では暑苦しい視線が送られるのだ。


組織によって、かなり性格が違うのは、どこでもいっしょだ。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「久しぶりだね」

「お久しぶりです。夏ぶりですね」

ジーク様と挨拶を交わす。表面上はにこやかだが、どことなく困っている様子だった。


「僕がいてもいいのかな……一応、兄上とジェシカ嬢のデートでしょ?」

「それは……僕が決めることではありませんので」

ジーク様の言葉に、僕はそう返すしかない。


そもそも、マティ様とジェシカ様の考えていることなんか、全くわからない。

そして、平民の立場で、意見など言っていい訳がない。


「そうだね。でも、気まずいよ。アインがいてくれるだけでも気持ちがましだね」

「そう言っていただき、ありがとうございます」

僕は軽く頭を下げる。ジーク様は、あまり堅苦しく振舞われるのを嫌う。


「ただ本当に、兄上は何を考えているのか……」

ジーク様は、意味が解らない、という表情をしていた。


「あの、ジーク様。ジャスパー様はいらっしゃらないのでしょうか?」

「ジャスパー?ああ、彼は今お見合いパーティーに出席しているんだよ。いい加減に婚約者を作りなさい、とシモンズ夫人に怒られたようでね」

「そうでしたか」

ジーク様もそうだが、ジャスパー様は婚約者がいらっしゃらなかった。

いくら次男とはいえ、高位貴族令息なのにもかかわらず、婚約者がいない、という事は、あまり褒められたことではない。


「でも、その主も婚約者がいないんだよ。――作った方がいいかな」

「マティ様が婚約していらっしゃいますし、ジーク様は、ご自身が気になったご令嬢と婚約を結ぶのはどうでしょうか?」

「そうするよ。――焦っても、仕方ないしね」

ジーク様は眉を下げ、弱弱しく笑う。


「そうだジーク、焦る必要もない。俺を信頼しろ」

マティ様は、僕の背後から現れ、そしてジーク様にそう言い切った。


「そう言いますが兄上、一体その言葉を何年言っていらっしゃるのですか?」

「十年は言ってないだろう」

「十年は怒りますよ!」

ジーク様の怒りもわかる。人の十年は、かなり長い。


「妙齢のご令嬢は、皆すぐに婚約してしまいます!いい加減に、僕は婚約者が欲しいです!」

「落ち着け。焦っていいことはないぞ?」

「兄上はもうちょっと焦ってください!」

見た目は似ているものの、マティ様とジーク様の性格は、正反対だ。


そして、王位を争う仲な筈の二人は、かなり仲がいいのだ。

それも、ジーク様は自分の婚約者についての決定を、マティ様に委ねているくらいには。


そんな言い合いを、僕は間に挟まれながら見ていると、近くに豪華な馬車が止まった。

そこから、普段とは違う装いのジェシカ様が、慌てて降りてくる。


「遅れてしまい、申し訳ございません!」

「構わん。そもそも、ジェシカは時間通りに来ただけだからな」

「そうだよ。僕はちょっと確認したいことがあって……」


ジェシカ様が、マティ様とジーク様に詫びたが、二人の言う通り、早く来たのはこの二人なのだ。


ジェシカ様の謝罪を軽く流し、そして最初の目的地へと、早々に歩き出した。



最初の目的地は、王立温室庭園だ。サティが、物凄く素敵な所があるの!と言っていた。

少し気になる。



「……この後は、街をめぐり、その後は王家御用達のレストランで昼食、次に王立美術館。最後に演劇。――本当に、なんで僕までいるの?」

「ジーク様……」

死んだ目で今日の目的地を羅列し、嘆きながら頭を抱えるジーク様。僕はなんだか不憫に感じた。

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