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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第五章 Unidentified

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余計なことは言わぬが花

僕は、ポガチョス、ルーヴァ、ハティートの調査報告書をまとめた。


ルーヴァとハティートに放った蝙蝠はすべて回収し、情報も受け取った。

その後、特に新鮮な情報もなく。


かなり呆気なく、これが、ノア兄さんが知りたかったことか?と思いつつ、僕は詳しく調べたことを書きだした。



ルーヴァとハティートは、まだ再起可能だが、獣人の力を借りれなくなったうえ、魔法陣も意味なかった。

だからこそ、すぐにステラにちょっかいを出すことはないだろう。


だが、ウィキッドと接触してしまったら、そうもいかなくなる。


一応、異能力を使って、罠を張っておいたが、かかるかどうか。


それはもう、運命に任せる他ないだろう。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



僕たちは、トゥルクに惜しまれつつ、ポガチョスを発った。


オルファは、また会えるといいねぇ、と縦に長い瞳孔をした瞳を楽しそうに細めながら、煙管の煙を吐いた。


他にも、いくつか僕たちを見る視線が合ったが、出てくる気はないのだろう。

ノアスも同じようで、一向に姿を見せなかった。



行きと同じく、飛行魔法で移動をしていた。


「このままステラに行くのか?」

ヒュー兄さんの言葉に、僕は首を横に振る。


「僕はセオドアによるつもりだけど」

「別にノアには俺たちが生きてるのは知られているし、一緒でもいいと思うよ?」

サージェント兄さんがそう言うが、そういうことではない。


「それなら、テン兄さんとサティ姉さんも一緒の方がいいでしょ。それに、ステラでの用事は、叙爵だけだから、すぐにセオドアに戻るつもりだし」

「なら、ここで別れた方がいいんじゃないか?近いだろ」

「どうせ変わらないよ。飛んでいくし」

「あ、そうか……」

僕の言葉に、二人は納得した。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



二日かけて、セオドアに帰ってきた。

僕は、テン兄さんとサージェント兄さんとヒュー兄さんに、九星のテレパシーに追加した。

不思議そうな表情をしていたが、すぐにこの魔法の有用性を感じたようだ。

僕は、そのまま三人と別れた。



調査が予想外に早く終わったが、その分ステラで色々と引き留められるだろう。


叙爵するだけ、と言ったものの、その他もろもろの手続きと、パーティーが開催される筈だ。

その日程も決まっている。


あと一週間後なため、時間には余裕がある。数日セオドアで過ごしてもいいかもしれない。


そう思い、僕は学園に戻った。



「アイン……?」

背後から、マティ様の声が聞こえた。そばには、カーティス様とハロルド様がいた。


「久しぶりだね~」

「今、九星の任務でいないんじゃ……?」

「予想外に、早く終わったんですよ。――ただ、ステラでの用事はすませていないので、数日セオドアにいるつもりですが」

「そ、そうか!――明後日はいいか?」

「はい、大丈夫です」

「そうか」

マティ様は、とても嬉しそうだった。

僕も、なんとなく嬉しくなる。


「甘酸っぱいね~」

「そうか?そんな味はしないが」

「ハロルド、君はサティから勧められた恋愛小説を読んでるんじゃなかったの?」

カーティス様とハロルド様が少し離れたところで、そんな会話をしているのを聞いていた。


そうしていると、また背後に気配がした。


「あら?アインじゃない!」

「ミリア姉さん」

「もう戻ったの?」

「予想外に早く終わって……」

先程マティ様に説明したことと、同じ文言を繰り返す。


「わあ、熱烈だね~」

「チッ!」

なんだか、不穏な空気が漂っているような……。


「そうなの。――ところで、一つ気になることがあるんだけど、いい?」

「う、うん……どうしたの?」

ミリア姉さんが、かなり真剣そうな表情で迫る。がっしりと肩を掴まれ、僕はその迫力に腰が引ける。


「恋愛小説を読むの?」

「はい?」

ちょっと、聞き間違えたかなと思った。


「恋愛小説よ!まさか、読んでるの?!」

「え、ええ……。サティ姉さんに熱烈に進められたから……。ミリア姉さんは、恋愛小説苦手?」

「いや、別にそんなんじゃないんだけど……」

ミリア姉さんは言いよどむ。確かに、僕の印象には合わないだろうし、あまり分からないところもあるけれど、それが面白かったりする。


「ねえ!そうでしょ!」

サティ姉さんが飛んできた。元気だな、とぼんやり考えていると、さっと横から、マティ様が僕をさらった。


「え?」

「いい加減にしろ。近い」

「マティ様の方が近いと思うのですが……」

「なにか言ったか?」

「いえ……」

僕の訴えは、マティ様に黙殺された。


そんな僕たちを見て、ミリア姉さんは一言こう言った。


「貴方……本当に相変わらずね」

「相変わらず……?」

「ちょ、ミリアちゃん!誤解されるって!」

マティ様の声が不機嫌そうに低い。先ほどまで、かなりご機嫌そうだったのに。

サティ姉さんが、ミリア姉さんの言ったことについて慌てた。


「ほ、ほら!口が軽い人と秘密ごとをしたり、幼い頃から人殺しを強要させられたり、周囲の男に暴力を振るわれたりされたんでしょ!?」

「秘密……?人殺しを強要……?暴力……?――殺す」

サティ姉さんの言葉に、マティ様の瞳が剣呑な光を帯びる。


「サティ、これ完全に火に油注いじゃったね」

「マ、マティ様!おおお、落ち着いてください!」

僕を掴む腕に力が入る。それが、不思議と痛くないのは、加減してくれているからだろうか。


「教えろ、誰だ?」

「落ち着きましょう!?そ、それに今はそんな人いませんから!」

確かに、口が軽いラース兄さんと秘密ごとをしているが、ラース兄さんは人ではないため、大丈夫だ。


そんな言い訳をしながら、僕たちは殺気を溢れさせるマティ様を、落ち着かせようとしていた。

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