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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第五章 Unidentified

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間抜けな敗戦理由

僕は翌日、ルーヴァとハティートへと向かった。


同盟国のハティートとポガチョスは、国境が接しており、近いのだ。



そして、調査自体は蝙蝠を置いてくるだけでいい。

あとは蝙蝠が情報を収集してくれる。


その間、ポガチョスで滞在することになった。


本当は、ルーヴァやハティートへ、直接赴いて調査する予定が、サージェント兄さんが、患者を置いてこの国を出れない、と言ったからだ。


あと二日ほしいらしい。

そのころになると、ルーヴァやハティートの情報も出そろうだろうし、未だに警戒しているとはいえ、碧生兄上と栗花落姉上が近くにいないことは確認できている。


僕は、あまりにも兄上や姉上のことを知らなすぎる。


だからこそ、いつも久遠にいない印象を抱いていた二人が、こうして他国を回っていることを知らなかったし、何をしているのかもわからない。



多分、知っていて当然のことなのだろう。

僕は、自分が将来雪影兄上と御影姉上の補佐をする、ということしか聞かされていない。

それ以外は、何も教えて貰えなかった。


自分から知りに行くべきだったのだろうか。

今、こうして不便を味わっている。



ルーヴァとハティートの情報屋を頼らない理由は、ポガチョスのように、国民と国の信頼関係が悪い訳ではないからだ。


つまり、多分ガセを掴まれて、情報を売られる。

結局、自分をいいようにしてくれる権力に、誰だって靡かない訳がない。



ここがポガチョスだからできた芸当なのだ。



僕は、蝙蝠からの情報をこまめに受け取ることに集中する。

ヒュー兄さんは、新しい呪いの開発をするだとかで、寝室を独占した。

サージェント兄さんは、往診だ。もうすぐ帰ってくる筈。


「キーキーキー」

薄く開けていた窓から、蝙蝠が一匹帰ってくる。

優しく頭を撫で、握る。


僕は蝙蝠と同化し、記憶を情報として受け取る。そして、指先から新しい蝙蝠を作る。


僕は、先程蝙蝠が帰ってきた窓から、また蝙蝠を送り出す。

僕が生み出しているとは思えない色をした蝙蝠は、元気よく空へと飛び立っていった。



「相変わらず不思議だな、吸血鬼は」

「そうだね。僕もそう思うよ」

僕は、蝙蝠と同化する時から、ヒュー兄さんがいたことに気づいていた。


「どうしたの?」

「休憩。――お前、黒とか緑、もしくは赤なのにさ、なんであんな青の蝙蝠が出てくるんだ?――ああ、翼も青だったな」

ポガチョスへの道中、僕は翼を広げて飛んでいたため、それを覚えていたのだろう。僕は頷きながら、翼を出し、それを丁寧に撫でた。


「彼岸は、どこかしら半身の色が出てきたりするからね。吸血鬼の場合、というより僕の場合は、翼と蝙蝠だっただけ」

「半身の色……」

「どうしたの?」

「なんでもない」

小さく、ああ、確かに、と聞こえた気がするが。

気のせいだろう。


要も、同じタイプだった。飛ばないし、蝙蝠化もあまり使わないから、めったに見ないが、要の翼も蝙蝠も、紫だ。それは、スーさんの色と一緒だ。



「何か、分かったか?」

「少なくとも、ハティートはウィキッドとのつながりはないかな。戦争への参加は、ステラの領土が小さいから、御しやすいと考えていたかららしい」

「馬鹿だな……。ちょっと考えれば、そんな訳ないことくらい、分かんねーのか?」

呆れるヒュー兄さん。でも、そういう歴史、たくさんあるから。


「分からないのがあと二国あったから、三国で同盟組んで、ステラを蹂躙しようとしたんじゃない?」

「久遠からの全力の進攻だってステラは結構耐えるぞ?」

確かに、九星はかなり強い将軍クラスじゃないと、話にならないだろう。


「そのことだけど、全く勝算はない訳じゃなかったらしいよ。ただ、それは九星には効かなかったけれどね」

「そうなのか?」

「うん。ルーヴァを探ったときに出てきたんだけどね、獣人の聴覚に作用する魔法陣があったんだ」

「それは……無意味な……」

獣人にしか聞こえない不快な音を出して、精神攻撃をする魔法陣があった。

しかし九星の獣人は、強いて言うならば、サージェント兄さんしかいないので……、


「一応、魔族にも意味があるらしいけれど……」

「意味ねーな。どちらにせよ」

その魔族は、僕とラース兄さん、ヒュー兄さんだが、ヒュー兄さんは九星とは違うし、僕はその影響を“抹消”すればいいし、ラース兄さんはそれを状態異常とみなして“無効”にすればいい。


本当に、意味がない。

あちらは、ステラの強さの秘訣が、獣人のみで構成された軍だと思っていたようだが、そもそも、ステラにそんな軍は存在しない。


だから、醜態をさらす羽目になったのだ。


この分だと、終戦条約を結んで終わりになるかもしれない。

ただ、まだルーヴァがステラを諦めている様子がないため、終戦になるのもかなり先かもしれない。


ポガチョスは、王族の死亡により、国が瓦解するだろう。

戦争中なので、敵国からの暗殺者が来ないと、高をくくっていた方が悪いのだが、そうでなくとも国際法で決まっていた、エルフの奴隷の売買の件で、久遠から制裁されただろう。


そうなると、碧生兄上と栗花落姉上の仕事内容が、なんとなく推察できるが、あまりはっきりとは言わない方がいいだろう。思い込みを避けるためにも。



「ただいま」

サージェント兄さんが帰ってきた。


「サージ、どうだったか?」

「みんな、結構よくなっていたよ!明日で最後だという事も伝えたし、それに、医者希望の子たちに色々と教えたしね。もう、大丈夫じゃないかな」

「そうか。それはよかったな」

ヒュー兄さんは、優しくそう言った。


「僕の方も、指令はあともう少しで終わるよ。そうしたら、セオドアに帰ろう」

僕はそう言って、また窓から帰ってきた蝙蝠から、情報を受け取ることにした。

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