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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第五章 Unidentified

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りんご飴と串肉

「行ってらっしゃいやせ~」

トゥルクに見送られ、僕たちは祭りへと向かう。


「……ちなみに場所はどこだ?」

「……」

ヒュー兄さんの言葉に、その場の全員が固まった。


「ヒュー兄さん……?」

「ほら、祭り!楽しみだから!」

赤面したヒュー兄さんが、必死に言い訳していた。僕は思わず笑ってしまった。

いつの間にか、祭りへの抵抗感はなくなっていた。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



Side Sergent


僕たちは、平民街へと降り立っていた。周囲の人間は、僕たちの方を注目しているが、獣人たちはそうでもない。


やはり、羊獣人の僕と、うさぎ獣人の変装をしているヒューが、物珍しいのだろう。

アインは、全く認識されていない。


そんなアインは、あたりを物珍しそうにきょろきょろしていた。


「あれ、なんだろう?時々子供が食べているのを見ていて……」

そう言って、アインが指さす先にあるのは、りんご飴だった。


下手すれば、アインはリンゴ丸々一個を見たことないのかもしれない。

いや、それはないか。アップルパイ作ったことあるって言ってたし。


「買うか?」

「じゃあ……」

ヒューがいたずらっぽく笑う。

アインが頷くと、ヒューはりんご飴を買いに行った


やっぱり、子供はこうでなきゃね。辛い選択なんか、させたくない。



「でもこれ、一体何の祭りなんだろう……」

「ああ、確かに。ちょっと聞いてみる?」

「なら獣人に聞いてみた方がいいよ。人間はちょっと……」

アインはそう言い、僕たちを見る人間を目で示していた。


ちょっとばかし、視線に憎悪が混ざっている。そんな気がした。



「分かった。聞いてみるよ」

そう言って、僕はキリン獣人の女性に話しかけてみた。


「すみません」

「はい、どうしましたか?私今とってもいい気分なのよ?ちょっと話聞いてくださる?」

「はい、どうしました?」

「私たち獣人は、国王に重税とかを強いられていたじゃない?その国王をどなたか殺してくださのよ!まずはこれで重税から脱することができるわ」

そう言って、キリン獣人の女性は笑っていた。


……国王殺されたの、昨日の夜だった気がするけど。そしてそれ発見されたの、今朝だった気がする。


そうなると、この祭りに参加してよかったものか、と考えてしまった。


「だって、近所のアリスさん家は子だくさんなのよ?税金が重くて大変って!それに肉食系と草食系は仲が悪いのに、それも考えてくれないの!」

「それは大変ですね……」

同情しつつ、アインの方を見ると、りんご飴を三個持ったヒューと合流していた。

僕もすぐに合流したいが、まだこの女性は話している。


「それにロイナさんのとこは旦那さんが亡くなって、大変なのはわかるんだけど、それでも盗むのは駄目じゃない?可哀想なのはそうなんだけどね」

「そうですね。あの、そろそろ……」

「それとね、ジェーンさんとこは――」

僕が話を終わらせようとしても、まだ話が続く。

僕が本気で困っていると、救いの手が現れた。


「サージ!ほらさっさと行くぞ!」

ヒューの声が聞こえる。

僕はキリン獣人の女性に礼を言って、連れが待っていることを告げ、その場を去った。



「ごめんね。ちょっと捕まっちゃって」

そう言って、僕はヒューからりんご飴を受け取った。


アインは、りんご飴を舐めている。結構大変そうだが、りんご飴とは本来、そういうものだ。


「俺肉食いたい」

ヒューがりんご飴を舐めながらそう言う。


「さすがに合わないでしょ」

「そういうのはな、野暮って言うんじゃねーのか?俺の金で買うんだしいいだろ」

アインの言葉に、ヒューがそう返す。一緒に列に並んで、串肉を人数分確保する。


「ほら、熱いうちに食え」

「う、うん」

立ち食いなんかしなかっただろうに、アインは丁寧な動作で串肉を食べる。


僕も同じく食べる。うん、美味しい!

僕たちは鉄串をヒューに渡し、ヒューはそれを店員に渡していた。


それをアインは興味深そうに見ていた。


「あれ、使い捨てじゃないからな。鉄串を店員に渡せば、お金がもらえるんだ」

そう言って、店員から渡された銅貨を見せる。

全てが新鮮そうなアインを見るのが、楽しい。


「ところでサージは何してたんだ?」

「ああ、この祭り、なんか急に始まったでしょ?なんでかなって」

「ああ、そうだったな。なんか狂喜乱舞してたな、屋台の店主とか、客とか」

確かに、この祭りはかなり盛り上がっている。


「ほら、トゥルクが国王暗殺の号外を持ってきたでしょ?あれだって」

「なかなかぶっ飛んでんな。自分の国の王が死んで、そこまで嬉しがるとか。そしてそれを止めない貴族も貴族だな」

「そうだね」

「この国、貴族いないよ?」

「「え?」」

アインの言葉に、僕とヒューは目が点になった。


「この国、そこまで人間は多くないからね。ただ、富豪が他国で言う貴族みたいな立ち位置にはなりそうだね。この国には貴族はいない」

「……そうなんだ」

「そう。それに人間は、獣人に逆らえないんじゃないかな。多分国王を殺したのは獣人だ、と思っていそうだし」

アインは、りんご飴を食べながらそう言った。


どうやらりんごが出てきたらしく、困惑している。


「それは普通にかじるんだ」

「うん……」

アインは素直に頷いて、りんごをかじった。


「なんか、微妙だな……」

僕は、素直にそう感じた。人が死んで嬉しい、なんて思わない性格だからかもしれない。

ヒューもしょっちゅう、呪ってやろうか?と言うが、アインの目の前では絶対言わないし、命は大事にする方だし。


なんだか、ポガチョスの国としての在り方に、狂気を感じた。

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