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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第五章 Unidentified

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女子会

Side Miria


私は、サティの部屋で寝泊まりすることとなった。

寮は、男女で分かれているから、女人禁制な男子寮にあるアインの部屋に、私は入れない。


私たちは、紅茶を淹れて長年離れ離れだった時間をなくすように、話し込んだ。


「ねえサティ、私アインから、二つ頼みごとがある、と言われたんだけど、一体何のこと?そのうち一つはさっき言ったことで、もう一つはサティに言ったらわかる、って……」

私は、困惑しながらサティに尋ねる。そんな私に、サティは笑った。


「それ、私にえっと、テレパシーでつなげるようにして、って」

「え、言ったの、アインが?」

サティの口から出た、まさかの単語に、私は驚いた。


「う、うん……ダメだった?」

「ダメと言うか……それ、機密情報だから」

ラースと言う名の馬鹿が、外部に漏らしたらしいが、サティも一応外部だ。


と言っても、これから関係者になるのか?


「でも、マティアス様がいるところでアインが言ってたよ?」

「えっと、前は口に出さないと使えなかったんだけどそれを部外者の目の前で思いっきり使った馬鹿がいたのよね。その部外者が、マティアス王子とジェシカ嬢」

「……なんか、ミリアちゃんってマティアス様のこと嫌い?」

「……アインは、悪い人ホイホイだから、とんでもないやつだと思ったのよ」

多分、私の言い方に、サティは私があまりマティアス王子を好きじゃないことに気づいたのだろう。


実際、とんでもない執着強かったが。あれから無事に逃げれるの……?


「悪い人ホイホイ……」

「別に、性格が悪いとか、そういうことを言っているんじゃないの。ただ、見る目がなくて……」

「見る目がない」

「そう。口が軽い人と秘密ごとをしたり、幼い頃から人殺しを強要させられたり、周囲の男に暴力を振るわれたり……執着されたり」

さっきのマティアス王子のことを思い出し、アインを憐れんだ。


「なんか……。大変だね……」

サティが、ドン引きしていた。確かに、今のアインを見ていれば、そんな過去があるなんて、分からないだろう。しっかりしているし。


「本当に。だから、王子様を危険視していたのよ」

「なるほど……」

サティは、納得したらしい。


私はラースが、アインに好きな人ができた!と言うから、暴力男なんじゃ……?とか、洗脳している……?とか、理不尽な男では……?とか考えていたが、あそこまで、アインに執着しているとは……。



そして、相手が男というところもだろうか。

同性愛なんか、聞いたことがない。きっと失恋するんだろうな、美人な婚約者もいるんだし、と思った。


「でも、相手がマティアス様なら、私は安心できると思うよ」

「それは、どういう意味?」

私は、聞き返した。だって、同性愛だよ?可哀想だけど、婚約者もいるんだし、報われない恋。さっさと諦めて、次に行った方がいい。それに、あんな執着されて……。


あの時、ラースはアインの初恋に喜んでいたけど、しっかり殴っておいた。


「だって、物凄く大事にされているんだもん。頭ポンポンしてたり……」

「うっ」

「時々膝の上に乗せてたよ?」

「そんなことも!?」

「あと、お姫様抱っこしてた!」

「アインってそんなに小さくなかったよね!?」

私は驚いた。アインとマティアス王子って、ちょっとアインの方が背が低い。けれど、アインはその分筋肉があるから重い。


「あと、笑顔!私に向ける笑顔も、ジェシカ様に向ける笑顔も、なんか恋愛みたいな、そういうものがなかったけど、アインを見る時だけ、とても幸せそうなの!」

「……」

そ、それはいい情報なのか……?どさくさに紛れてお触りしているのに比べたら……。


楽しそうにキャッキャするサティに、私はちょっと毒されていた。


「確かに男同士だけど、絶対に両想いよ。それに、マティアス様は、アインが自分のことを好きだと知っているみたいで、あえて距離を詰めて、赤面するのを楽しんでるし……」

「やっぱり……ろくでもなかった!」

私は、頭を抱えて叫んだ。


サティは笑っていたが、この冬でアイン、貴族になるんだよ?それも、公爵。

今まで平民だった今までとは違い、身分が釣り合うようになる。

今の婚約者よりも身分が釣り合うんじゃない?


ただ、貴族として、子を生す必要があるのに、どうするのか。

アインは、そこを考えない訳がないのに。



純粋な子を弄んで、のめりこませるなんて、本当にひどい。早く解放してあげたらいいのに。

でも、向こうものめりこんでいる可能性もあるのか……。本当に質が悪い。


私は、それはもう考えても仕方ない、と思っていた。

当人同士が、何とかして解決してくれるのを待つしかない……。


私は、気持ちを切り替えて、最近サティは何をやっているのか、聞いてみることにした。


「サティ、最近は何をやっているの?」

「私、この恋愛小説にハマっているの!ミリアちゃんも読んでみてよ!」

「ええっと、“吸血鬼オリビエちゃんのドキドキッ!学園生活♡!~おっちょこちょい吸血鬼の甘酸っぱい恋~”…………」

私は、パタンと本を閉じ、サティを見つめた。


「どう?面白そうじゃない?」

「……ものすごく長いタイトルね」

「うん!」

「吸血鬼……」

私は、ぽつりとつぶやいた。


「アインが、その小説の吸血鬼は、本物の吸血鬼は違うって言ってたよ?確かに、アインは外を普通に歩いているもんね」

サティが楽しそうに笑って言ったことに、私はなるほど、と納得した。


しかし、サティのその言葉に、私は気にかかったことを聞いた。


「アイン、これ、読んだの……?」

「読んでたよ!」

サティは、満面の笑みで答えるが、私は一切信じることができなかった。


あの子、昔から外国語で書かれた論文を、部屋の隅で抱えて読んでいるような感じじゃなかった?

こんなゴリゴリの恋愛小説なんか、アインが読む想像が一切わかない。



「あと、ハロルド様も一緒に読んでるよ!」

「ハロルド……様」

「あの、とてもまじめなメガネの人!」

「ブッ!」

あの紫髪――カースティスらしい――に注意したあの緑髪の青年を思い浮かべた。

アインと同じく、絶対に恋愛小説を読まないタイプの人間。


良くサティはそんな人たちに、恋愛小説を読ませようとするな……と思いつつ、私はすっかりぬるくなってしまった紅茶を飲んだ。

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