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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第五章 Unidentified

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殺す理由

僕が起きると、ヒュー兄さんが宝石を渡してきた。


「呪いの宝石を作ったから、これを暗殺に役立ててくれ。使い終わったら、必ず回収してほしい」

「分かった」

僕は、色とりどりなその宝石を、やや神妙に受け取り、慎重に亜空間収納にしまった。


エリック兄さんの件もあり、弱い呪いでも、侮ってはいけない。

ヒュー兄さんが言うには、本来の呪いは人の感情で育つらしい。


魔属性魔法の呪いは、ただの弱体化だとも。そこの細かい違いを、あまり詳しく理解できないものの、これは、魔法ではないらしいことは分かる。



これを使うかどうかは悩むが、少なくとも今は使うときではない。

まだ、ウィキッドとのつながりが確認できていない。


怪しげな連中が、もしかしたら、僕たちが考えるものと、全く違うのかもしれない。



そのことについては、トゥルクの追加情報を待つしかない。



ほどなくして、帰ってきたのはサージェント兄さんだった。


「どうだった?」

「うん、経過観察は順調……。何事もなければ、一週間以内に治ると思うよ」

セオドアで、医師のまねごとをしていたらしいサージェント兄さんは、にっこりと笑った。



「それにしても、ウィキッドか……。会ったことねーな」

「普通に生きてきて、会うことの方が珍しいでしょ。人間と混ざれないから、人間の国に潜入している者も少ない」

ヒュー兄さんがそんなことを呟き、僕はそれを肯定したものの、サージェント兄さんは首を横に振った。


「ヒュー、魔法祭でステージに侵入したのが、ウィキッドでしょ?緑髪と紫髪。僕たちは、観客たちの流れに逆らえずに逃げちゃったけど」

「あそこで、入ってくる方が困ったよ。僕たちの関係が、あの場にいた全員にばれる」

「アインの味方なら、いいんじゃねーの?」

不思議そうにするヒュー兄さんに、僕は肩をすくめた。


「うーん、多分、マティ様は僕の味方じゃないように思えるんだよね……」

「あの王太子サマか」

「うん。なんだか、裏で動いているような感じがするんだ」

「そんなの、分からないもんなのか?」

僕の返答に、ヒュー兄さんが不思議そうにする。


確かに、蝙蝠を張り巡らせているのだから、動きが分からない、という事はない筈だ。


「終夜が僕の蝙蝠を手当たり次第に潰すから、変に蝙蝠を放てないんだよ……」

「金華の放蕩息子か……」

苦々しげにつぶやくヒュー兄さん。そんなヒュー兄さんに、サージェント兄さんは苦笑いだった。



「金華なんか嫌いだ。あそこの血を引く悪魔は、全員狂ってるだろ」

「終夜はかなりマシだよ」

「それでも、天使が好きなんだろ?性癖が歪んでる」

「そこまで言わなくとも……」

確かに天夜を襲った終夜には、本当に引いたが。

それにかなりの少年趣味(ショタコン)……。


時雨兄上と同じ312歳なのに、265歳年下の天夜に手を出した。時雨兄上と仲が良かったから、僕も会ったことがあるのだが、あれ以来、セオドアで出会うまで、僕は終夜と連絡を取っていなかった。

単純に僕は、天夜と11歳しか違わないのだ。今まで感じなかった恐怖を、幼い僕は終夜に感じた。


「ああ、そうか。当時、そんなうわさも流れたな」

「えぇ、ショタコン……」

「人間に例えるなら、60歳の爺さんが、20歳の若妻を得ることは、別におかしくもなんともないだろ?」

「貴族なら、後妻とか、よくあることだよね」

うんうん、とサージェント兄さんは頷いていた。


「じゃあ、この二人の年齢を、15年前にしたら、犯罪になるよな?」

「45歳の男が5歳児にご執心……。ちょっと仲良くしたくないなぁ」

「アインにも、ちょっと色を見せてたから、4歳児にも気がある、かな?」

「……。ヒューが金華を嫌う理由がよくわかったよ」

うん、僕も嫌い。これ(終夜)が一番マシなんだもの。


「ただいま戻りやした!――お三人方、一体何を話していたんで?」

トゥルクは三人で向かい合っている僕たちを見て、不思議そうにしていた。


「ただの雑談だよ。ところで、何か新しい情報が?」

「えぇ、どうやら、青色の髪の男と、茶色の髪の女が、王族に会っていたようでさぁ」

「青色の髪の男と、茶色の髪の女……」

思わず、一瞬テンを思い浮かべてしまったが、違うだろう。


「他に詳しい情報は?」

「そうですねぇ……。女の髪は短くて、二人とも妙に言葉がたどたどしかったらしいんでさぁ。なんつーか、人間の喋りに慣れてねぇ感じで……。ちょいと、魔物じみてたらしいでっせ」

記憶をたどるように、トゥルクは言った。


僕は、魔物という言葉に引っかかりを覚え、トゥルクに疑問をぶつけることにした。


「その調査員に、会うことはできる?」

「もちろんでさぁ!いつにしやす?」

「いつでもいいよ」

「承知しやした!」

そう言って、トゥルクはまた出かけて行った。


そんなにすぐに行かなくても、と思ったが、止めはしなかった。

確かに、その調査員に急遽知りたいことができたからだったからだ。



「今日も張るのか?」

「うーん、結果次第だね」

「ノアの指令はどうするの?」

「やる予定だけど……。ウィキッドと関係ないなら、どうしようかな……。理由もなしに殺すのはまずいし。違法奴隷とかを見つけるしかないね」

僕は、できればすぐにこの国から出たいと思った。


しかし、いくら情報を買っても、この王族を殺すに足る()()が存在しない。

不平不満は聞こえてくるが。でも、別に特別非道という訳でもない。


ロースタスの方がやっていることがまずいしね。

ステラとしても、久遠としても、別にポガチョスがこのままでも別に問題はない。


獣人にとってはたまらないかもしれないが。



「蝙蝠でも忍ばせるか……。色々と、知られたくない腹の内がありそうだし」

「それが一番だな。なんで昨日しなかったんだ?」

「やったけど、特になかったんだよ」

まだ蝙蝠が、深くまで潜っていなかったのもある。



「何か……横領とか、獣人を使った国際法すれすれの行為とか、それを掴めれば、正当な理由ができるんだけど……」

僕はそう言って、亜空間収納にしまった宝石を思い出していた。



――何が正当性だ。昔は、殺せ、と言われたら、相手が誰であっても殺したのに。



なんとなく、思考が投げやりなっていくのを感じつつ、呪いの宝石の使い方を考えていた。

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