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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第五章 Unidentified

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暗殺のための行動

「ダメでやした……」

がっかりするトゥルクと対照的に、僕は蝙蝠からの報告を聞いていた。


どこのポイントでも、やはり誰も現れなかったらしい。

一気に情報が脳に入ってくることに起因する頭痛に顔をしかめつつ、また新たな蝙蝠を飛ばす。


吸血鬼のこの能力は、情報収集にはもってこいではあるものの、頭が痛くなる。

学園に入学したばかりの時も、それで頭痛を抱えていた。

ただそれも、蝙蝠たちに、異常がない状態を記憶させておくと、異常が起きた時にそこだけを報告するように、という指示が出せる。


学園の時とは違い、異常がない状態、というものが分かりやすかった。

この頭痛も、今限りだ。



「大丈夫?はい、これ頭痛薬」

「ありがとう……」

「無茶な使い方なんだろ、それ」

「そうなんだろうけど、命令系統が一つじゃないと、蝙蝠たちが上手く動いてくれないから……」

僕は、サージェント兄さんからもらった頭痛薬を一気に呷り、ヒュー兄さんの言葉に言い返す。



チーズルにいた時、当然誰よりも強い、使い勝手のいい駒があれば、その駒に仕事が集中することは、誰だって予想できる。


そうした結果、僕は蝙蝠の管理がなかなかできなかった。



蝙蝠は、文字通り僕の一部なのだが、そんな彼らから記憶を受け取るとき、今の僕のように、頭痛がすることがある。

その時の僕は、あまり使い物にならなかった。


その時間はごく短時間ではあったものの、その時間すら厭うくらい、暗殺指令が渋滞していた。


だから、蝙蝠一匹をリーダーに任命し、そいつの指示に従う。特筆するべきことがあったら、リーダーが直接僕に報告する。

そんな仕組みを作ったのだ。


だが、それも長くはもたなかった。


そのリーダーが、蝙蝠たちを従え、僕に反旗を翻すようになった。

当然、僕がその蝙蝠を吸収したお陰で、何もなかった。

だが、その苦い経験から、僕はどんなに忙しくとも、僕が直接指示するようになった。



「蝙蝠って、馬鹿だから……」

普段は懐いてくれて、可愛いのに……、と考えていると、三人が渋い顔をした。


「あっし、蝙蝠獣人は、頭がいいと思うんでさぁ」

「俺も同意見だ。蝙蝠って、人と同じくらい知能があるらしいぞ?」

「蝙蝠獣人って、狡猾な印象だなぁ」

「確かに、僕も蝙蝠の知能に任せてる部分もあるけど……」

どうやら、蝙蝠は頭がいい、という事を主張したいらしい。


とは言っても、これ以上の討論は、不毛なため、もっと建設的な話題に切り替えることにした。



「それはそうと、王族の不正に関する件、もしかすると、うちの別の調査員が握ってるやもしれねぇんでっせ」

「じゃあ、頼まれてくれるかな?」

「もちろんでさぁ!」

「僕は、貧民街の病人を、検診するよ」

「俺は……準備しとくよ。使わないかもしれねーけどな」

「分かった。僕は少し仮眠をとるよ」

そう言って、僕はベッドに横になった。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



Side Hue


俺は、備え付けの机に向かった。無駄に豪華な机の上で、とある儀式をする。

対象は、美しい宝石たち。


一つずつ、紙に描いた魔法陣の上に置き、それぞれに、病になる呪いや、気性が荒くなる呪い。色欲に溺れる呪いなど、多種多様だ。



無駄に豪華なベッドが三つ並んでいる中の、壁側。アインが寝ている場所には、蝙蝠がくつろいでいるのが見える。



吸血鬼の蝙蝠は、主人思いだ。それが行き過ぎて、反逆を起こすことがあるが、それも主人のためだ。


アインがチーズルにいた時のことを、07――エリックたちが来た時にチラッと聞いたことがある。

あの時、便りすらもなかったが、かなり厳しい環境にいたらしいことを察した。


そこから救いたくなったのだろう。しかし、アインはそれを上手くくみ取ることができなかった。


元々鈍感だしな。蝙蝠たちも、アインがあまり苦しい環境にいないことを示すように、のんびりしている。


そんな、穏やかな光景を見つつ、俺は呪いの宝石を次々と完成させていった。



――これを使えば、暗殺もしやすくなるだろう。



俺はそう考え、思わず笑った。


使わない可能性がある。アインは、毒殺を好む。吹き矢や、使い捨てナイフに猛毒を塗り、少し傷をつける。


天井裏にいれば、全て事足りるのだ。


かなりガードが堅いターゲットは、そう上手くはいかなかったらしいが、そういう時に、この宝石が近くにあると、そのガードも薄くなる。


アインは、邪神の呪いによって、他の呪いを跳ね返す。その時、俺にダメージがいかないように、形代を作って、そいつに呪い返しの身代わりになってもらおう。


あの、魔属性魔法の、なんちゃって呪術よりも、俺の異能力の呪術の方が、効果的でリスクが高い。


当然と言えば当然なのだが、そんなことを甘んじていたら、体が持たない。


押し付けられるのなら、全力で押し付けさせていただく。



「ふう……」

一通り作業を終え、外を見る。

まだ明るい時間帯で、誰も帰ってきていなかった。



寝室を除くと、アインが起きていたようだった。


「あ、ヒュー兄さん……?おはよう……」

まだ眠いらしい。ちょっとぼんやりしている。



「呪いの宝石を作ったから、これを暗殺に役立ててくれ。使い終わったら、必ず回収してほしい」

「分かった」

流石に、俺が作った宝石を世の中に流す訳にはいかないからな。


まあ、エリックほどの馬鹿もいないだろうし、アインはそこらへん、抜かりないだろうから、そこまで心配はしていない。



ちなみにエリックのやらかしは、人と縁が切れる、と言う呪いを込めたものを持たせたが、それをなぜか人にあげやがったことだ。

最終的に、ノアと月影の力を借り、何とか取り返して解呪したのだが、それがもとで何人か死にかけた。


本当に、馬鹿に呪物なんか渡さない。

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