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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第五章 Unidentified

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情報収集

宿を確保した翌日、そこでポガチョスの情報をトゥルクから聞いていた時だった。



『アイン、いいか?』

『どうしたの?』

『佐倉要と会ったンだ』

『そうなんだ』

ラース兄さんは、時々あのゴブリン村に行っているらしい。

だから、僕の指名依頼で、今あそこにいるだろう要と、鉢合わせる可能性はある。


『それでさ、要が特に何もなかったみてェでさ、戸惑ってるンだ』

『別に、何もなかったら何もなかったでいいよ。――ちなみに、テレパシーのこと、要に言ってないよね?』

真面目な要は、大金を受け取っているからか、戸惑っているようだ。

その反応は予想していたから、僕は問題ないことをラース兄さんに伝える。


しかし、それをどうやって要に伝える気なのか。

ラース兄さんのことだし、テレパシーという、九星の機密情報を教えているのではないだろうか。


『言ったぞ?』

『はあ……。いくら僕の正体を知っていたとしても、要は部外者。部外者に機密情報を漏らさないでくれる?』

あっけらかんというラース兄さんに、溜息を吐いた。


『え、あれ機密情報だったのか?』

『機密情報以外の何物でもない!!』

頭が痛い。ラース兄さんのあまりのうっかりぶりに、僕が思わず頭を抱えると、トゥルクがあわあわし始めた。


「月影様!だ、大丈夫で!?」

「ああ、いや……。こっちの話だよ」

「そうですかい?でも、無理は禁物でっせ」

トゥルクは、ほっと胸をなでおろしていたが、サージェント兄さんとヒュー兄さんは、僕に懐疑的な視線を送っていた。



『でも、昔王太子サマとその婚約者サマの前で話してたじゃねェか』

『それ、あの状態の僕に、話を振ったのがいけないでしょ。それに、その前の時点で、テレパシーのこと、ばらしていたらしいね?』

『うっ……』

僕が詰めると、ラース兄さんが呻いた。


『あのね、テレパシーを未完成の状態でも作ったのは、声が戦闘音で消されるから。全部声で連携をとっていると、遠い所にいる仲間とも連携が取れないし、爆発音で声がかき消されることもある』

『そうだな』

僕の言葉に、ラース兄さんは頷いた。


『そして、それをウィキッドに知られたら?一気に不利になるでしょ』

『はい……』

『今までは、相手が良かっただけ。これに懲りたら、もう外でテレパシーという単語を発しないで。そして、ラース兄さんは表情管理が苦手だろうから、これを機に、ちょっとは表情を変えない練習をして』

『分かった……』

弱弱しいラース兄さんの声を最後に、テレパシーを打ち切った。



「トゥルク、トゥルクから見た王族はどう?」

僕は、段々とどうでもいい情報ばかりを話すようになったトゥルクに、そう問うた。



「王族……ですかい?難しい問題でさぁ」

トゥルクは、しばらく考え込み、こう告げた。



「王族ってのはみな、あっしたち獣人を毛嫌いしてるんでさぁ。この土地をぶんどって、あっしら獣人を貧民街に追いやったんでっせ。

その上、獣人からむしり取った金で贅沢三昧……死んでくれた方が清々するってもんでさぁ」

「清々する、か」

僕は、ノア兄さんからの指令を思い出していた。


「そうでっせ。それに、耳にした話じゃ、その王族がなぁ、何やら怪しい連中と取引しているようで……ただ、まだ確証はねぇんで、そこは勘弁してくだせぇ」

首の裏をかきながら、トゥルクはそう、話を締めくくった。


「怪しげな連中……?」

「恐らく、ウィキッドのことだね」

「ウィキッド……?」

僕の言葉に、トゥルクが首をかしげる。


「簡単に言うと、世界の敵だ。そいつらと手を組んでいるのなら、久遠から過激な制裁が下されるだろうね」

「過激な、制裁ですかい……」

口をひくつかせるトゥルク。

あまり情報がない、巨大な国からの制裁など、恐怖でしかない。


「白か黒か、はっきりさせるためにも、手分けして張ってみるか」

「俺はパス」

「僕にできるかな……」

「………………僕ががんばるしかないか」

ヒュー兄さんは即座に拒否し、サージェント兄さんは一切自信がなさそうだ。


となると、トゥルクと僕ががんばるしかない。

頑張ると言っても、二人だけなので、ある程度場所が割れていた方が、僕の頭への負担が少なくなる。



という訳で、僕はトゥルクと共に、見張り場所を決めることにした。




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



――夜。


梟が鳴く、静かな夜。


誰もいない道に、僕は身を隠してそこを見張っていた。



いつまで経っても、動きはない。

そもそも、トゥルクがつかんだ情報は、かなり断片的で、今日取引があるとも限らないのだ。


僕は蝙蝠から、記憶を小分けにして受け取っている。

どこの場所も同じようだ。



――やはり、王城に忍び込むしかないものなのか。



僕は、全く気乗りのしない考えを思い浮かべる。

僕があまり気乗りしない理由は、トゥルクが言っていた、どうでもいい情報の中に紛れ込んでいた。



どうやら、美しい存在に目がないらしい。幾人もの獣人が、奴隷として、王城に召し上げられていた。


これだけでも、十二分に許せないのだが、彼らは身の程知らずにも、御影姉上や、僕を傍に置きたい、と考えている模様。


獣人を支配して、何を思い上がってしまったのだろうか。

久遠に手を出せばどうなるのか、様々な国が身をもって知っているのに。


まあ、ほとんどの確率で、王族たちを暗殺することが決定したから、同時に侵入経路を探っておこう。

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