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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第五章 Unidentified

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ゴブリンと鬼人

Side Kaname


翌日。俺は、ゴブリン村への調査に出かけた。


冒険者ギルドでゴブリン討伐の依頼を請け負う。


冒険者ギルドには、依頼を受けようと、ガタイのいい冒険者たちが集まっていた。

中には、朝から酒を胃に流し込んでいる者もいる。


「手続きを頼む」

依頼書が張り付けられたボードから、目的の依頼書を剝がし取り、受付にA級冒険者を示す、金の冒険者カードと共に、依頼書を提出した。


「え、A級……!?」

一瞬、大声を出してしまった受付嬢に、内心舌打ちをする。

周囲から、一気に視線を集めた。


冒険者のランクは、S級が最大だが、A級でもかなり一目を置かれる存在だ。

更に、今いるA・S級は、ほとんどが40代以上なのだ。見た目20台の俺が、A級冒険者なのが、信じられないのだろう。



「こ、この依頼は……」

受付嬢は、俺がこの依頼を受けることを渋った。


「この近くの森にある、ゴブリン村の調査の依頼を、指名依頼で受けている。――確認願おうか?」

「は、はい!ただいま!」

受付嬢が、慌てて奥に引っ込む。


受付嬢が渋ったのは、正当だ。

ランクが低い冒険者が、無理な依頼を受けないように、そして食い詰めないように決められた制度がある。


自分のランクと、その二つ下までの依頼しか受けることができない。

俺の場合、俺の冒険者ランクのA級、そしてB・C級の依頼を受けることができるが、ゴブリン討伐の依頼は、D級の依頼だ。



だから本来、俺はこの依頼を受けることができないのだが、例外が存在する。


そのうちの一つが、魔物の脅威度が上がった場合だ。

この森は、なぜかゴブリンの脅威度が、他のゴブリンよりも高い。

昔は、C級冒険者でさえも、ゴブリン討伐の依頼を、危険だから、という理由で断られたことがあったらしい。



「お待たせいたしました。依頼を受理します」

受付嬢が戻ってきて、すぐさま依頼を受理した。


月影が俺にした指名依頼のお陰だろう。

その指名依頼の内容は、凶暴なゴブリンが、村を形成しつつある可能性がある場所への調査、および討伐。

この依頼が、ギルドで出されたという事は、ギルドもそのゴブリンの脅威度が高いことを、認めたという事だ。


だから、俺は例外的にこの依頼を引き受けることができる。



「森にいるゴブリンの討伐を、他の冒険者に控えてもらうよう、呼びかけて欲しい。――今、どんな脅威があるか、分からないからな」

「承りました、イアン様」

俺は、あえて大声でそう言い、受付嬢も、そのことを了承した。


「おい!俺たちの仕事を奪うな!」

「そうだ!よそ者は帰れ!!」

俺たちの会話を聞き、怒った冒険者共が騒ぐが、俺は無視する。


変に時間を取られてはたまらないため、そいつらに殺気を飛ばし、そして森へと歩を進めることにした。



俺の殺気にあてられ、思わず野次を飛ばした連中が失禁したらしいが、それは知る由もない。




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



森を進んでいると、ゴブリンと出会った。

おんぼろの錆びた武器と、ボロボロの腰布。独特のくさい獣臭は、あまり冒険者から好かれていない理由の一つだ。


「ギャギャッ」

「ギャ、ギャギャッ」

「グガ?」

耳障りな声を持つ魔物に、俺は容赦なく攻撃を仕掛けた。


三対一。元々ゴブリンは強くないのと、奇襲したのもあり、二匹を一気に絶命させた。


「ギッ!ギャッ!」

ゴブリンは驚き、すぐに俺に背を向けて逃げる。

敵に対し、背を向ける行為は自殺効果だが、このゴブリンには、村に連れて行ってもらわないと困る。


二匹から、討伐証明部位を素早くはぎ取り、逃げた一匹を追った。



「ギャギャッ!ギャッ!!」

ゴブリンは、村に辿り着き、仲間に脅威()の存在を知らせる。


「グギッ!」

もう用なしだ。

俺は、ここまで案内してくれたゴブリンを殺し、姿を現した。


「ギャギャギャ!!!」

侵入者を知らせるように、目の前のゴブリンが、大声を上げた。

俺は縦に一閃し、そいつの命を刈り取る。


声が聞こえたのか、俺の周りに、ゴブリンが集まってきた。



「さて、激しい運動をするか」

俺は、デーモンブレイズトカゲ以降で、最も戦いがいがありそうな予感がし、舌なめずりをした。



「ギッ!」

三匹のゴブリンが、俺に同時に飛び掛かる。

俺は、空中にいる奴らに、血操術で脳天を貫く。


驚いて固まった奴の首を、剣で飛ばし、そして俺に襲い掛かろうと近づいてきたやつを、返す剣で攻撃する。


ゴブリンを蹂躙し、二十匹くらい殺した頃だろうか、ついにホブゴブリンが現れた。


通常のホブゴブリンよりもずっと大きいが、その分動きが重鈍だ。

棍棒を持った腕を切り落とし、袈裟斬りをする。


絶命するホブゴブリンを無視し、他のホブゴブリンを相手取る。



そんなことをして、約四半刻(30分)。キングゴブリンも現れたが、そこまで苦戦はしなかった。

だが、俺の実力は恐らくS級クラス。


だから、普通のA級なら、苦戦は間違いないだろう。

ホブゴブリンはともかく、キングゴブリンはB級冒険者パーティーが必要な魔物だ。

更に、ここのゴブリンはみな、強化されている。


まさか、あそこまで魔法を巧みに使うとは思わなかったが、十分もかからず屠った。



「かなり多かったな……」

俺は血で濡れた剣から、血をふき取り、一息をついた。


「ここの調査か……」

俺は、建てられた小屋一軒一軒覗いて回るが、特に変わったところはない。

強いて言えば、女が一人もいないことだが……。それも、最近できたらしい村なので、納得できる。


ゴブリンは、他種族の雌の腹を借りて、繁殖する。

だから、女冒険者に藪蛇のごとく嫌われている。



「というか、なんでここはこんなにゴブリンが強化されるんだ……」

他の魔物は、強化されない。だからこそ、なおさら不思議だったのだ。


だが、俺はそれに関しての知識はない。その原因を突き止めるのは、月影の役割だ。



ざっと討伐部位を回収しながら見たが、特に気になるところは見当たらなかった。


そろそろ引き上げようか、と考えていると、足音が聞こえた。


ゴブリンか?と思ったが、裸足の足音とは違うことに、すぐに気づく。


なら、冒険者か?と思ったが、そうじゃないと気づいたのは、振り返り、相手を認識した時だった。



「……誰だ?」

「おお、すげェな、こんな数のゴブリンども殺すなんてなァ。一人か?」

独特な発音の男が、そこにいた。


「ああ。お前もか?」

「ああ!俺の名はラース!アンタは?」

「俺の名は、イアン・ネルソン。A級冒険者だ」

「へェ、A級冒険者にしては強ェな!」

「あ、ああ、ありがとう……」

なかなか見ない程の明るさだ。ここが、血で濡れた場所じゃなければ、微笑ましいが、この状況じゃ、ただのサイコパスのようにしか見えない。



――にしても、隙ないな、この男……というか、鬼人か?



多分、勝てない。


「――ここに、何しに来たんだ?」

俺は、ひとまずこの男――ラースの目的を探ることにした。


ラースは、意味ありげな笑みを、顔に浮かべた。

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