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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第五章 Unidentified

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ステラへの小旅行

めっちゃ時系列おかしかったので、直します!

Side Finlay


俺は、要と共に、アインの頼みごとをこなすべく、ステラへ向かっていた。


ステラは、異能力者が唯一生まれる国。

領土は、超古代国家の中でも最小ではあるが、なめてかかると痛い目に合う。



そんな国のはずれの森を住みかとしていた、ゴブリンの村。

そこの調査だ。


どうやら、ゴブリンが集まりつつあるらしいのだが、真偽は不明だ。



「そうだ、これから俺のことはイアンと呼んでくれ」

「イアン?」

「そ、イアン・ネルソン。俺がセオドアで暮らしている時の名だ。ほら、佐倉家は久遠でもかなり力を持つ家だし、要だと、セオドアじゃあいかにも外国人、という感じで馴染めないだろ?」

そう言いながら、要は苦笑している。俺は、要の言葉に納得した。


「確かに、佐倉要のまま過ごすのはまずいか……」

「曲がりも何も、俺は佐倉家の跡継ぎだからな。流石にその名前を出したら、実家にとっ捕まる」

「は……?」

俺は、要の予想外の言葉に思わず声が漏れる。


「あ、あ、あ、跡継ぎ!!??」

「そう。当主に子供がいないのと、当主夫妻がかなり此岸に近いからな。だから、分家の中から、かなり力が強かった俺に、白羽の矢が立った、という訳だ。俺、ちょっと先祖返りしてて、そこそこ力が強い方の純血だからな」

「……本家ではないのか」

「そこなのか?――と言っても、吸血鬼の始祖、月影との婚約の実績があるからな。俺が思っている以上に、俺の力は強いかもしれないが、それも相まって、当主夫妻の間に子ができても、俺が跡を継ぐことは決まっているな」

要はそう言っているが、それって今の状況、佐倉家にとっては、かなりまずいのでは……?


「そもそも、月影とも結婚しない、俺はスーと結婚する、他はいらない、と言っているのに、無理に政略結婚を迫るからな」

「まさかそれが嫌で……?」

そんなの、どう考えてもお前が悪い。最悪スーさん消されるぞ。


「彼岸の扱いなんか、彼岸がよく知っている筈なのに、当主も両親もほぼ此岸だからな。だから、俺が月影の美貌に骨抜きになるとでも思っていたらしい」

いや、普通はそうなんだよ。相手がどんな人なのかは知らないが、月影の美貌に、コロッといかない人物がいるのか。


普段のあれでも、ちょっと危ないところあるのに。


彼岸ってなんかすごいな……。


「ま、胸糞悪い実家のことは置いといて。月影は周りに誰もいないところで俺を要と呼ぶからな。だが、今はそういう状況を常に用意できる訳もないし、言い間違いも避けたい」

「分かった。気を付ける」

俺は、要の言葉に頷いた。


駅馬車に乗る。

俺は王子だから、駅馬車というものに乗ったことがなかった。

更に、荷物はほとんど要が亜空間収納魔法でしまってくれたため、かなり楽だった。


クッションを座席に敷き、その上に座る。

長時間馬車に揺られるのだから、クッションは必須だ。



「寝るか。ここから乗り換えの駅まで、まだ時間がかかるし、朝早かったしな」

要はそう言うと、すぐに寝る体勢になった。


俺も、要に倣って眠ることにした。




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



体が揺すられる感覚に、俺の意識が浮上する。


「降りるぞ」 

要の言葉に、俺は頷いて、手荷物と共に下車した。


駅馬車を何度か乗り換えし、すっかり移動だけでくたくたになってしまった。



二日かけてステラの、ゴブリン村近くの街に到着した。

異能力者だらけの国だが、特に変わったところはなかった。

普通の辺境にある街、そんな印象だった。



宿を取り、俺はだらしなくベッドに寝転がった。


「体力ないな」

「これが普通だ」

要の軽口に、俺は言い返す。

要はケロッとしているが、そもそも魔族と人間では、体力が違いすぎる。

更に、要は普通の魔族よりも体力が多いだろう。

そんな要と、碌に武芸をたしなんでいない俺を比べるな。



「明日は調査だ。まあ、ゴブリンがいる可能性がある以上、フィンレーは行かなくていい」

「なら、俺は行かない。行ったところで、足手纏いにしかならないからな」

「ああ。それはよかった」

要は上着を脱いで、ハンガーにかける。

俺はそれをぼんやりと眺めていた。



「なあ、お前と月影は婚約者同士なんだよな……?」

「そうだな。まだ正式に婚約解消してないから、そうなるな」

「それって……」

「浮気って?魔族には浮気や不倫の概念はないぞ。それに、この婚約は皇家にも、利益があったから例外的に結んだ婚約だしな」

要は、後ろを向いていて、どんな表情をしているのか、分からなかったが。少なくとも淡々とした声に、感情がなかったように感じた。


「お前が、佐倉家の跡取りについては……?」

「それ聞くか?――まあ、俺以上に適任がいなかったからな。逃げたのは、俺とスーの関係が、実家にばれたからだ」

人間だったら、要が百悪い。絶対悪い。


「浮気の概念はないんだろ?」

「月影とさっさと結婚して、スーを妾に囲えって言われた。それが此岸だったら、家が言っていることは正しいんだが、俺は生憎彼岸だからな。半身が近くにいないと、衝動が溜まって、最悪魔物同然になり下がる」

あんなに強い月影が、魔物化する。……一つの災害だろ。


「なんか彼岸って怖いな……」

「だから、鬼人に鬼って言うなよ?鬼人が、衝動がたまって魔物化したのが鬼だから」

「そうなのか……」

カースティスから無理矢理に聞かされたを思い出す。ずっと、鬼と間違えた生徒に対し、あたりが強かったと聞いた。


「それだけで済んでたのが奇跡なくらいだ。他の鬼人なら、すぐさま相手を血祭りにする」

「……」

俺は知らず知らずのうちに恨みを買うかもしれないという事に、恐怖を抱いた。


「彼岸って、それなりの地位にいる此岸でもなければ、会わないからな。それに、彼岸、という単語で表されるくらい、ぶっ飛んでいるし」

「ああ。なんだか、人間とは根本的に違う生物だという事が分かった」

「はは、だが、精神的には一緒だから、化け物扱いするなよ?」

「今更月影を、化け物だとも思えん」

「そうか」

俺の言葉に、要はそう無基質に返したが、どことなく喜色がにじみ出ていた。

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