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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第五章 Unidentified

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蛇とチーター

「それは、ちょっと舐めすぎじゃないかい?」

僕の微笑みにぼうっとしていた女性は、頭を振って顔をしかめた。


「そうは思わないけどね。ほら、金貨って国によって価値が全く違うし」

そう言って、懐から金貨一枚を取り出し、投げ渡す。


「――へえ?あんたたち、一体どっから来たんだい?こんな高純度な金、この国じゃ、手に入らない代物だねぇ」

「それはあげるよ。で、どうする?この国の情報全てで、その高純度の金貨百枚と、僕と知り合いになれる。安いと思わない?」

僕は両腕を大仰(おおぎょう)しく広げる。


「それはまた、随分と自信満々だねぇ?」

「僕の場合、金では動かないからね。あと、情報でも」

専属護衛の給料でも、かなりもらっているのに、ステラでは九星としての給料と、そもそも持ち出していたお金と。――いや、持ち出し分はもうそろそろ尽きそうか。

それに、学費は自分で払っていないし、屋敷の維持費は、そもそもまだ書類上では僕の持ち物ではない。だから払う必要がない。


生活費も、僕持ちではない時点で、かなり優遇されているだろう。


そして、大体の情報は、僕自身で探れるため、欲しくなったら自分で探る。

今は、さっさとノア兄さんの指令を終わらせたいだけだ。



僕の発言に少し考えこみ、そして彼女は言った。


「――あんた、まさか同業者かい?」

「さあ、どうだろう?」

そんなこと、教えてやる義理はない。


「はあ、まあいいさ。トゥルク!あんたがついてやんな!」

「了解しました!姐さん!」

僕たちをここに連れてきた物乞い男――トゥルクが、勢いよく返事をした。


「改めまして、あっしのことはトゥルクと呼んでくだせぇ」

「じゃあ君に試験だ。僕が誰かわかる?」

早速、トゥルクの腕を図ることにした。僕は、顔の大部分を覆っていたぼろ布をどかす。

そして、翼も生やした。


「もしわからなければ……?」

「担当替えかな?」

「姐さん!」

「落ち着け、そんなに難しいものでもない筈だよ。まあ、極度の自惚れ屋(ナルシスト)でもない限りはねぇ?」

女性がおもしろいものを見るかのような目をしている。どうやら、僕の正体に気づいたようだ。


「ええっと、その翼に鋭い犬歯は蝙蝠族の特徴で……。あれ?でも蝙蝠族の髪は紫で、黒はいなかった筈……」

「おい……お前は何を考えているんだ」

「どうせすぐばれるし、ここに()がいたことは、()を知っている人物しか知らないよ?」

「だからってな……」

ヒュー兄さんが渋い顔をした。僕がここで正体を明かすのに、気が進まないのだろう。


「ええっと、黒い蝙蝠族……黒い蝙蝠族……」

「あんた、そんなに馬鹿だったかい?あたしゃそんなうつけに育てた気はないよ!」

「ええっと……蝙蝠……あ、吸血鬼?」

ようやく気付いたらしい。ハッとした顔をしたトゥルクだが、まだまだだ。


「なかなかばれないものなんだね」

「蝙蝠族=吸血鬼だったのか?それ、何のために魔族と獣人に分かれてるんだよ……」

ヒュー兄さんがそうぼやくが、流石に蝙蝠獣人ならわかるだろう。吸血鬼はそこまで獣人らしさはない。


「黒髪の吸血鬼……いそうで……」

「あんた……。黒髪と言えば、そもそも二人しかいないだろう……?」

「あ!皇月影!!」

「担当を変えたければ、いつでも言いな」

「一応正解したので、変えないでおくよ」

僕はにっこり笑って言った。


「あ、だからなんだ」

不意に、サージェント兄さんが何かに納得した。


多分、サージェント兄さんが言いたいのは、僕の身長についてだろう。


魔族は、子供の間、身長をいじることができる。

とは言っても、縮める方向にしか身長をいじることができないので、本体の身長より高くなるのは不可能だ。


だから僕は、僕が十三歳だった時の身長を基にしている。

この時、僕の身長はラース兄さんを超えたくらいだった。


最大は180あるリズ姉さんといい勝負をしている。ちなみに、今僕もそれくらいある。


そして、サージェント兄さんも意外と背が高いため、ようやく170くらいのヒュー兄さんが一番小さいのだ。



「俺は普通、俺は普通……」

「じゃあ行こうか」

僕は、女性に金貨百枚が入った袋を渡し、三人に声をかけた。


「あたしの名前はいいかい?」

「では一応」

「あたしの名はオルファ。蛇の獣人さ。そこのトゥルクはチーターだ」

「ちょ、姐さ~ん」

トゥルクは勝手にばらされ、焦ったようだった。


僕たちの視線を受けて、自分もぼろ布を取る。そこには、確かにチーターの耳が鎮座していた。


「あたしの特徴は、服に隠れちまってねぇ。よく人間と間違われるのさ」

見るかい?というオルファに、僕は片手で拒否した。


「僕は羊獣人のサージェント」

「俺はヒュー。……此岸だ」

「魔族が二人も!こりゃいいことあるなぁ」

トゥルクが、僕たちに向かって、両手を擦り編ませながら拝み始めた。


「この国は魔族がいないからねぇ。人間の国でも、魔族はいないだろう?だから、一か所に二人いるなんざ、とんでもないことなんだよ」

「それもそうか」

オルファからの説明に、僕たちは納得した。


そして僕たちは、未だに拝んでくるトゥルクを伴って、骨董品店から出ることにした。

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