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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第五章 Unidentified

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パーティーのパートナー

サティ姉さんとルーが、隣の部屋に消えた後、カーティス様が、大きなため息を吐いた。


「あーあ、パーティは楽しみなのに憂鬱だな~」

書類を前にしたカーティス様が、腕を頭の後ろで組みながら、口を尖らせていた。


「俺の方が憂鬱だ。何せ、婚約者がいなくなったのだからな」

「いいじゃん。好きな女の子、選び放題で」

「お前は……」

ハロルド様が呆れたように、眼鏡のブリッジをつまむ。対してカーティス様は、一瞬で笑顔になる。


「遊んでないよ?浮気はアウトだからね。それに、相手の子が可哀想」

「当然だ。お前のような軽薄な奴に遊ばれた挙句、嫉妬深いガナーシャの嫌がらせを受けるなど、災難でしかない」

「ひっどいな~。あ、そうだ!これ、確か同性同士でもパートナーになれるらしいし、アインと組んだら?」

「「はい?」」

「あ"?」

ハロルド様と僕は困惑し、マティ様は、ドスの効いた声でカーティス様を脅す。


「マティアス様はジェシカ嬢がいるじゃないですか。どうせ、サティはルーに誘われただろうし、そうなるとアインには相手がいない。そうでしょう?」

「そうだな」

「そしてフリーにしておくのもよくない」

「ああ」

「だから、たまたま空いてるハロルドとパートナーになれば、面倒ごとは少しは避けられません?」

ね?とマティ様に笑いかけるカーティス様とは対照的に、マティ様の機嫌は急降下だ。


「どうせ、学生のままごとのようなパーティですよ?友達同士でパートナーになる学生も少なくないですし、いい考えだと思いますけどねー?」

「……ハロルドは、どうだ?」

「グリンダが面倒そうですが、多少は大丈夫でしょう」

「……」

マティ様は、人差し指を顎につけ、必死に何かを考えている。

しかし何も思いつかなかったのか、溜息を吐いてから、仕方ない、と言った。


このまま上手くまとまりそうでよかった。ミリア姉さんは、この学園の臨時教師として、ここに来る手筈になっているから、それを速めることも考えてはいた。


だが、それをしなくてもよさそうだ。



「……クラスで、問題を起こさない女子生徒を探すのは駄目なんですの?」

「それだ」

ジェシカ様の言葉に、すぐさま飛びつくマティ様。心なしか、表情が輝いている。


「でも、下手したらその子、虐められちゃいますよ?ほら、どっちも人気なんで」

カーティス様は冷静に、僕たちの顔を指さして言った。


「そんなに大事ですかね?」

「さあ?俺もよくわからない」

僕たちは、その意味が分からず、二人で顔を見合わせる。



「ああ、確かにな……」

「それに、多分……」

「似た者同士だし、とりあえず意味が分からなくても、そのまま組ませたらいいんじゃない?」

「はあ、そうするか……」

マティ様は、何かを諦めた様子だった。そんな様子に、僕たちは余計に分からなくなった。



「戻りましたー」

そんな会話をしつつ、更に仕事を進めていると、他の委員会を回ってきたラファエルが、生徒会室に帰ってきた。

ラファエルは、やや疲れたような表情をしていたが、この部屋に漂う変な雰囲気に気づき、怪訝な顔をしていた。


「……どうしたんです?」

「聖夜祭のパートナーについて。――ラファエルは、相手決まってるの?」

「決まってない」

「ラファエルは……大丈夫だね~」

「え……なんです?」

カーティス様の一言で、ラファエルはより困惑顔になる。


「カーティス」

「別に、貶してる訳じゃないよ?ただほら、ハロルドはとんでもなく優良物件じゃん?宰相子息で、公爵令息。成績優秀で、将来安泰。婚約者もいないから、めっちゃ狙い目じゃん。

アインは、結構顔いいし、学年一の秀才。王太子の側近だから、将来安泰なのは変わりないし、婚約者もいない。更に、平民だから、爵位が低くてもアタックしやすいしね~」

ハロルド様の咎めるような声をものともせず、カーティス様はハロルド様と僕がフリーだと危険な理由を丁寧に並べていた。



「それは分かりますよ。……というか、この二人本気で気づいてなかったんですね」

ラファエルは、周囲の反応に納得した僕たちを見て、呆れきっていた。


「俺は、パートナーを作れれば作りますよ。ただ、別にフリーでもいいと思っていますが」

「でも生徒会役員だから。ラファエルも、案外優良物件ではあるよ」

「……マジで?」

ラファエルの瞳が、驚愕で開く。


「だって、俺たちと一緒に仕事してるでしょ?それも、Sクラスを押しのけてAクラスが。アインがだめなら、ラファエルに流れる子もいそうだしね~」

「男同士だから、そんなに虫よけ効果にならないんじゃないですか?」

「オーラでそもそも近づけなさそうだけどね~」

「確かに」

何を想像したのかはわからないが、カーティス様とラファエルは、笑っていた。


「……とにかく、時期をごねてずらしておいてよかった」

「なにをごねたんだよ」

ラファエルが、僕が安堵して呟いた一言に、目ざとく気付く。


「僕、ノア兄さんからずっと叙爵の打診をされていて……」

「でもそれ、来年には関係なくないか?」

「あ」

「お前なあ……」

確かに、来年の存在を忘れていた。そんな僕の様子に、ラファエルは開いた口がふさがらない様子だった。


「しかも、公爵……」

「マティアス様の次に身分が高くなりますわね。ふふ、その時は、私はアイン様、と呼ぶべきでしょうか?」

「ジェシカ様……。流石にそれは……」

「ふふふ」

ジェシカ様は、楽しそうに笑った。


僕は、来年の聖夜祭が大変そうだと思いつつも、今年の聖夜祭をどうやってやり過ごそうか、と考えていた。

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