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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第五章 Unidentified

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素直な鬼人

デリケートな話題が出てきます。自衛をよろしくお願いします。

夜。僕が寝る前の習慣として、本を読んでいた。研究していると、脳が興奮して寝つきが悪くなる。

だから、それを落ち着けるためにサティ姉さんお勧めの小説を読んで、ゆっくりしていた時だった。


『アイン、久しぶりだな!』

突然脳内で響くラース兄さんの声。僕個人にテレパシーを飛ばしている。特に(九星)に秘密にしたい話もなかった筈だけど……。


『しばらくそっちで騒がしかったけど、戦争でもしてた?』

『えっ、なんでわかったンだ?と言っても、俺は参加しなかったけどな!』

まあ、ラース兄さんは全てを破壊するので、たぶんノア兄さんの目的に合わなかったんだろうな。ミリア姉さんもエリック兄さんもいなかったし。

ただ、ゼスト兄さんとララ姉さん、オットー兄さん、リズ姉さんは戦場にいたみたいだし、本気で相手国を潰しにかかってる。

あちら側には、騎士団長レベルの人物もいなかったようだし、結構舐められていた。

ノア兄さん、戦力的に舐められるのは良しとしないから、内心本当に怒っていたんだろうな……。


ちょっと動きが不穏だったし、要を派遣しようかとも思ったけど、余計だったみたい。

イーストフールとステラと結構距離が離れているから、流石に可哀想だな、と思ってたんだけど良かったね、要。


どこからか、血も涙もない悪魔もどき!という声が聞こえそうだが、気にしない気にしない。気にしたら負け。



『それは、ステラにも蝙蝠がいるからね。ルーヴァとハティートとポガチョスか……。そこ、戦闘民族の成り上がりの国だから、新興国でもかなり好戦的だし、ウィキッドも入り込んでるみたい。――獣人はいた?』

『ノア兄からは聞かなかったなァ。それがどうしたンだ?』

『ポガチョスが、獣人の国なんだよ。だから珍しいなって』

『獣人が国を作ったァ?無理に決まってンだろ。集落が限界だ。ゴブリンに毛が生えた程度の知能しか持ち合わせてねェだろ』

『ラース兄さん、流石にそれは言いすぎだよ……。もっと獣人は頭いいよ。ほとんどない、というだけで国は作れるから。ゴブリンは無理でしょ』

ラース兄さんは、ゴブリンへの評価が高い。仕方ないことではあるが、その評価は世間一般のゴブリン像とは離れているし、世間一般のゴブリンは、巨大な集落を築けません。


『でも獣人はいなかったんだ……。第二のチーズルになってないかな?』

『ウィキッドはいなかったぞ?』

『普通いないでしょ。そこにいたら、第二のチーズルがあります、って言ってるようなものでしょ』

『そうか、確かに。頭いいな!』

ラース兄さんは、考えは浅いが理解は早い。素直に裏表なく僕を誉めるラース兄さんは、いい彼岸だと思う。


『まあ、ただ舐められていただけの可能性もあるけれど。ポガチョスについては調べてみる。そろそろ学園は長期休暇に入るからね。その間に、調べてみるけど、その期間は完全に学園を離れることになる。だから、誰か学園に来てくれない?できればミリア姉さんがいい』

『やだ』

『僕もやだ』

ラース兄さんが駄々をこねたので、僕も真似してみる。


『俺の半身に何をするつもりだァ……?お前にも半身いるだろ!!』

『いるし、そもそも僕とミリア姉さんはどう頑張っても恋仲にはならないよ』

『いや、お前はかなり美人だからな。信じらンねェ』

ラース兄さんは、本当にそこに関しては一貫している。


『これは、かなり個人的なことだし、あまり話したくないんだけど……』

『教えろ。じゃないとミリアに言うぞ』

『ええ……。わかった。わかったけど、驚かないでよ?』

ラース兄さんの子供のような脅しに、僕は屈しざるを得なかった。


『魔族って、男女両方とも、その……父親も母親もできるでしょ?』

『人族でもできねェか?』

『それは……その……生物的に』

ラース兄さん、わざとわからない振りをしてないよね!?


『ああ、子供育てる時じゃねェのか、産む時か!』

『そう。でも、結構多いんだよ、その……ふ、不妊が』

『多いのか?』

純粋すぎる。たぶん僕の方がそっち方面の知識がない筈なのに。


『ラース兄さんも、下手したらそうかもね』

『そうなのか……』

『とは言っても、男性には、どちらかというと女性不妊が多いらしい……。だから、ラース兄さんには関係ないかもしれないけど……』

『お前は?』

『ええっと……人族との女性だと、子供は難しいかな……?』

難しいというか、無理。僕は男性不妊らしい。だからこそ、余計に金華を中心として魔王に即位させられそうになっているのだが。

それに、子供がいない夫婦はあり得ない。いくら出生率が低い魔族でも、それはあり得ない。


人族での同性愛が認められないのも、そこが原因だ。


『…………悪かったな、疑って』

『疑いが晴れたならいいよ。それにほら、サティ姉さんはミリア姉さんと仲良かったでしょ』

『そうだが……まさか、サティの記憶を取り戻そうとか考えてねェな?』

訝しげなラース兄さんの声。

確かに、夏はサティ姉さんには絶対に隠し通そう、と話したが、真反対のことを話す僕を、不審に思ったのだろう。


『考えるも何も、記憶が戻ったんだよ。だから、会わせたいな、って』

『それはいい考えだな!ミリアは、最近思う存分魔法が打てない、ってストレス貯めてたンだよ』

文句を言うような声色だが、残念ながら喜色を隠しきれていない。なんだかんだ言って、半身が大好きな彼岸は、構われるだけでも嬉しいのだ。


『それはラース兄さんがストレスのはけ口になれば……?それで、刀の練習すればいいんだよ』

『リズ姉みてェなこと言うなよ!』

『あれだけいい刀なのに、使ってないんだ……リズ姉さん可哀想』

『分かったよ!使えばいいんだろ、使えば!』

僕がリズ姉さんに同情すると、ラース兄さんが自棄になったように叫んだ。


『じゃないと、ミリア姉さん、ラース兄さんの側から離れるからね。僕が彼岸について、細かく教えるから』

『おい!!俺の衝動を使ってストレス発散させるな!!』

『そうならないようにね。どうせ、嬉しいでしょ?半身から構ってもらえて』

『もちろんそうだな!』

『じゃあ、このことノア兄さんに報告しておいて』

僕はそれで、ラース兄さんとのテレパシーを打ち切った。

ラース兄さんの要件を聞き忘れたけれど、たぶん話したかっただけだろうな。前にエリック兄さんとリズ姉さんがテレパシーで大喧嘩した時、ノア兄さんと、普段そこまで怒らないゼスト兄さん、ララ姉さんまでもが怒ってたから。


正座で三時間みっちり説教されたそう。本当にうるさかったし、丑三つ時だったし。

だから、ただの雑談でも、気を使ったんだろうな。

これは、その時代での話でフィクションです。現代の話でもなければ、実在する人物も存在しません。

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