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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第五章 Unidentified

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謎が残る致死量の血


「この魔方陣をあげる。顔につけるといい。だから、魔法を解いた方がいい」

「え?いいの?」

「だから決してその紙をめくらせないこと。常に、どんな時でもつけておくこと。そして、彼岸の力を、何が何でも使ってはいけない」

「わかった!」

「それと、子供の間は絶対に幼子の姿でいること。外に出ないこと。何かあったら必ず周囲に言う事」

「うん」

「それと――」

「多い多い多い!!一気に覚えきれんだろ、それ!!」

ラファエルが、突然叫ぶ。その声に、タラヴが肩を大袈裟にびくつかせた。


「どうせ今していることだ、ほとんど。紙とペンない?符を書く」

「これでいいか?」

「ありったけ書くから時間かかるけど、これでも殺さない保証はできない」

僕はそう言うと、符を書き進めていく。


「そう言えば、ギルマスと話があるんじゃなかったか?」

「え、そうだったのか?」

「大丈夫。なんとなくわかったし」

僕と、和解する気はない。あの青年に対し、何かしらの処分をしないのがその証拠だ。


「命乞いか?ハッ、みっともないな!!」

「それならそっちがすべき。一体いつ拾ってきた?ウィキッドがここら辺にいるのが不思議だったが、ようやくわかった」

「いたの?」

ラファエルが、驚いていた。


「始末した。――デマに踊らされてたけど、目標はペスケ・ビアンケだった。よかったな、入り口、かなりわかりづらくて」

「まさか――」

「ここに妖狐がいることが知られた。それも、過激派に」

前にいたウィキッドは、たぶんその魔族の依頼だろう。ウィキッドは普段は普通に暮らしているし、どちらも他種族からすれば、分かりづらい。

だからウィキッドがいたのはたまたまだろう。


その証拠に転移魔法陣に張った罠が作動したのを見に行ったら、人間の遺体があった。仕掛けたのがウィキッド用の罠だったため、耐えきれずに事切れたらしい。

依頼者も殺しておいた。

一体いつの間に恨みを買ったんだろう、と思っていたけど、妖狐がいたからなのか。


「あまり試行ができてないけど、特に問題があった、というのも聞いてない。使い方は、何を抹消したいのかを思い浮かべながら魔力を符に流し込めばいい」

「そ、そんなすごいものを……!」

僕が手渡した符を、キラキラした目で見るタラヴ。


「妖狐は、力を制御するのが苦手らしい。そこにいるだけで、全ての存在を魅了してしまう。多分久遠は君の存在を認めないだろうし、見つけたら君を殺すために何でもしてくるだろうけど、それは僕には関係ない」

「見逃してくれるだけでもありがたいのに……」

感激したようだが、自分が殺されそうになったのを、気が付いているのかいないのか。


「今殺さなくてもいいと判断したまで。殺すに越したことはないけれど、使い方はある。――ペスケ・ビアンケも、そのつもりで」

「――何に使うんだ?」

「どうせ、この子を狙うのは、左翼の過激派か気が荒い天使くらいだ。天使はともかく、左翼の過激派は潰せるなら潰した方が、久遠にとっての心証もよくなる。きちんと対策している妖狐、それも混血に近い純血なら、幽閉で手を打ってもらえるんじゃない?」

「す、少なくとも殺されは……」

タラヴ含め、ペスケ・ビアンケの面々の顔が輝く。


「しない。ただそれでも、金華に娶られる可能性がある」

「金華に……」

「きんかって、そんなにやばいのか?」

タラヴは青ざめ、ペスケ・ビアンケの面々は不思議そうな表情になる。


「金華は、商人の一族だ。世界一の資産家で、金ではまず動かない。そして次に、悪魔一族という点が最も厄介だ」

「悪魔一族?」

「そう。悪魔は最強種族。誰も敵わない。それと、見目が美しい傾向にある妖狐と吸血鬼が好きでね、かなりの数を娶っている」

「はい。妖狐はともかく、血を飲めない吸血鬼は、すぐに衰弱して死んでしまうらしくて……」

タラヴは悲痛に顔を歪ませる。


「それに、かなり無責任だから、婚外子も多いらしい。多くの素行の悪い吸血鬼は、そういう生まれだ」

「うっわ、最悪じゃん……」

「だから、一概に死を免れることが、本人の幸せにつながるかと言われれば、そうじゃない」

「その話で行くと、お前も殺されるか、金華に娶られるんじゃあ?」

「うん。だから、よりよい未来になるように動いているんだ」

「さっさと死んだらいいだろ」

「そうもできない事情があって。まあ、また来る。あと」

僕は、タラヴを抱き上げようかどうしようか迷っている人に、こう言った。


「魔族の成人は50歳、彼岸なら、血が濃ければ濃いほど成人が遅れる。その子、75歳くらいかな、成人するのは」

「え?」

「じゃあこの子は……?」

「人間に換算すると10歳未満?」

「「「「「「「「えぇぇぇぇぇぇぇえええええええ!!???」」」」」」」」

ペスケ・ビアンケの絶叫が、室内中に響いた。


ちなみに、ここに来た時に血まみれになっていたあの血は、鼻血、それも複数人のものだったらしい。どうやら、タラヴの成長した姿を見てしまったのだと。

……どうやって浴びたの?

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