表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第五章 Unidentified

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

229/283

新しい支部

あの事件の次の日のペスケ・ビアンケ。


僕は、ラファエルの様子を見るために一緒にペスケ・ビアンケに赴く。

それと、ロレンツォにも、聞きたいことができた。



「なあ、俺の心配はしなくてもいいって……」

「ちょっと聞きたいことがあるから。ロレンツォに」

ラファエルが、困ったような表情で言う事に、僕は目的の一つを告げ、追及を回避する。


「ギルマスに?何を」

「今後のこと。ペスケ・ビアンケは僕と仲良くしているけど、これからどうするの、とか」

「あー、確かに。元々敵対してたもんな」

ラファエルが、今になってようやく思いついたらしい。


「あと、僕にできない色々な活動も、ペスケ・ビアンケにはしてほしいからね」

「お前的には、仲良くしたいのか?」

「いや?」

「それにしては、やけにうちと関わるな……」

「敵の敵は味方だからね。ペスケ・ビアンケが目的を達成するには、僕と協力関係でないと難しい。同盟だよ、同盟」

「よくわからないな……」

ラファエルは、複雑そうな顔をしている。


普通に考えて、自分を殺そうとする組織とは距離を置くだろうが、僕にとっては都合がいいことこの上なかった。

だから、協力する。いつか来るときの、保険のために。



「それとさ、今更なんだが……アインって本当に暗殺者か?」

「それは、どういう意味?」

「戦い方が暗殺者っぽくない」

「それを言うなら、ラファエルの方がそうでしょ。その髪、暗がりでも目立つよ」

「それはそうなんだが……。魔剣士だろ、お前」

「どこが?」

「すべてが」

ラファエルは、僕が暗殺者に()()()()()()()()()()理由が分からないらしい。


「僕が吸血鬼なのは知ってるよね?」

「知ってるな」

「僕も空を飛べる。ただ、天使の翼とは違う翼を持つ」

「天使は猛禽類の翼、吸血鬼は蝙蝠の翼だろ?」

どうやら、ラファエルはいまだに思い当っていない様子だ。


「僕たちの翼は、重いものを持ち上げることはできない。つまり、鍛えすぎて重くなると、空を飛ぶ、という利点が消えることになる」

「あ」

「吸血鬼で剣士なんて、高い機動力を捨てるようなものだ。よほど、剣の腕に自信がなければ、そんな危険なことはしない」

僕に言われ、ようやくわかったらしい。剣でさえ、そこそこ重量があるのに、それを振り回す筋肉まで増えると、安定して飛ぶことが難しくなる。

多分、そんなことをする吸血鬼は、要以外に誰もいない。


「あとついでに刀は力が強力な分、室内戦に全く向かない。軍にいた頃は、殲滅戦以外は暗器で人を殺してたよ」

「それは……暗殺者だな……」

最近、この刀を使う機会が増えていたからこそ、剣士と間違えたのだろう。


「ラファエル、この刀持ってみて」

「?いきなり何を言い出すと思ったら――!?軽!!」

僕は、両手を広げたラファエルに、リズ姉さんの最高傑作の一つである刀をのせる。あまりの軽さに、ラファエルの視線はは僕の顔と刀を、行ったり来たりしていた。


「限界まで鋭くした上で、魔法も同時に使っているから、あんなに強いだけだよ。普通なら、何も斬れない」

そう言って、ラファエルから返された刀で、手の平を斬りつける。しかし、表面が軽く斬れただけで、血もほとんど流れなかった。


「そりゃこれだけ軽かったらな……。下手なナイフより軽いだろ」

「それ見て、まだ剣士だとでも?」

「思える訳ないだろ」

僕は刀を仕舞い、再び歩き出す。


「僕が刀を使うとき、長期戦になることが多いから……軽めに作ってもらったんだよ。生憎、剣術もそこまで体力が必要なものでもなかったしね」

「それのお陰で、アインは剣士、という錯覚を受けたわ」

「そう言われても……」

そんなことを駄弁りながらも、ようやくついた建物。そこは、一見するとただの古びた書店だった。


「バーに出入りするの、あまり好きじゃなかったんだよな~」

「僕も」

バーでアルコール臭がする、なんてことはないだろうが、警戒しない訳にはいかない。


それに、どうしたって目立つことは変わりない。



「確か、この本棚にあるこの本を押すと……」

ガラガラで、誰も客がいない店の中、階段下にある本棚をいじるラファエル。少しすると、本棚が動き、奥に道が現れた。


ここは、新たにできた支部の一つだ。

本部(バー)よりも、機密度の低い情報や下客を相手にするところだ。


本部と近いのは、ここを、本部の二つ目の出入り口にするかららしい。



「お、来た来た」

ロレンツォが嬉しそうに、僕たちの来訪を知らせる。


「お、ラファエルじゃーん」

「なんだよ。――って、なんで血だらけなんだよ……汚いぞ」

「いやはや~さっき帰ってきたばっかなんだよ」

「帰る前に血ぐらい流せよ!鼻が利くやつがいれば、一発でばれるだろ、馬鹿!」

「ああ、それなら大丈夫。帰ってきた後についたやつだから」

「さっきの言い訳は何だよ……」

ラファエルは呆れているが、その血は人間であれば、優に致死量を超えている。一体、何をすればそんな量の血を浴びることになるのだろうか……。



まさか、仲間割れ?


僕の思考が物騒な方向へとシフトした時、ラファエルが説明をくれた。


「ああ、アインは初めてか。ペスケ・ビアンケには、俺以外にも彼岸がいる」

「ん?ラファエルに彼岸の力を教えた時、ラファエルしか魔族はいない、と言ってなかった?」

「あれから増えたんだよ。とは言っても、魔物に襲われかけた子供を保護したんだけどな」

「そうなんだ……ちなみに、種族は?」

僕が聞くと、ペスケ・ビアンケの面々が元気に答えてくれる。


「種族と言われても、全ての彼岸の種類なんか知らないぞ、俺」

「俺も!」

「ただ、天使と堕天使と吸血鬼じゃないのは分かる」

「おい誰だ、今堕天使言った奴!!」

「俺!」

「私は思っただけ~」

「うちも~」

「お、俺はそ、そんなこと、思ってないんだからねっ!白髪赤眼の天使じゃないから、堕天使でもないな、とか思ってないんだからねっ!」

「お前が言い出しっぺだろ!!」

まあまあ、とおざなりになだめるロレンツォ。


僕は、時間がかかりそうだと判断し、一人静かでいる人に話しかけた。


「ええっと、君は何か知ってたり……」

「知らん。お前に教える義理もない」

布で口元を隠すその青年は、冷たく言い捨てた。

ちなみに、最初はバーのあの合言葉は格好いい!と、ペスケ・ビアンケの面々(ほとんど中二病)からは大好評だったが、次第に面倒くさい、という意見が現れた。


今は、あの古びた書店のギミックが人気。(次第に面倒、とか言い出す奴いそう)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ