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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第五章 Unidentified

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問題なさそう

Side Raphael


俺は一体誰だ。


この、『白桃』の世界に転生してからずっと、考えてきたことだ。


俺は、人間ではなく、天使だ。白髪赤眼という、アルビノみたいな色を持つ。



『白桃』には、魔族も亜人もいなかった。普通のアクション込みの乙女ゲームだと思っていたのだ。まあ、俺は『白桃』をやったことがないから、もしかしたらエルフや獣人辺りは出てもおかしくはないが。


というか、アインは吸血鬼な訳だし、なんかあるだろ。

でも、よく人間と吸血鬼しかいない世界とかあるしなぁ……。


何が言いたいのかというと。

ラファエルという天使はゲームには一切登場しない。

だから、途中まではただのモブだと思っていたのだ。いや、思い込もうとしていたのかもしれない。今となっては、全くわからないが。


学園にも、魔族はどうやら俺とアインだけらしい。そもそも人間の国で、魔族が生まれることはほとんどというか、全くと言っていいほどないらしい。

つまり俺の出身国は、久遠の可能性がかなり高かった。


そこに現れたとある清掃員。あの男の存在は、俺がとある貴族のご落胤(らくいん)という事を知るきっかけになってしまった。



アインは、あまり権力を好いていない。それは、ステラで公爵位を貰う話を、ずっと蹴っているらしいことから察することができる。


アインの存在は、不思議だ。何でも知っているようで、時々全くの無知になる。

そんなアインは、何故権力を嫌うのか。権力者に何かされたのなら、むしろ権力を欲すると思うのだが。


それでも、アインはなんだかんだ言って優しい。ずっと俺につっけんどんで当たりが強かったのも、何か理由があるのでは、と思えるようになるくらいには。

アインは、俺が権力に近くなることによって、望まない面倒ごとに巻き込まれて欲しくない、と。そう考えているように見えるのは、ただの自惚れなのだろうか。

アインは、全ての困っている人物に手を刺し伸ばすほど、聖人ではない。特に、恨みを抱いている天使と同じ色を持つ俺に、わざわざ優しくするような人(?)ではないだろう。


だからこそわかる。俺の生まれの可能性がある、翔雲家はかなりの力を持つ家なのだろう。何故その血を引いている(かもしれない)俺を、セオドアに捨て置いたのかはわからないが、まあ突っ込めば確実に問答ごとが掘り起こされるのは目に見えているだろう。



アインは、サティと一緒にどこかへ行ってしまった。

俺は、アインに言われたことをうまく飲み込めずにいる。

そんな俺に、この国の筆頭公爵の一人娘であるジェシカは、優しい笑みを浮かべた。


「そんなに悩んでも仕方ないわ。確かに、突然そんなことを言われて、戸惑う気持ちになるでしょう。けれど、貴方は貴方ではなくて?今まで一度も、音沙汰もなかったなら、それは血がつながっているだけの赤の他人よ。何も考える必要はないわ」

「俺は、俺……。なんだかわかった気がします」

例え、俺が翔雲であっても、今までしてきたことは変わらない。

少し、肩の荷が下りた気がした。


「ふふ、貴方がたとえ、翔雲家の誰かだったとしても、私には関係ないわ。それに、そのことは私以外にも当てはまりそうよ?」

「……貴族の血が入っているかもしれない、と。それで態度が変わられるのは、嫌だな」

どうせ、ペスケ・ビアンケの面々は茶化しに茶化しまくるだろうが、もし、その他の人の態度が変わったら……。ぞっとする。


「でも貴方には何の伝もないじゃない。それに、久遠の貴族なんて、そこまで有名じゃないわ」

「それは……確かに」

そもそも、久遠の家なんか皇家くらいしか知らない。なら、侯爵である翔雲なんか、誰も知らないか。

妙に納得してしまった。


そこで、なぜか落ち込んでしまったが、それは案外自分の家がしょぼかったからなのだろうか?


「アインから、話さないで、と言われたとおり、このことは私たちの秘密よ。どうせ、誰にも知られることはないわ。悩んでも無駄よ」

ジェシカの言う通りだ。

俺の出自が、翔雲だったとしても、口止めされている以上、広く知られることはないだろう。



「それにしても、不穏ね。一体なぜ、翔雲の見た目でここに襲撃をかけたのかしら?」

「そうですね。戦争を起こしたければ、王族を襲撃してもいい筈です。それなのに、あの場には王族はいなかった」

「私という、準王族はいたけれど、それも彼らが予測していたことなのかしら」

「……ジェシカ様は、普段は忙しいのですか?」

「ええ、そうよ。今日はたまたま教師の急用が入ってしまって、予定に空きができたのよ」

それなら、奴らがジェシカを狙っていた、という線は薄いか……。

サティは、友人も誘うといい、みたいなことを言われていたらしいけど、たぶん無差別なんだろうな。


下手すれば、アインが来る可能性だってあったんだ。



「ともかく、私たちにわかることは何もないわ。アインが何か掴むまで、大人しくしていた方が賢明ね」

「分かりました」

俺は、ジェシカの意見に頷いた。



さて、俺はペスケ・ビアンケに伝えてもいいものなのか……。



――そう言えば、ペスケ・ビアンケって日陰者だから問題ないか。



ペスケ・ビアンケの連中に聞かれたら、ブチギレ必至のことを考えつつ、俺は自分の寮部屋に戻ることにした。

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