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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第五章 Unidentified

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思い出したはいいものの

「天使一族の……翔雲家」

「俺のルーツ、知ってたのか?」

「知ってましたよ。そんな目立つ容姿で、推察できない訳がありませんから」

「なら……!」

僕のやや冷たい言葉に、ラファエルは怒りを露わにする。

ラファエルは、何かを言いつのろうとするが、言葉が出ない、という感じだ。

僕は、構わず続けることにした。


「ちなみに僕の研究を盗んだ不届き物の天使がいるのですが、彼らの見た目は、白髪赤眼なんですよ。更に、翔雲は別に没落してませんからね」

「……」

「そもそも、最初に出会ったときには、無知な翔雲の回し者、という風にしか見れませんでしたから」

「無知な翔雲の回し者……」

「た、確かに」

「途中で気づきましたよ?孤児であることに。しかし、今度は翔雲が子供を捨てた理由が思いつきません」

「だから、何か複雑な事情があるのかもしれない、と置いていた訳か……」

ラファエルは、納得したように何度も頷いていた。

理解が早くて助かる。


「そういうことです。隠していたことは謝罪しますが、彼岸一族なので……。その清掃員が翔雲だとすれば、一体何を考えているのやら……。セオドアに、喧嘩を売る行為ですし」

「確かにな」

やったこと、完全にアウトだしな、とつぶやくラファエル。


ともかく、もうこれ以上はこの部屋でわかることはない、という事で僕たちは部屋から立ち去ることにした。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「あの……覚えていませんか?」

僕は、サティに向けてそう言った。


サティに話がある、と呼び止め、誰も来ない場所に移動した次に放った言葉。


「え?覚えて……?」

「……覚えていないならいいのです。ただ、雰囲気が変わったので、もしかして、と思って」

正直、覚えていないなら、九星に巻き込みたくはなかった。

……無理だろう、と言う理性を無視しながら。


「……もしかして、私が13(サーティーン)と呼ばれていたことに、関係があったり……?」

「思い出したんだね?……ああ、そこまで嬉しがるものでもないのかな」

「ん?それは一体……?」

サティ――サティ姉さんが戸惑ったような声を出したが、僕はあえて明るい声で、話題を逸らす。


「僕のことは?あまり話さなかったけれど……」

「まさか、01(オーワン)?」

「そうだよ。サティ姉さん」

「姉さんって……///でもごめんね、あまりはっきりとは思い出せなくて」

「いいよ。なんとなくでも」

口調が完全に変わった僕に、サティ姉さんは驚く。


「さっきまでの丁寧口調は?」

「サティ姉さんって、ラース兄さん……05(オーファイブ)並みの勘の鋭さでしょう?だから、もし昔のように接していたら、すぐに記憶を取り戻しちゃうかもしれないから……」

ラース兄さんの勘の鋭さは、もはや一つの異能力である。それを、サティ姉さんも持ち合わせている節がある。


「私の記憶喪失が、ずっと続いていた方がよかったって?」

「だって、邪神と戦わなきゃいけないんだよ!?ずっと記憶喪失のままなら、サティ姉さんは邪神と戦うこともなかったのに……」

「なら、思い出した方がよかったかな」

「サティ姉さんは、そう言うだろうけど……」

僕は、表情が曇るのを感じた。


「そんな顔しないで。少なくとも、昔02(オーツー)が私にしてくれたアドバイスを思い出したことで、拳銃持ってる相手とやり合えたんだから。ねえ、今の九星について、教えてくれない?」

「いいよ。話しているうちに、思い出すこともあるだろうしね」

僕は、二つ返事で了承した。


記憶喪失は、衝撃を加えることによって、記憶を取り戻すことがあるという。

恐らく、なにかがきっかけで記憶を取り戻したのだろう。


僕は、九星について、色々とサティ姉さんに語った。


「え!?04(オーフォ―)06(オーシックス)が結婚した!?私02とくっつくと思ったのに!」

「名前で呼んであげてよ。ゼスト兄さん(02)は、ララ姉さん(04)みたいな人じゃなくて、なんだか暴れ馬のような人と付き合いそう……」

「あー、分かるかも。苦労人属性みたいな?ずっと振り回されてそうだよね」

「うん」

御影姉上のような人に、一生振り回されてそう。


「あと、ミリアちゃんとラースはもうくっついた?」

「全く。ラース兄さんが二の足踏んでるから……」

「ヘタレか。はあ、いいなあ~。九星で相手がいないの私だけだよ。09(オーナイン)だって07(オーセブン)とくっつく寸前でしょ?」

「え?よく喧嘩してるよ?」

ついこの前だって、テレパシーでとんでもない喧嘩を繰り広げてたよ?しかも深夜。珍しくぐっすり寝れたのに、飛び起きる羽目になったのを、僕はまだ根に持っている。


「喧嘩するほど仲がいいってよく言うでしょ?絶対ケンカップルね」

「ケンカッ……?」

サティ姉さんって、よくわからない単語を口にするよね。小説の知識かな?



「ところで……本当にアインはクッキー作ってるの?」

「気づいた?」

記憶は順調に取り戻している模様。どうやら、とんでもない呪物を作り上げた僕の料理の腕も思い出したようだ。


「そもそも、なんでパンケーキがあんなに呪物になるの。外は炭、中は生焼け、味は塩と砂糖を間違えて?炭の味と酢の味が同時にするパンケーキなんて、食べたことなかったわよ……」

「油かと思ったんです」

「見ればわかるでしょ」

塩と砂糖も間違えはするけどさ?とぼやくサティ姉さん。


「あと油にしては、量多すぎでしょ」

「多かったんだ」

「本当に、キッチンに立ってほしくないわね……。なんであんなに美味しいクッキーができるの。まあともかく、アインに料理を徹底的に仕込んでくれた人に感謝ね」

遠い芽を擦るサティ姉さんに、僕は申し訳ない気持ちになる。


当時は、なぜか変な色になったパンケーキを、ゼスト兄さん、ミリア姉さん、ラース兄さん、サティ姉さんに食べてもらったら、皆泡を吹いて気絶してしまったのだ。

僕は、別に不味いとも感じなかったため、大丈夫かと思ったのだが……。



「そうだね。シャンメルは、本当に素晴らしい料理人だと思う」

「あのアインがまともを通り越して絶品の料理を作れるようになりました!なんて、とても強力なうたい文句でしょ」

「まさか、泡を吹くくらい不味かったなんて……。あの後、かなり落ち込みました」

「ちなみに味覚が鋭かったラースは、三日寝込んだままだったわよ?」

絶対塩と炭と酢以外も入ってる、と言うサティ姉さん。

確かに、真っ白な小麦粉とそこら辺に置いてあった卵、なんか黄色っぽい牛乳みたいなやつ、蜂蜜、バターだった筈。

あとは、ピーマンも入れた。


「一つおかしいものがあった気が……。なんでピーマン?」

「にんじんも入れたよ?」

「シャンメルさんに教えて貰った料理以外をしないでください」

サティ姉さんは、僕の両手を握り、とても真剣な顔で、懇願した。

~アイン君流パンケーキの材料~


真っ白な小麦粉=めっちゃ古い小麦粉

そこら辺に置いてあった卵=常温保存してあった卵(焼いているからセーフだった)

なんか黄色っぽい牛乳みたいなやつ=古い牛乳

砂糖=塩

油=酢

蜂蜜=油

バター=牛脂

ピーマン=ピーマン←?

にんじん=にんじん←?

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