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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第五章 Unidentified

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結局わからぬまま

Side Sattie


室内が、とんでもなく明るくなる。

私たちは咄嗟に目をつむり、痛いくらいに眩しい光から、目を守る。


やりすぎだと思ったが、たぶんこれで終わりだろう。

私はそう思い、次アインに会ったら、精霊たちに魔法を手伝ってもらうときのアドバイスを貰おう、と心に決めた。


しばらくし、光が落ち着いたらしいのを感じ、目を開いてみた。


「………………うわぁ」

私は、顔を引きつらせていた。


そこには、無傷の清掃員さんと、傷だらけで、明らかに満身創痍だとわかるウリアがいた。


服は所々焼け焦げ、仮面はひびが大きくなっており、今にも砕け散りそうだ。

更に、フードの隙間から、くすんだ赤色の髪が零れていた。


「はあ、はあ、はあ、はあ……」

ウリアは、息を切らしているものの、しっかり立っていた。


正直、あれだけの威力の魔法を受けてもなお立っているのは意外だった。

ウリアを侮りすぎていたのかもしれない。



「サティ、これが聖属性魔法じゃなくてよかったな」

ラファエルさんが、私を睨んだ。

私は、ごめんなさい、と身を縮こめた。



「……いくら上級魔法といったって、あれだけの威力なんか出せない。一体どういうからくりで?」

「けれど、上級魔法であるのは確実です。神話級魔法なら、もっととんでもないですから」

「そりゃ、そうかもしれない、けど……」

あの魔法は、私たちの度肝を抜いただけでなく、清掃員さんから余裕も奪っていったらしい。


「そろそろ引きましょう。また、とんでもないものが飛び出てくるかもしれませんので」

「――あ、ああ、そうだね。まあもう目的は達成できたようだし」

「待て!お前らの目的は何だ!!」

ラファエルさんが、何とか起き上がりながら、叫ぶ。その額には、青筋が立っていた。


「教えない。――せいぜい、頭を悩ませるがいいよ」

「では、これで」

「逃がすもんか!」

私は駆け出したが、風属性中級魔法、バーストで足止めされた。


私が思わず顔を背け、目をつぶっている間に、二人は消えてしまっていた。


「チッ、転移魔法陣か……」

ラファエルさんはよたよたと歩を進め、いつの間にか床に落ちていた紙を手に取る。

そこには、緻密な線が描かれていた。


「魔法陣は魔力を流せば使えるが……。駄目だな。発動しない」

「そんな……」

取り逃してしまった。私は、落ち込んだ。


「まあ、逃がしてしまったが、この結果は上々じゃないか?あいつは、俺よりも強かった訳だしな」

「そうね。――サティ、とても格好良かったわ。助けてくれて、ありがとう。後日、改めて礼をするわ」

「い、いえいえそんな!ただ私は必死で……」

れれれ、礼なんてとんでもない!!そんなことを考えつつ、私は必死に両手を振って、遠慮する。

しかし、ジェシカ様はそんな私の手を握って、柔らかく微笑む。


「いいじゃない。私はこれでも公爵令嬢なのよ?きちんと礼をさせてちょうだい」

「分かりました」

「あと、マティアス様からも礼がある筈よ。だって、マティアス様の婚約者を守ったのよ?」

飛び切りいい笑顔に、私は拒否することもできず、私は頷く他なかった。


だって!私はただの平民だもん!確かに、遠慮は失礼かもしれないけれど……。怖い!!



「はあ、色々とわからないことだらけだな。誰か、その方面に詳しそうなやつでも呼ぶか」

「詳しそうって……」

「あ」

恐らく、思い浮かべている人物は、みんな同じだろう。けれどその彼は、今日は大事な予定がある筈だ。今学園にいるかどうか……。



「一応、訪ねてみましょう。いなくても、後で調べてもらえばいいわ」

「そうですね!私も、聞きたいことがありますし!」

「俺もだ。特に、拳銃について」

「そうね。私、初めて見たわ。もしあれが、珍しい武器ならば、それだけで襲撃犯が誰なのか、絞れそうね」

ジェシカ様は、頬に手を当てながら、そう言った。


「ジェシカ様、何か、あの女について、覚えていることはありませんか?」

「お、覚えていること、かしら?」

ラファエルが、真剣な眼差しと共に、ジェシカ様にそんな質問をした。

確かに、直接触れたジェシカ様なら気づくことがあるかもしれないしね!


「そ、そうね……。結構覚えのある匂いがしたわ」

「覚えのある匂い!?」

「そ、それは一体どこで!」

「私が愛用している香水の匂いよ。少なくとも、金銭的にはかなり裕福な方でしょうね」

「香水の匂い……」

ラファエルさんが、考え込むように呟く。


「あと、ウリアは女性で確定ね。その、なんと言えばいいのかしら……」

ジェシカ様は、困った顔をしながら言葉を詰まらせる。

その反応だけで、私はなんとなくわかってしまったが、ラファエルさんは気づかなかったらしい。


「一体どうしてわかったのですか?」

「その……。抵抗する時に、腕が胸に当たってしまって……」

「ああ……」

ようやく察したようだ。どうやら、私が攻撃した時に抵抗した時、当たってしまったらしい。

ジェシカ様曰く、低くうめいたような気がしたが、気のせいかもしれないとのこと。



「そう言えば、結構あの爆発痛かった筈なのに、涼しい顔してたよね?仮面付けてたから表情わかんないけど」

「まあそうだな。動きは、右手が封じられてること以外、何も変わらなかったしな」

「それに、サティのあの光属性魔法……。あれを受けても立ってた、わよね」

「頑丈すぎるだろ……。俺は鉛玉数発で全く動けなかったのに」

「一体、誰だったんだろう……。それに、清掃員さんも。結局名前もわからないままだし……」

私たちは、謎を抱えたまま、途方に暮れる他なかった。


ちなみに、入り口の火はさっきのバーストで消し飛んだらしい。水問題解決。

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