なんか変なものが見える
ちょっとエピソード130の人物紹介について、適正属性が設定とおかしかったので、ナーフ入れました。
多分、あまり関係なさそうではある。
なんか、適正ない属性の魔法使ってる!というのを見つけた場合は、報告してくださると、とても助かります!
Side Sattie
清掃員さんの言葉と共に、ウリアの魔法が背後で炸裂する。
すると、ドアまでの道が、炎の海と化した。
「なっ!」
私は面食らった。この中で、水属性魔法を使える人は、存在しない。
「どどど、どうすれば!!」
「落ち着いて、サティ。これだけの騒ぎになれば、きっと誰かが駆けつけてくれる筈よ」
「そうだ。それに、この部屋にも、水道はある筈だ」
「そっか、なら私は目の前の二人をやっつけることに集中すればいいんですね!」
「ええ」
私は、しっかり集中しなおして、改めてウリアを見据える。
「融合!」
私は、異能力を使う。
記憶が教えてくれた。ウリアが持っている銃の構造について。
だから私は、銃弾を銃身に融合させた。
あれは、リボルバーという拳銃で、シリンダーという部品が回って、銃弾を次々と発射位置に持っていく仕組みだ。
爆発を使って、銃弾を発射しているため、そこが詰まってしまえば、最悪爆発する。
「結界」
私は結界を張り、二人を守る。私は、再びウリアに接近する。
今度は、なかなか銃を撃たない。私は、それでも警戒を怠らずに距離を詰めていく。
ウリアは、銃弾と銃身が融合しているのにも気づかず、撃った。
「!!」
とんでもない音が鳴った。ウリアの右腕で爆発が起こった。
ウリアの右腕は焼きただれ、服も焦げている。
「――、ウリア!」
「大丈夫です」
ウリアは、右腕を押さえながらも、決して声色は変えずにそう言った。
かなりの胆力はあるようだ。
ウリアは、拳銃を投げ捨てようとしたが、それをできないことに気づいた。
「――!手が……!」
「手と拳銃を融合させてもらったわ。貴女、右利きよね?」
「……右腕を使い物にならなくしたのですね。先程とは見違えましたが、一体どんな心境の変化で?」
「教える訳ないでしょ。――さあ、お縄につきなさい!」
私は、ダガーを相手に突きつけて、鋭く叫ぶ。しかし、相手は全く怯んでおらず、最初の余裕を維持したままだった。
私は、内心冷や汗をかく。
魔法戦となると、私にアドバンテージがある筈だ。しかし、私はさっきも押し負けそうになった。異能力を使っているのに。
魔法の生成スピードが、コントロールが、相手に全く追いついていないのだ。
予想外に晒された自分の弱点に、私はどうすることもできないでいた。
それを相手も気づいているのだろう。だからこその余裕なのだ。
ジェシカ様は魔法適性がない。そして、ラファエルさんは戦える状態じゃない。
私がやらなきゃいけない。けど、次にどう攻めればいいのか、考えあぐねていた。
「火属性上級魔法、煉獄」
「あっ!」
相手に先手を打たれる。私はすぐさま異能力を使い、自分の魔法を交えながら相手に撃ち返す。
しかし、それを簡単に水属性魔法で打ち消されてしまった。
また、さっきと同じ魔法の応酬。違うのは、その魔法の応酬で、私が段々と押されてきていること。
「風属性上級魔法、エアバレット」
無数の不可視の風の礫。私は、結界を張ることで防ぐ。
しかし、結界はその魔法に耐えきれそうになかった。
段々と、ボロボロになっていき、あともう少しで破られそうになる。
私は、無我夢中で異能力を使う。エアバレットと結界を融合してみる。
今まで、全くしたことがなかったから、どうなるかはわからない。
しかし、私の心配とは裏腹に、攻撃の勢いはさっきよりも格段に弱まった。
「あっ!」
よく見てみれば、結界が風属性を纏い、攻撃を押し返している。だからこそ、結界に被弾する時には威力がほとんど残っていない状態になる。
私は、それを見て一つひらめいた。
多分、この状況を打破するためには、これしかないことを。
「サティ……?」
ジェシカ様が不安そうに私の名前を呼ぶ。私は、ジェシカ様に微笑みかけながら、大丈夫ですよ、と言った。
ジェシカ様は、何かを言いたげではあったものの、飲み込んだ。
「火属性初級魔法、ファイヤーボール」
私は、手に三つのファイヤーボールを生成する。
「異能力、融合」
私は、それを両手とダガーに融合してみた。
「――!!」
熱い!両腕が、焼けるように熱い。けれど、燃えていない。成功したらしい。けれど熱い!!
炎を纏っているからだろう。自分の魔法だから、熱くないかなー、とか思った自分が馬鹿だった!光属性か聖属性にするべきだった!!
後悔してももう遅い。……誰か水属性持ってる人に火を消してもらわなきゃぁ。
私は、後悔しつつもウリアに目を向ける。仮面は、銃の爆発でひびが入っており、少し砕けてもいた。
それが、爆発の威力を物語っていた。
「おい、それ大丈夫か!?」
ラファエルさんが焦ったように叫ぶが、私は何でもない振りをする。
ウリアは、左手に短剣を持ち、そして魔法を放つ。
私は、軽い身体強化の魔法をかけ、その魔法たちを避ける。ジェシカ様とラファエルさんは、さっき張った結界が守ってくれるだろう。
私は、ウリアに肉薄する。右側から近づき、ファイヤーボールと融合したダガーで、ウリアに攻撃する。
攻撃は短剣で受け止められたが、私は左腕で殴る。
ウリアはすぐに反応し、両腕をクロスして私の攻撃を防御したが、苦悶の声を小さく漏らした。
「くッ……!」
私の腕と融合したファイヤーボールが、彼女の体を焼く。
しかし、大きく後退したウリアは、何事もなかったかのように左手で短剣を構えた。
私は、またウリアに接近したものの、今度は短剣でいなされてしまった。
同じ手は二度も通用しないようだ。
ウリアは、私の両腕とダガーが厄介だと判断したらしく、水属性魔法で消火しようとした。
私だってそれを警戒しなかった訳ではない。私は、必死でその攻撃を避けつつ、合間を縫ってウリアに攻撃する。
それをウリアはバックステップで避ける。
私たちは、膠着状態に陥った。
どちらも、決定打を与えられない。
でも、私が異能力を使う度に、記憶が鮮明になっていった。
そして、とある一合で、私は集中力を欠いてしまい、腹を切られてしまった。
「!!」
「サティ!!」
ジェシカ様が悲痛な叫び声をあげる。けれど私は、それどころではなかった。
「あれは……」
私は、目の前の状況を、上手く飲み込むことができなかった。けれど、ウリアからの攻撃を何とか察知し、訳も分からないまま回避に徹する。
「あそぼー」
「たのしそう!」
「まほうつかってー」
「てがぼうって!おもしろーい!」
なんだか、気が抜けるようなそんな声。それは、過去にアインから聞いたことがあった。
「精霊……?」
「あれ?みえるのー?」
「みえるー?」
「くすくす」
「くっきーほしい」
うん、精霊だね、これは。
くっきーほしい、でわかってしまった。多分アインに餌付けされた精霊だろう。
「まほうつかう?」
「たすけてあげるよ?」
「え?」
私は、耳を疑った。魔法を助ける?
「一体どういう意――」
「よそ見とは、感心しませんね」
私が、精霊にどういうことか聞こうとした瞬間、ウリアの攻撃が邪魔をする。
そして、精霊たちは相も変わらずきゃっきゃするだけだ。
私は、なんだかやけくそになって、精霊たちに手伝ってもらうことにした。
「精霊たち、手伝って!光属性上級魔法、シャイニングレイ!」
私は、そう言って魔法を放つ。
その時の私は、知らなかった。そのことを、思った以上に後悔することになるとは――。




