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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第五章 Unidentified

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奪還成功!

Side Sattie


ラファエルさんが、撃たれた。

血をどくどくと、大量に流している。


目の前には、ジェシカ様がウリアに拘束されて、あの拳銃を突きつけられている。


私は、そんな目の前の惨状を、受け入れることができなかった。体が勝手に震え、全く動けなくなる。


「逃げなさい!誰か、助けを……助けを呼びなさい!」

ジェシカ様が叫ぶ。けれど、私の足は、鉛のように重く、全くと言っていいほど動けなかった。



「な、なんで……なんでこんなことを……?」

「計画だよ。あの方に任されたんだ。きちんと、こなさなくては」

「計画って……?」

「さあ?それは教えてあげられない」

笑って、私の質問をはぐらかす清掃員さん。


「貴方は、一体誰……?」

「誰だろうね?」

私は、信じられなかった。一つも、まともに質問に答えない彼が、今まで話していた清掃員さんと、同一人物であることを。


「目的は何かしら?答えなさい!」

「気が強いね。――けど、教えてあげれないかな?」

「なにを言って――!」

「これ以上、余計なことを言うなら、ウリアの持つ拳銃が、火を吹くよ」

「……」

清掃員さんに脅されたジェシカ様は、渋々黙った。



「それにしても、そこの彼、可哀想だね?圧倒的な武力差に、倒れ伏せることしかできないのだから」

愉快そうに笑う清掃員さん。ラファエルさんは、今まで頑張ってきた。

アインと一緒に、どこかしらに消える瞬間がある。


その時、ラファエルさんはアインに稽古をつけて貰っているらしい。

段々と強くなっている、と喜んでいたのだ。


そんな彼の努力を嘲笑う清掃員さんを、私は許せそうになかった。



そう思うと、なんだか体が軽くなった気がした。今なら、動ける。


「ジェシカ様を……ジェシカ様を解放して!」

私は、そう言って魔法を放つ。しかし、それは簡単にウリアの魔法と相殺されてしまった。



「たったこれだけ?がっかり」

詰まらなそうな清掃員さん。私は、次々と魔法を撃つが、焼け石に水だった。


「ねえウリア。まだサティが本気を出してくれないみたいだよ?」

「……承知しました」

ウリアは、拳銃の先を、ラファエルさんに向ける。


「やめて!!」

私は、ラファエルさんの前に躍り出た。

足に、尋常じゃない程の痛みが走った。


「イっ……!」

私は、自然と溢れた涙と共に、撃ちぬかれた足を抱える。

とんでもない痛みだ。意識が飛びそう。


けれど、私が気絶したら、今度こそ終わりだ。

私は、何とか気を張った。



―――もし、敵に負けそうになったらね、絶対に諦めない心と冷静な頭があれば、大抵のことは解決するわ!

―――そんな訳……。

―――だって、私たちはとても強いから!だから、この力でできないことなんて、ないのよ!

―――03はいつも元気だな。

―――いいでしょ?それに、私と13は、同じくらい魔法で何でもできちゃうんだから!

―――それもそうだな。

青い髪の少女と、オレンジの髪の少年。私たちの会話に、静かに耳を傾ける黒髪の少年は、なんだか知っているような気がした。



私は、鋭い痛みと共に脳裏に浮かんできた映像に、目を白黒させる。

けれど、すぐに冷静さを取り戻す。



――何か……何かない?この状況を打破する方法が!



私は、目の前の敵を睨みつけながら、何とか記憶を探る。



―――拳銃を持つ敵を相手取るなら、まずは遠距離で戦わないこと。次に直線で相手に突っ込まないことだ。

茶髪の青年の声がした。



―――拳銃は、引き金を引く必要がある。連射速度は魔法より圧倒的に遅い。だがその分威力が高い。

その青年は、続けてそんなことを言っていた。



―――13、君の能力は、融合。全てのものを融合させることができる。だからこそ、決して使い方を間違えないでほしい。

黒髪の青年は、とても真剣そうな表情で私に言った。

決して顔は思い出せないけれど、とても綺麗な顔を、とても真剣そうにしていたのを覚えている。


それと、彼は続けて何かを言っていた。

なんだったっけ……?



私が考えているうちに、ウリアは拳銃に何かをしていた。



「サティ、聞いてくれ」

「ラ、ラファエルさん……?怪我はッ、怪我は大丈夫なの!?」

「俺のことはいい、聞いてくれ。あれは、恐らく弾切れだ」

「弾……切れ……?」

「そうだ。銃は、一度に撃てる数が決まっている。あの拳銃は、どうやら六発らしい」

「六発……」

ウリアは、拳銃を私たちに向ける。


「もし六発分撃たせたら、必ず隙ができる筈だ。……何か、銃弾に細工でもしてあったのか、俺は体が全く動かせない」

「それは!」

「俺は彼岸の力をあまりうまく使えないからな。魔法での援護はできるが、それだけだ」

「それでも、ありがたいわ」

私は、覚悟を決める。



「融合」

私は、異能力を使う。


私は完全な丸腰だ。だから、異能力を多用していくしかない。


「サティ。受け取れ」

「それは……!」

ラファエルさんが寄越したのは、立派なダガーだった。よく見ると、先端しか刃がついてない。


「刺すことなら、誰でもできるだろ」

「ありがとう」

私は、記憶から短剣の構え方を探し、何とかまねて見せる。



「さすがはサティ。様になってるよ」

「褒められても嬉しくない!」

「サティ!危険よ!やめなさい!」

「ジェシカ様!――やらなきゃいけない時があるんです。何に代えても!」

「でも!」

ジェシカ様は全く納得していなかったが、私はラファエルさんに結界を張り、迷わずに突っ込む。ウリアは私に拳銃を撃ったが、かするだけだった。


これで二発。私は、銃弾を捉えるような動体視力なんてものは持ち合わせていない。でも、ラファエルさんの言う通りに動けば、避けることはできる。


相手は、ジェシカ様を持っているせいで、なかなか身動きが取れない筈だ。だからそこを突く!


私は、三発目を体勢を低くして避けると、そのままダガーで突く。

けれど、どうやったのか綺麗に避けられてしまった。


牽制のためか、足元に一発。



けれどこれで、ジェシカ様を拘束する手は大きく緩んだ。ジェシカ様は、その隙を見逃さず、大きく抵抗し、拘束から逃げ出した!


「さすがです、ジェシカ様!」

「ありがとう、サティ。でも、まだまだよ」

私は、そう言われてウリアを見る。しかし、その隙に銃弾を撃ち込めばいいものの、ウリアは不気味な沈黙を保っていた。



「お見事!でも、そう簡単に帰してはあげられないなぁ」

清掃員さんが、手を叩きながら愉快そうにそう言う。私は、ダガーを片手に身構えた。

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