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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第五章 Unidentified

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清掃員さん

Side Sattie


「清掃員さん清掃員さん!!」

「どうしましたか?」

私は、魔法祭の前に会った清掃員さんを呼びかけながら、駆け寄る。

もうすっかり顔なじみとなった清掃員さんは、私を穏やかに受け入れる。


お母さんがいたら、こういう感じなのかな、と思う一方、清掃員さんは男性なので、いやお父さんか、と思い直す。



「私、魔法祭でたくさん活躍して、サージェントたちに褒められちゃって……」

「それはよかったですね。私も、見てましたよ」

茶目っ気たっぷりに笑う清掃員さんを見て、結構親しくなったかな、と嬉しくなる。


「ええ!?そうなんですか!?」

「ええ。清掃中にこっそりと。――とても格好良かったですよ」

「やったあ!えへへ……」

清掃員さんの言葉に、素直に喜ぶ私。


「最近、ダイエットは捗ってますか?」

「魔法祭があったから、かなり捗ったんですけど、これからはちょっと……」

「戦闘はかなり運動しますからね。あ、そうだ、優勝おめでとうございます」

「ありがとうございます!!」

「インタビュー記事も見ましたよ」

「わっ、恥ずかしい……」

私は、熱い頬を指先でかく。そんな私に見せつけるように、新聞を広げる清掃員さん。み、見ないで~!!



「ええと、優勝の秘訣は、ソルセルリー様の繊細な魔法操作」

「ああああああ」

「魔法戦で苦戦したところは、ウォレン・ディ・ウジェター様との決勝戦」

「やめ、やめ、やめてえええぇぇぇ……」

私は、記事を朗読する清掃員さんの口をふさぐ。そんな私を見て、笑いをこらえきれない清掃員さん。


内容は、放送委員の優勝者へのインタビューと、魔法祭の時を描いたイラスト。


その空間を切り取った……いや、それを優に超えるイラストに、私はしばらく見入っていた。


実物よりも数段格好良くなっているイラストの中の私に、放心していたのを、生徒会室でやってしまい、爆笑された。



それをつい混乱ついでに清掃員さんに言ってしまい、思い切り笑われてしまった。清掃員さんって、雰囲気に見合わずゲラなんだよね。

なんだか、髪や瞳の色も合わせて、ラファエルと似てる。もしかしたら生き別れの兄弟なのかも。


え、気になる。



「清掃員さんって、もしかして幼い頃に生き別れた弟とかいるんですか?」

「え?いないですよ?」

「そうなんですか……」

どうやら、ラファエルと清掃員さんは、生き別れの兄弟じゃないらしい。


「じゃあ、従弟(いとこ)とか!?」

「従弟は一人もいないですね」

「うぅ……」

どうやら違うらしい。うーん、じゃあラファエルとは、親戚じゃないんだろうな……。


「どうしたんですか?」

「ものすごく似てる人がいまして」

「似てる?」

「ええ。ものすごく」

私は神妙にそう言った。


「でも、世界には同じ人物が三人いる、という噂もあるみたいですよ」

「じゃあ、ドッペルゲンガー!?」

「なら、気を付けないといけませんね」

いたずらっぽく笑う清掃員さんは、最初とはかなり印象が違って見えた。

最初はとある黒髪美青年と似ていると思ったのに、彼よりもずっと感情が豊かで、現実にいる、という実感があった。


いや、ドッペルゲンガーは非現実的なんだけれど。



「清掃員さんは、普段は何をしているんですか?」

「普段、ですか……。一人暮らしですよ。一人侘しい一人暮らしです」

「そうなんですね」

なんだか、イメージ通りだ。


「ええ。たまに友人が来るくらいです」

「友人!?」

いるんだ!?しかも家に来るくらい親しい友人が!


私が驚いていると、清掃員さんは、クスクス笑う。それが、どことなく上品だった。



なんだか、平民でも物凄く上品な人多くない?ラファエルくらいしか、平民感ある人がいないんだけど。ラファエルは、人間じゃないけどね?


「とは言っても、建前上なので。あんな奴、友人とは言えませんよ」

「なら、私は……?」

「こんなに可愛い子が、友人になるなら、大歓迎ですよ」

「か、可愛いって……」

私が喜んでいると、清掃員さんは言葉をつづけた。


「休日、私の家に遊びに来ますか?他の友達も連れてきていいですよ」

「いいんですか!?」

「ええ。ただ、うちは狭いですから……」

「なら、喜んで!!」

私は、清掃員さんの両手を取って、喜ぶ。私の勢いに一瞬引き気味になってしまった清掃員さんは、吹きだした。


私は、連れてくる友達を脳内で吟味する。そんな私を穏やかに見守る清掃員さん。



「そろそろ、寮に戻った方がいいんじゃないですか?」

「あ、確かにそうですね。――じゃあ帰ります!」

清掃員さんに言われ、周囲を見渡してみると、もう既に辺りは薄暗くなってしまっていた。


薄暗くなってからすっかり暗くなるまではあっという間だ。


なら、まだ明るいうちに帰った方がいいだろう。



「また明日!」

「はい、また明日」

私は、手を振って、清掃員さんと別れる。清掃員さんに別れの言葉を口にして、寮に帰った。



「うーん、ジェシカ様に声をかけてもいいものなのか……。それにしても」

私は、なんだかラファエルを連れて行きたくなった。だって物凄く似てるんだもん。


顔立ちも似てる気がする。流石ドッペルゲンガー!まあ、決まった訳じゃないけど。



ただ、新聞にパーティーのことが書かれてなくてよかった、と思った。だって、あの事が書かれていたら……。



「あの時のアインがものすごく格好良かったこと、つい言っちゃうじゃん……」

私は、結構迂闊だ。てんぱった挙句、変なことを口走ること間違いなし。


というか、皆格好良すぎるし、皆綺麗すぎるのがいけないのよ!あのラファエルでさえ、結構格好良かったし!

そういう八つ当たり気味な思考になりながらも、明日清掃員さんの家に一緒に遊びに行くのに誘う人を、思い浮かべた。

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