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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第五章 Unidentified

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勘違い野郎

Side Unidentified


クソ!クソ!クソ!クソ!クソ!クソ!クソ!!!!


俺は選ばれた存在なんだぞ!?なんで!なんで!なんで!なんで!なんで!なんで!なんで!!!!


ペスケ・ビアンケは俺を受け入れるべきなのにいいいぃぃぃぃぃいいいい!!!!!!!



頭をかきむしる。雨が鬱陶しい。



何度目かのペスケ・ビアンケの面接。また、落ちた。


俺は転生者だ。転生者なのに!なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで――俺は認められない?



「あ」

そんな俺の目の前に、あの真のラスボスであるアインがいた。なぜか前髪を切っているが……。その隣には、見知らぬ白い男もいた。



――ああ、あいつらか。あいつらがこの世界の悪役か。



なら、あいつらを殺してそれを手土産にすれば…………ペスケ・ビアンケに入れるかもしれない。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



Side Raphael


「おお、すごいな……」


俺は、アインと共にペスケ・ビアンケの本部へ行こうとしていた。色々とやって欲しいことがあるとか何とか。

するとギルマスが、どうせ来るのなら、とアインにとある不埒者の対処を頼んでいた。自分でやれ、自分で。



「見えた?」

「途中までなら……」

アインは、魔法を超高速で飛ばしている。最初は、こんな往来があるところでやるな、と言ったが、あいにくの雨で、人っ子一人いない。


だからここぞ、とばかりに俺の動体視力を鍛えてくれているのだ。前よりも見えるようになっているから、効果はある。


これによって、何とかアインの動きについていけている。あれでもまだ本気じゃないらしいのがとんでもない。



「!!」

「振り返らないで」

「え?」

なんだか殺気を感じ、思わず振り返ろうとしたのを、すぐさま咎められる。



「たぶん、エイデンバークが言っていた人物だ」

「え……え?」

「ペスケ・ビアンケのギルドマスター」

「何であえてそれなの……」

あえてのチョイスが謎すぎる。


「そもそも、そのギルドはあまりメンバーを公にしてないでしょ」

「そうだけど」

つまり、こちらに慮った結果らしい。ギルマスの名前なんか、皆覚えてないのに。



「それで、僕はあまり詳しく知らないけれど、一体誰?」

異能力で声を消しているから、何を話しても大丈夫だよ、と言うアインに、オレは口を開く。


「あいつは何度もうちに入りたいって言っている奴だな」

「異世界転生者か」

「そう。まあ、オタクだらけの陰キャグループに、害悪陽キャが入ったらとんでもないことになるからな」

「……おたく……いんきゃ……がいあくようきゃ……」

「あ、悪い。ええっと……繊細な人見知りの集まりに、空気を読まない人間が入ると、人間関係が崩壊するだろ?」

「成程」

俺がつい元の世界の言葉を滑らすと、クエスチョンマークを頭に飛び散らせたアインがいた。


オタクも陰キャも陽キャも通じないのか……。



「うーん、教えていいものか悪いものか……」

「?」

なんとなく、マティアスがアインのことを好きな理由が分かった気がする。


「……知らないことがあっても、知ってるふりはしろよ」

「どうして?」

「……なんとなく?」

「ふうん?」

色々と伏せながら理由を話すの難しすぎだろ!!



「話を戻すけど」

「あ、はい」

ちょっと鋭い声に、ちょっと身を正す。


「性格的に合わないから、落とす、とギルマスが言ったらしい。前世の世界は、結構優しい世界だったんだ。そこでは、性格で落とすことはあまりないから、逆上してな……」

「迷惑な話だね」

「ああ。労働法というのが前世であってな、それを持ち出して自分を雇え、と言ったんだ」

「労働法……」

その言葉は通じたようだ。だが、あまりいい意味ではないらしく、顔を歪めている。

まあ、この世界の労働法と言えば、ほとんど労働者を奴隷にする法律だから、当然かもしれない。


「ああ。労働者の権利を認める法律なんだ。――この世界じゃ、あまりないだろ?だから、ギルマスが呆れかえってるんだ」

「そんなに厄介な人物に……」

事態を正しく理解したらしいアインは、沈痛な面持ちをする。


「お前の命も狙ってるかもな」

「僕の命を?どうやって僕を殺すんだ」

心底不思議そうに言うアインに、ハッとする。



――そう言えば、アインにこの世界は乙女ゲームの世界だ、と言ってない!!



「そ、そうだよな!」

「何か隠してない?」

慌ててアインに同調すると、アインからジト目を送られた。


「い、いやあ?」

「……無理には聞かないよ。――でも、僕に不利益をもたらす前には話してね」

「前向きに検討します……」

見逃してくれた……。


そんなことを話しながら、後ろの気配をうかがう。



「いつ飛び掛かってもおかしくないね」

「ああいう輩は自分の力を過信するんだよ」

「そういう人間は冒険者にならない?ほら、一獲千金のチャンスだし」

「確かに」

なんでうちに入ろうと……ああ、厨二病か。


「なるほど。ほとんどの人間にかかる、不治の病の持ち主だったか……」

「前にマティ様も不治の病を患っているとカーティス様がおっしゃっていたけど……」

「この世界に厨二病の概念はあるのかよ!!!」

じゃあなんでオタクはいないんだよ、と俺は嘆いた。

アインは、そんな俺を奇異なものを見るような目で見ていた。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



Side Unidentified


よし、行ける。俺は、ゲームの主人公よりも強い!


俺は、アインに気配を消して、襲い掛かる。アインは俺の存在に気づかない!!


「あ――」

白い男が何かを言った。しかし、俺は気にも留めなかった。


正しくは、気に留める余裕がなかった。



「案外慎重派なんだ」

「クソ!!」

アインは俺の気配に、絶対に気が付かなかった筈だ。なのに、今は地面にうつ伏せで転がされて、後ろ手に拘束されている。


「エル、どうする?」

「うーん……ギルマスからなんて聞いてるんだ?」

「特に」

「……いい感じに罰を与える、ってできないか?」

「できるよ」

「お願いします」

「俺に何をする!!――ふぐッ」

不穏な会話に、オレは声を上げるが、口をふさがれてしまった。


「魔法を使えないようにして、と」

その言葉と共に、何か体から力が抜けていった感覚がした。


「ちょっと意味が解らないんだが」

「使える相手は限られてるから、怯えなくて大丈夫だよ」

「そ、そうか……」

そんな会話が聞こえるが、内容が頭に入ってこない。


体が解放され、何度も魔法を使おうとする。何度も何度も。


「なんで……なんでなんでなんでなんでなんでッ!!」

「次はこれだけじゃ許さないからね」

顔を無理やり掴み上げ、無理やり目線を合わせられる。開ききった瞳孔が、恐怖を増長した。


じわ……と、足と足の間から、生暖かい感覚がする。


俺は、呆然自失のまま、アインと白い男――エルが去っていくのを、ただ見ていた。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



Side Raphael


「どうやって魔法を使えなくさせたの?」

「そうだね……魔法を使えるのは、精霊のお陰なんだ。その精霊を説得した」

「なるほど……いやとんでもないな!?」

サラッとすごいことしている。



「あれで、マシになるんじゃない?」

「ああ、そうだな。魔法が使えなくなるなんて、結構ショックだしな」

「転生者は魔法を好むかもしれない、と思って」

「……ちなみに根拠をお聞きしても?」

なんとなく、下手に聞いた。


「ラファエルとあの男。共通点は、魔法をかなり鍛えていること」

「ああ、そういうことか」

そりゃ、魔法がなくなったらショックだろうな。


「とにかく、依頼は達成した。――エイデンバークに報告する」

「ああ、うちの問題に巻き込んで悪かったな」

「もう既に巻き込まれてるから、問題ないよ」

「その節はどうも……」

ラファエル「ところで、エルって?」

アイン  「一応、恨まれても問題ないように」

ラファエル「まさか、名前を使う呪いの方法とか――」

アイン  「名前を知らないだけでも、情報は集めづらくなるからね」

ラファエル「あ、なるほど……」

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