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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第五章 Unidentified

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閑話:モーリス・ヴァン・フォン・シルクリーンの戯言

Side Maurice


僕の名前はモーリス・ヴァン・フォン・シルクリーン!!あの芸術大国、クリスタルパラスの国王に認められた稀代の芸術家だ!


この僕が、セオドアに数ある学園のうち、この学園に入ったのは理由がある。



それは、生BLを見るため!腐女子だった前世からの夢だったのだ!

本当は騎士学園に入りたかったのだが、生憎剣術には才能がてんでなく、入学は断念することになった。

しかし!ここにもBLはあるかもしれない!だからこそ僕はこの全寮制の学園に入ることにしたのだ!



元々奇行を繰り返す僕を、家族は放任している。きちんと芸術家として、収入を得ているというのもあるだろう!



「さて、今日も探しますか……」

放課後というのは、とてもいい時間だ!僕にとっては生BLを探す時間になるし、生徒たちにとっては、思い思いの行動をする時間になる。



最近のお気に入り、というかそもそもこの世界、前世より同性愛が忌避(きひ)される。まあ、同姓では子を生すことができないから、当然と言えば当然ではある。だからこそ、彼らは恋人同士ではないのだが、それでも見ていててえてえ。


そのカップリングは、マティアス×アインだ。主×従者、金髪×黒髪。王道こそ至高!

例えば、普段は威風堂々とした主に静かに付き従う騎士。二人きりの時では、甘い時を一緒に過ごす恋人同士……。

妄想が捗る!!



でも、最近はカースティス×ハロルドもいいんじゃないかと思っている。ケンカップルも最高……!


「今日はどこにいるかな~?」

「誰の話かな?」

「ヒッ!!」

恐る恐る振り返ってみると、そこには素晴らしい笑顔を浮かべていらっしゃる、鬼委員長が……。


「な、ななな、なんでここにいるんでしょうか、ハリー先輩!!」

「どっかの馬鹿がずっと委員会室にこないからね、モー君?」

「さ、さて……。その馬鹿は、僕のことでは……」

「でもなんでここにいるんだろうね?今日、取材あるよね?」

「……」

僕は、結局悪魔に勝つことはできないらしい。笑顔なのに、こんなに恐ろしいなんて、絶対おかしい。


「ほら、さっさと委員会活動行くよ!」

「勘弁してくださいよ~!」

どこにそんな力があるのか、文字通り僕を引っ張っていく悪魔(ハリー)に、僕はもう観念することしかできなかった。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「ハリー先輩!ありがとうございます!先輩は天使です!」

「本当に態度がころころ変わるわね……」

取材対象に会った僕は、一瞬でハリーに尻尾を振った。そんな僕に、ハリーは呆れきっていた。


「なんというか……とても個性的な方ですね」

「素直に変人だと言えばいいぞ」

取材対象の内の()()()は、僕にそんなことを言う。


しかし僕は全く気にならない。なぜなら、彼らは僕のお気に入(マティ)りのカップ(アスと)リングの二人(アイン)だったのだ!



「では、そろそろインタビューをさせてくださーい!この変態のことは気にしないでくださいね!」

「分かりました?」

「元からそのつもりだ」

「緊張します……!」

「分かりました~、ヴォンジョン先輩~」

それぞれな返答をする、サティ、ルーデウス、カースティス、マティアス、アインを尻目に、すっかり僕は自分の世界に浸っていた。


「手厳しい……。それでも――」

ハリーが僕の口をふさいだせいで、僕は二の句が継げなかった。



「まず、魔法祭を一年生で優勝した今の気持ちをどうぞ!」

「う、嬉しいです!」

「皆さんのお陰です……!」

「俺ががんばったお陰だよね~」

「フン、当然の結果だな」

「皆さんのお陰ですよ」

「成程、ありがとうございます~」

五人五色の回答を、ササっとメモする。

性格が出るな、と考えながら、こそっとマティアスとアインを観察する。


あ、ばれた。



「優勝の秘訣は何でしょうか~?」

「ぼ、僕はあまり役に立たなかったので……」

「ルー様もすごかったですよ!私、ルー様ほど繊細な魔法操作、できませんし!」

「優しい……」

「俺が勝ったからかな~。ね~、アイン」

「そうですね。団体戦なので、一人で勝てることはできませんし」

「俺がチームメンバーを決めたからだろうな」

「そうだったんですね~。力を合わせてチームを優勝に導いたのですね」

僕はまたもやメモをする。流石に趣味に没頭しすぎて、仕事をおろそかにすると、ハリーに叱られるどころではない。殴られる。



「魔法戦で、苦戦したところはどこでしょうか?」

「僕は……」

「お前と俺は苦戦も何もないだろ」

瞬殺だったからな。


「俺は決勝戦~」

「私もです!」

「僕は、全試合苦戦しました……」

「ふむふむ、参考になります~」

僕はメモ用紙に目を落とした。



「では最後に!魔法戦のハイライトは何でしょうか!?」

「「決勝戦のカーティス様!!」」

「ファドキシード様との対決でしょうか?あの試合は、私も実況に熱が入りました!」

ハリーは、シャルと一緒にひくほど熱が入っていた。まあ、分からんでもないが。


「さすがに照れるね~。俺は、決勝戦のサティかな。まさかあそこまで天気を操れるなんてね~」

あれは、僕は遠い目をした。魔法って、天気まで操れるんダー。


「僕は、一回戦でルーが勝ったところですね。いつも特訓を頑張っていらしたので」

「優しい……」

「ループスとの対決、あれはなかなか綺麗だったぞ」

「綺麗でしたね~。一瞬で視界一杯に氷の華が咲き乱れましたね」

ハリーの言葉に、アイン以外の人物がうんうん、と頷いていた。



「お忙しい中、インタビューを受けていただき、ありがとうございました!」

「ありがとうございました!」

僕は、ハリーに倣って声を上げた。

インタビューは、始終和やかな雰囲気で終わった。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「よし!じゃあ僕はこれで……」

「モー君、たしか君――絵、上手いよね?」

「………………喜んで描かせていただきます」

どうやら趣味の時間はもうちょっとお預けらしい。

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