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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第五章 Unidentified

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閑話:嫉妬がうるさい

Side Jessica


私の婚約者は、外では泰然自若としている様子が、かなりご令嬢たちに人気がある。

一部の男性ファンもいるらしいが、それは王太子らしい容姿のお陰もあるだろう。

婚約者の私は、社交界でも評判が高い私だ。

護衛も、今までどこにいたのか、というくらいの武力の持ち主。

性格に難があるが、それ以外は完璧なマティアス。



それが、世間の評判だ。


今、私の目の前にいる男は、確かに私の婚約者ではあるが、世間の評判とはかなりかけ離れている。



――いや、ある意味ピッタリか。



私はダンスの最中にそんなことを考えながら、うんざりしていた。


「サティめ……」

「男の嫉妬は醜いからやめなさい。――表情は取り繕いなさいよね?」

「俺がそんなヘマをすると思うか?」

「今にじみ出てるわよ」

「……」

アインがサティと踊りだして、黒い嫉妬を向けるマティアス。平民の美男美女カップルだからか、正直かなり似合ってる。

周りがうっとりしているのも、マティアスの嫉妬を加速している。



「やっぱりサティはヒロインだし、アインは最高難易度の攻略対象だからか、お似合いよね。――そんなに睨まないでよ」

「……それでも、アインは俺のものだ」

本当に、余裕がない。別にアインは魔族だから、人間の物差しで測れない。更に冷静に見たら、アインはサティに、距離こそ近いものの、あまり見とれているように見えない。

サティは、確かに見とれているが、それもイケメンに対して見とれてる、という感じだし。



恋に盲目すぎて、とんでもなく嫉妬深くなってる。本当に面倒くさい。

アインなんて、マティアスからしたら放っておいても誰かに盗られることはないと思うが。



「あと、アインを絶対にダンスに誘わないでよ」

「ぐッ……今だけ女にになりたい……」

切実そうに言うが、王太子がいきなり女性になるのはやめてほしい。


「こっそりならいいから。流石に王太子殿下が男性同士でダンスは外聞が悪いから……」

「魔族なら、そんなこともないのにな」

「魔族はそもそも性別を超越してるでしょ」

確か、同性同士でも子供ができるとか。……BLの世界かな?



そんなことを考えていると、曲が終わった。礼をしながらサティの方を見ると、二人も礼をしていた。

完璧なアインと、どこか覚束ないサティ。そんな不慣れなサティに、私は可愛いな、と思った。



婚約者()とのダンスを終えたマティアスに、令嬢たちが群がる。マティアスは渋面をつくる。けれど、流石に王太子という立場の下、すげなく断ることもできずに、何人かと踊っていた。


私はその後ハロルドやカーティス、ルーと踊り、最後にアインと踊った。


私には、知り合いの男性が多かったので、断る手間が省けてよかった。

ちなみに、マティアスはアインと踊る令嬢たちに嫉妬の視線を送っていた。彼女たちも、アインも全く気が付いていなかったが。


アインって、今回の魔法戦で物凄く人気が出たらしいんだよね。婚約者であるファドキシード様としか踊らない、と噂のエルナンド様とも踊って、嫉妬の視線を真っ向から受け取っていたが。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「そろそろ抜ける」

親しい間柄なら簡単に察せるくらい、機嫌を悪くしたマティアスがそう言った。

私は、婚約者に付き添って、アインは護衛のためにパーティーから退場することになった。



「じゃあ俺も~。ガブリエルが鬱陶しい」

「あ、えっと、私は……」

カーティスがさっさとパーティーから帰ることを決めたのもあり、サティは名残惜しそうにちらちらと会場を見ている。


「会場にいたいならいればいいわ。殿下に付き合うことはないわ」

「じゃあ、残ります……!おやすみなさい!」

「じゃ、じゃあ僕も……」

ルーも残るらしい。流石に、サティを一人にしておくのは心配だから、内心安心した。


「俺も残ろう。作っておきたい人脈がある」

「仕事熱心だねえ~」

ハロルドの言葉に、カーティスが茶化すように言う。


「お前も学生の内から人脈を広げろ」

「めんどくさ~い」

「お前……!」

飄々としているカーティスに、ハロルドはいらいらしていた。

仲裁もいないまま、喧嘩が激化しそうだったので、私はさっさと二人の物理的距離を話すことにした。


流石に相手がいなければ、喧嘩なんてできないだろう。



カーティスを促して、私たちはさっさと会場から退場した。


男子寮と女子寮は別になっているが、もう既に夜なため、エスコートして貰った。

楽しそうな雰囲気が漏れる講堂。

私たちは、女子寮へ足を運んでいた。


「ふふ、とても楽しかったわね」

「そうか?俺はそうでもなかったが」

「マティアス様、そこは、楽しかった、と返すところですよ~?」

「事実は事実だ」

「カーティス様、大丈夫ですわ。むしろ、楽しかった、と返された方が困ってしまいますわ」

私は、くすくすと笑う。


「そういうところ、オレの婚約者に見習ってほしいですね~」

「また何か言われたのか?」

「言われた、というよりも俺を誉めまられたんですよね。――流石にうんざりしますよ~。人の話全く聞かないし」

やや疲れた感じのカーティスに、私たちは苦笑していた。

女たらしなカーティスも、流石に辟易したらしい。



そんな会話を交わしていると、女子寮が見えてきた。


「ありがとうございますわ。また明日会いましょう。ごきげんよう」

私は、優雅にカーテシーをし、寮に入った。


あの三人が寮に戻った後に起こるであろうことを想像し、一人で小さく笑った。

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