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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第五章 Unidentified
202/205

計画の行く末、忍び寄る影

Side Urga


「さてさて、彼の計画は、果たして成功するのでしょうかね?」

「せいこうすルんじゃねえの?」

オレは、父さんの言ったことがよくわからなかった。



「無理じゃない?もし、成功させるならウィキッドの襲撃場所をもっと考えるでしょ」

「確かに、とってもおあつらえ向きの場所がありますからね」

そう言って、父さんと悪魔は賑やかな声がする講堂に目を向ける。どうやら、あそこで戦えば、彼の計画はよりうまく行ったらしい。


それに、元々その予定だったけど、あまりにもウィキッドの人数が少なすぎて、おじゃんになったらしい。



「でもさー、俺たち以上に情報を知って、今後の計画を立てれる集団っていなくない?“絶対零度の司令官”と比べても、持ってる情報の質が違いすぎるし」

建物の屋根に腰を下ろし、背筋を伸ばす悪魔。


「けれど、実際は次々と計画の変更を余儀なくされていますし、もはや私たちの計画の全容を知られていてもおかしくないですね」

「そんなことある?あの“絶対零度の司令官”でさえも欺く計画だよ?」

父さんの言葉に、ありえない、というように両手の平を上向きにして、首を振る。


「事実ですから。――まあ、この計画が最終的にどうであれ、私たちの目的さえ完遂できればそれでいいです。それは、あちらも同じようなので」

「でもさ、俺天夜を盾にされたら逆らえないよ」

父さんの言葉は、どこか冷たい。そんな父さんを茶化す悪魔。


「私はうまみが多い方に乗り換えるだけです。――今は、彼のそばが一番いいんですよ」

「あっそ。――俺は、次々に裏切られそうだから、最後まで裏切らないであげるかな。もう自棄じゃん。子供の自棄。あんまりにも可哀想だからね」

「可哀想、ですか」

悪魔の言葉を、父さんが繰り返す。彼は一体誰なのか。オレにはわからない。けれど、父さんはその人のこと、全く可哀想には思っていなかった。



「運が悪かった?」

「いったいなんのはなしをしてるんダ?」

オレの頭上で会話する二人に、聞いてみる。けれど、その答えは返ってこなかった。


「私は、必然だと思いますけどね」

「レイは冷たいな~。フィフィの方がもっと可愛げあったよ?」

「フィフィ?」

「レイの弟子らしいね、彼。よく揶揄って遊んでたよ」

「……ヌフィストをそう評するのは貴方だけですよ」

悪魔の言葉に、父さんは呆れたようだった。顔に手を当て、やれやれ、といったふうに首を振る。


「そう?あーあ、やっぱ割に合わないよね。ティティそろそろ依頼してくれないかな~?」

「ティティ?」

「カースティス・フォン・マルティン。腹黒そうだよね、彼」

「……」

けらけらと笑う悪魔と、すっかり呆れきっている父さん。それに挟まるオレ。



「貴方が普段何していようと、私には関係ありません。けれど――」

「さすがに子供には手を出さないよ、俺。手を出すなら、大人の方がいいしね」

「――その言葉、信じてますよ」

父さんは、オレの手を取った。


「ウルガは俺のタイプじゃないし、月影は手を出したら一巻の終わりだからね」

「……」

「何?疑ってんの?でもレイじゃ、俺に勝てないよね?」

「……」

不穏な空気に、オレはハラハラする。


「俺って、結構温厚な方なんだよ。レイ、もしあの子を裏切るなら、さっさと裏切ればいい。俺は止めないよ。俺だって、天夜のためにも、自分のためにも、あの子を裏切りたいし。――でも、()()()なんだよ」

「分かってますよ。そんなことは。長く生きてきて、案内人が可哀想じゃなかったことは、一度もないですから」

「あっそ。――今は、まだ協力関係だ。互いにあの子に力を貸そう。だから、あんたの本心は、まだ言わないでおいてやるよ」

「……」

悪魔は、父さんの心臓の上を軽くたたく。そしてオレに笑って手を振り、去っていった。俺はその背中が見えなくなるまで睨みつけていた。



「とうさん……?」

ずっと黙ってばかりで動かない父さんを、オレは心配で心配で見上げた。


「さあ、帰りましょうか」

「う、うん」

いつの間にか、いつもの父さんに戻って、オレの手を引く。俺はそれに頷いて、屋根から去った。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



Side Shuya


「こんなんが欲しかったの?」

オレは、サツタバを数えながら、暗がりにいる、とある人物に語り掛けた。


「ああ。――不愉快だな」

「消せ、という依頼はさすがに引き受けられないよ?」

依頼主の低く小さい声に、物騒だな~、と思いながら、しっかり釘は刺す。


「いい。それは俺がやることだ。お前は俺に情報を持って来い。報酬は弾む」

「分かった~。ねェ、次はどんな情報が欲しい?好きなあの子のスリーサイズとか?」

「それは自分で調べるからいい。貴様、余計なことはするなよ?」

「コワいな~。本当に命が取られそうだよ~。――でもキミ、オレより弱いよね?」

「……何が言いたい?」

「分かってるクセに~。まァ、キミオモシロいしさ、次の依頼はいくつか負けてあげるよ」

オレは、その場から離れる。もうこれで依頼は達成した。あとは自室に戻るダケだ。


「翔雲天夜」

「どうしたの?依頼?」

「いや、何でもない」

「オレは、自分で欲しいモノは、自分で手に入れる主義だよ。報酬はサツタバ以外はあり得ないからね~」

「分かった。覚えておこう」

その言葉を聞き、オレはすぐさま立ち去った。

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