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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第五章 Unidentified

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実力不詳の王太子殿下

Side Silkiair


『さて、残すところ、魔法戦最後の戦いになりました!シャル君、モー君、これは驚きでしたね~』

『そうですね。この時点で、4-Eの単独優勝はなくなりましたね』

『まさかあの4年生に1年生がここまで善戦するとは思いませんでしたね!』

放送部の言葉に、私は自分の相手を考えて、更に付け足す。


もう、4-Eの優勝はあり得ない、と。



マティアス・ドゥ・セオドア王太子殿下。とても強力な吸血鬼の護衛がいるからか、あまり武の才能に関してはなにも話を聞かない。

けど、確実に殿下は強い。それは、あの日、襲撃が起きた時のことだ。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



カーディールも行っちゃったし、それに襲撃者も気になるし。この学園で、私たちは確実に強者に入る。

戦っているのは一年生たちと保護者達。


私たちが何とかすべきだと思う。



その思いと共に、私は気配を消して、ステージに戻る。


こっそり物陰からうかがう。ここなら、位置も高いから全てが見通せる。



「まさか、たかが100年も生きていない人間に、ここまで追い込まれるとはね――!」

「……朧」

「あはは、その攻撃はもう見切ったわ……!」

王太子殿下の護衛の青年――アインと緑髪の女の侵入者。

フッと気配が消えたかと思うと、女が変な方向に攻撃する。


「死になさい、一陣――!」

「――!!」

「え?」

思わず声が出る。なぜなら、その攻撃の先からアインが出てきて、右腕がぼとりと落ちた。


それは、勝敗が決したも同じだった。

欠損を治すには、かなりの魔法の腕が必要だ。それも、息をするように上級魔法を多重展開する程の。


そんなの、国一番の魔術師でもできるかどうか。いつか、“不死の聖女”の噂を聞いたことがあるけど、それは確実に嘘。そんな人が本当にいるなら、もっと有名になってるし。


私は、アインの助太刀に向かおうと思った。しかし、それは敵わなかった。なぜなら、腕を掴まれ、阻止されたからだ。



「やめろ。貴様があそこに行ったところで、死ぬ以外何もできない」

「そんなことは――!!」

その声に振り返り、怒りをぶつけようとしたら、あまりに予想外の人物がいて言葉が止まる。


「あいつは、吸血鬼だ。――腕が吹き飛んだくらいで、痛くもかゆくもないだろうな」

「え……?」

「さらに、あの場には人間がいない。人間より強力な力を持つ者たちが、あれだけ手古摺っているんだ、たかが人間でしかない貴様が言ったところで、無駄死にするだけだ」

そんな王太子殿下の言葉とともに、アインが腕を再生させた。笑いながら血を大量に流していた所から見ても、確かに人間ではない。



「あいつは……あとで仕置きだな」

頭が痛い、という風に言う殿下は、じっとアインの戦いを見つめていた。


そんな殿下を見て、私はハッとした。そもそも、気配がしなかった。腕を掴まれるまで、私はずっと殿下がいたことに気が付かなかったのだ。


アインも、稀にこちらを見たように感じたが、それでも殿下の方を見たことはない。なんとなく私の存在を勘づいているのだろうが、殿下のことに関しては、全く気が付いていないようだ。



アインの方は、赤い霧が広がっていた。赤い濃い霧に、アインと緑髪の女が呑み込まれ、見えなくなる。


一切中が見えない。気配を感じ取れないため、何をやっているのか何もわからない。

しかし、殿下は中で何をやっているのかわかったのだろう。あの霧が晴れる前、殿下の顔が曇った。



横目で殿下の顔色を窺っていた私は、そのことに不思議に思っていると、霧が晴れた。そこで広がる光景に、私は納得するとともに、顔を青ざめた。



「あはは!私に逆らうからよ!」

緑髪の女は、蹲って倒れたアインに対し、高らかに笑った。



「さて、そろそろここからいなくなってくれるか?もう既に――彼我の実力差を感じ取れただろう?」

「……わかった」

私は、素直に頷いた。大ピンチの後輩を助けたかった。けれど、恐らく私がいては、助けたくとも助けれないのだろう。

私が気が付かなかった隠密力。なら、私が出しゃばるより、殿下が助けた方がいいのだろう。



私は静かにその場から去った。そのあと、カーディールと合流した。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「さて、俺の勝利は変わらないが……楽しもうか」

「……勝つのは、私」

私は、使い慣れた二つの逆刃鎌を、逆手に持つ。

殿下は、どこにでもあるような、普通の剣だ。



「用意――始め」

私は、その言葉と共に、足を踏み出す。足に力を籠め、力強く踏み出す。

手を前でクロスさせ、それを薙いで攻撃する。


「――!」

しかし、いつの間にか目の前には誰もいない。


「俺はここだぞ?」

「!!」

背後から聞こえた声に振り返ると、そこには余裕な笑みを浮かべた殿下がいた。


私は、すぐに殿下に攻撃した。しかし、それも全て当たらない。



「風属性初級魔法、ウィンドウアロー」

私は、攻撃に魔法を取り入れてみたものの、そもそも私は魔法が得意ではない。それでも、ウォレンに教えて貰って、集中すれば中級魔法まで使えるようになった。


けれど、当然実践では使えない。前は魔法を実践で使えないレベルだったから、かなりマシではある。



「たったこの程度か?」

殿下は、私の魔法を斬った。


「ま、魔法を……!」

「さて、止めだ」

殿下が指を鳴らす。すると、周りにおびただしい数の魔法。前に見たカーディールとウォレンの戦いのときに浮かんでいた魔法の比ではない。


隙間なく埋められた白と黒。それら一つ一つが、それなりの魔力を持ち合わせている。


「こんな数……。人間じゃない」

「さあな?俺はまぎれもなく人間だぞ?」

殿下は、私を余裕たっぷりに笑いながら、不思議そうに首をかしげる。


「さて、審判。どちらが勝ちだと思う?」

「し、勝者、マティアス・ドゥ・セオドア王太子殿下」

その言葉と共に、優勝が決まった。

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