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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第一章 初めの第一歩
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物語は、今動き出す

「さて、お前はこれからチーズルに向かえ。いいな?」

僕は頷く。

「ああ、それと、このことは誰にも()()()()()()……分かるな?」

僕は頷く。

「ではさっさと行け。ああ、国境の連中には話は通してある。九星の“鮮血の死神”が国境越えする、となあ?」

目の前の男が高笑いする。怖い。言うこと聞かなきゃ、鞭で叩かれる。



僕は男の前を去り、自分の割り当てられた部屋へ行く。殺風景な部屋だ。でも、誰かが隠れることができない空間だから、安心する。



僕は荷物を纏めた。最低限。大荷物にならないように。誰にもばれないように。ばれたら鞭で叩かれる。だって、僕はそもそも話すことができない。なのにああ言うっていうことは、僕への嫌がらせ。それと誰かにばれたら容赦なく鞭で説教するぞ、という意思表示。怖い。痛いのは嫌だ。それ以上に、あの男と鞭が怖い。



行かなきゃいけない。九星の皆と離れるのは嫌だけど、それ以上に怖い。痛い。



部屋から出ると、僕より少し背が高い、オレンジの短髪を持つ青年がいた。

「お、01(オーワン)!3日振りだな。元気だったか?」

僕は頷く。彼は05(オーファイブ)。14歳。僕とは5歳差。二つ名は、“終焉の狂戦士(バーサーカー)”。適性属性は魔と炎。僕と一番年が近くて、優しい兄のような存在だ。多分、今日前線から帰ってきたところだろう。



「やっぱ強いな、セオドア王国は。負けやしないンだが、兵士の損害が桁違いだ。全く、そもそも俺たちがいないと、真面に戦えない相手に、どうして喧嘩吹っ掛けるンだか」

溜息を吐きながら、05はぼやく。


「そりゃ、私たちがいるからこそ、あいつ等強く出てるだけなのよ。馬鹿の一つ覚えの様に周囲に喧嘩吹っ掛けまくってたら、いつか痛い目に合うのも知らずにね」

溜息を吐きつつ後ろから来た少女が立ち止まり、左手を腰に当てる。



彼女は03(オースリー)。水色の髪は胸に届くか届かないかであり、毛先にかけて濃青のグラデーションがかかっている。16歳になった03は、段々と大人っぽくなっている。そんな03の二つ名は、“全色(ぜんしき)の魔術姫”。7歳差の03と05、僕と共に、九星の年少組と呼ばれていたりする。主に06(オーシックス)に。



「というか、そもそも俺たちの存在が露見する方が拙いってのにな。なんせ、倫理的にかなり問題がある、改造人間だぞ?」

「本当に、そうね。体のどこかしらを改造されれば、髪の色が変わってしまうのに」

「それを知らない奴の方が多いンだ。だから、こうして俺らをこき使える。傍迷惑な話だ」



05は溜息を吐きながらくるりと背を向けた。正面から見ると、オレンジの短髪の青年に見えるが、後ろには細く長い三つ編みが垂らしてあり、毛先に向かって深緑のグラデーションになっている。それこそが、05が通常の人間ではないことの証左だった。



「じゃあ俺、少し寝るわ。前線から帰ってきてから一睡もしてないンだ」

「そう、お休みなさい。01、私この後、戦いがあるから。10日は帰ってこれないの。――強く生きて」

そう言い残し、03と05はそれぞれ自室に籠ってしまった。



僕はそれを見送り、静かに唇を動かした。



――03、05。お元気で。



僕は誰とも会わないように国を抜け出し、我が国オケディア王国の同盟国、チーズル帝国へ向かった。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



Side 06


淡緑色の髪を持つ青年が血相を変えて走っていた。

全体的に薄く、儚く見える。更にその青年が一部に濃茶の色を持つので、より現実味がない。それでいて他人を寄せ付けない冷徹な雰囲気は、その青年が確かにそこにいることを疑う余地がない。眼鏡を掛けているのも相まって、より冷徹に見える。



「大変だ」

青年は簡潔に仲間たちに伝える。



「何が大変なんだ?」

そう聞いてきたのは、茶髪の青年だ。彼は少し伸びた毛先に青銀の色を纏っている。

こちらも眼鏡を掛けているが、淡緑色の青年は冷酷、茶髪の青年は無愛想又は寡黙といった印象を受ける。



「01が消えた。もう手遅れだ。既にチーズルに入国している」

「もう一度言ってくれ。聞き間違いかもしれない」

茶髪の青年は頭を抱える。聞きたくないものを聞いてしまった風だ。



「01が消えた。もう既にチーズルに入国している」

「それを誰かには?」

「これから言う。――今まで立てていた計画がこれでおじゃんだ。全く、どこまでも邪魔してくる……!」

「落ち着け、06。それで、未来は」

苛立つ淡緑色の青年――06を、茶髪の青年が落ち着かせる。06は息を大きく吐いて、自己を落ち着かせる。



「僕がこう行動するのが最善だった。――取り敢えず01は死なない。けれど扱き使われ過ぎて疲労困憊。今から約2年後、セオドア王国の国王の暗殺に失敗する。原因は睡眠不足と貧血。それから飢餓による思考の乱れだ」

「つまり01はチーズルの連中に寝る間も惜しんで暗殺仕事をさせられ、血も満足に飲めず、そしてついに体の限界が顕れてしまった、と」

「僕が感知したのは、セオドア王国の国王の暗殺失敗の瞬間だ。つまり、それが01の危機になる」

「死にはしないが、命の危機はあるって訳か……。それで06、俺はどうすればいい?」

「僕は04(オーフォー)と05《オーファイブ》08(オーエイト)を呼ぶ。02(オーツー)09(オーナイン)を呼んできて欲しい。07(オーセブン)は無視でいい」

「――意外と辛辣だなあ、おい?」

茶髪の青年――02の後ろからやってきたのは、赤髪の筋肉質の男だ。毛先にかけてオレンジになっていっている。



「どうせ来るんだ、それに07がいると、一々話が進まない」

「……」

07は苦い顔をして黙った。


「取り敢えず、02。色々と作戦を立て直す。07、話を聞きたければ、何も言わずじっとしてて」

「おう」



06は二人が頷いたのを確認して行動を起こす。

「これから未来を変えよう」

06の雪色の瞳が一瞬、七色に光った。

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