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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第五章 Unidentified

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どんまい

シキフィアとシルフィアがあまりにも似すぎていたので変更します!


シキフィア→シルキエア

Side Gladiol


「なあ、なんでお前はあの時逃げたんだよ」

「あ?」

俺は、ルーデウス君との戦いの後、カーディールに聞いた。


「それは手前に関係ねえだろ」

「さあ?でも、お前はこの俺を唯一下した魔術師だ。――これでも、尊敬はしてるんだぜ?」

そっけないカーディールに、俺はわざわざ目の前に立って、腰に手を当てる。


「ああ、手前は魔法を使えないんだっけ?」

「今更何の話だよ。俺が魔法を使えないことなんか――」

「だからわからないんだな。あれ、あの場の俺が展開した魔法全てを凍らせたことの意味を」

「ああ。お前の魔法が凍らせられるなんて、考えもしなかったさ。でも、それだけだろ?」

あれは確かに綺麗だった。でも、基本的に魔法を極めれば極めるほど、武術への鍛錬を怠る傾向にある。魔術師団長がいい例だ。



「見た目もひょろかったし、体術て押せば何とかなったんじゃ?なんでそれをしなかったんだよ」

「お前は馬鹿だな。確かに魔法を凍らせるためには、かなりの魔術の腕が必要なんだが、あいつはそれだけじゃねえ。――あいつ、斬ったんだよ。俺の魔法を、さ」

ソファに行儀悪く寝っ転がり、そんなことを言うカーディール。俺は、そんな言葉を信じることはできなかった。


「は?凍ってたろ」

「凍ってたな。だが、あれはまぎれもなく魔法ではなく、剣術だ。魔力も感じられたが、一応剣術だ」

「カーディールが、正しい……」

「お前もかよ、シキ」

小さい声に、俺は口を尖らせながら目を向ける。


シルキエア・ド・エルナンド。物静かで、常にマフラーで口元を隠す。背が小さく、大人しそうだが怒らせるととんでもなく怖い。

前に、小さい上に女だからと、シルキエアを舐めに舐めまくって怒らせた馬鹿が、シルキエアに半殺しにされたことがあるくらいだ。


そして、俺にもカーディールにも言えることだが、このクラスに在籍しているので、とんでもなく頭が悪い。

俺でも呆れるくらいには。



「魔法祭の時。気になって、あの戦いを見ていたの……」

「は?お前もカーディールも何やってんだよ……」

「気になったんだから、仕方ねえだろ?」

「はあ。で?何を見た?」

俺はもう溜息を吐くことしかできない。


「笑ってた」

「まあ、勝ったんだからな。笑うくらいはするだろ」

「違う。あの子。カーディールを負かした黒髪の男の子。右腕を切られて、笑ってた」

「いやいやいやいや、ないないないない。だって右腕生えてたろ。右腕欠損したっていう噂も聞かねえし」

俺は、手をぶんぶん振って否定する。


ありえない。だってカーディールと、()()剣を()()で握って対峙していたのだ。

右腕どころか左腕すら欠けていない。


「当然。だって、その場で再生してた。それに、途中で攻撃を蝙蝠になって、避けてた」

「は?蝙蝠になれる人間なんか、いる訳ないだろ。どんな夢を見たんだよ、人間の腕が再生したり蝙蝠になったり。幸せな夢だな」

「……見た!」

「はいはいわかったわかった。で、シキは一体何を見たの」

「吸血鬼」

間髪入れずに答えるシキに、俺は呆れる。


「吸血鬼ってあの?太陽もダメ、にんにくもダメ、十字架もダメ、流れる水もダメ。……あいつ太陽の下で戦ってたぞ」

「でも、王太子殿下に見つかったとき、見た。王太子殿下の首筋に、謎の小さい傷があった。小説の吸血鬼がつける傷と一緒……」

「あいつは自分の主の血を吸ってるってことか?!それ、駄目だろ……」

「確かに危険」

「いやそこまで……」

「吸血鬼が……」

「そっちかよ!」

ばれたら殺されるとか、そんな感じか?……というか、シキは王太子殿下にばれたのかよ、あの戦いを見ていたこと!!


「シキ殿のおっしゃることもよくわかるであります。確かに、お美しいであります」

「俺はよくわかんねー」

「……」

このチームで一番の巨体――所謂(いわゆる)デブ――である、ファド・フォン・ファドキシードが、独特な口調で同調し、カーディールが適当に答える。

相変わらずウォレン・ディ・ウジェターは静かだ。


「ううん、ファドが想像するより、綺麗。今まで、見たこともないくらい」

「それは、去年一緒に行った、あの海よりもでありますか?」

「うん。本当に、綺麗。あれを見たら、誰でも好きになる」

「シキ殿は、アイン殿にほ、ほ、ほ――!」

「私の婚約者はファドだけ」

「それは嬉しいであります!」

「いちゃつくならよそでやってくれません?」

シキとファドは婚約者同士だ。明らかに真反対だが、上手くかみ合っているらしい。婚約者のコの字もない俺らには、つらい空気だ。

……俺らと言っても、俺だけか。悲しいのは。


「王太子殿下、確実にあの子を囲ってる。私が、傷について言ったとき、とても愛おしそうな表情をしてた」

「一応婚約者いるよな?婚約者いるよな??」

「完全に狙われてるじゃねーか。おもしれえ」

さっき自分を負かせた相手が、自分の主に狙われてるなんて、カーディールにとっては格好のネタだっただろう。


「それは大丈夫でありますか……?」

「手遅れ。どんまい」

シキのどんまいは、最大の哀れみだ。つまり、まあ、そういうことで……。



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