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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第五章 Unidentified

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不屈は何を成し遂げられるのか

「次はルーデウスか」

「はい」

「頑張ってくださーい!!」

「頑張ってね~」

サティとカーティス様の激励に、ルーは小さくこちらに手を振る。


「勝率は?」

「相手が悪いと思います。相手は魔術師が苦手な剣士ですから」

「そうか」

「僕はルーに、剣士に対しての戦い方を教えたことはありません。――魔術師団長でさえも、騎士に守られて戦っています」

「あれは……極度の運動音痴だからな。ルーはマシだろう。母親の血を強く継いだようだ」

確かに、ソルセルリー元当主は、とんでもなく運動音痴だった。そして、その元夫人も。ミリア姉さんでさえ、あの剣術を扱えるくらいの運動神経はあるのに……。



「勝って勝って勝ちまくってください!」

「無茶言うね~」

サティの応援に、カーティス様は笑っていた。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



Side Rudeus


あ、相手が剣士!?どどど、どうしよううう……。


「お、ラッキー。俺、魔術師キラーなんだよね~」

「魔術師キラー……」

「そうそう。純粋な魔術師君、君しかいなさそうだし、当たるかなー、って思ってたけどラッキーだな~。と、いうことで」

そう言って、さっきまで陽気だった彼――モンパトーレ先輩の雰囲気がガラッと変わる。


「俺の糧になってくれよ」


「用意――始め」

僕は、その言葉が言い終わるや否や、すぐに魔法を展開する。


「闇属性上級魔法、ダークランス!水属性中級魔法、アイスウォール!!魔属性初級魔法、混乱!!」

「フンっ!」

その少し間の抜ける掛け声とともにモンパトーレ先輩の剣が振り下ろされ、僕が展開していた魔法が一気に消えてなくなる。


「え……魔法が、斬られた……!」

「だから、俺は魔術依キラー、って呼ばれてんだよ」

その言葉に、納得してしまう。なら、あえて難しい魔法を使わず、量を浮かべてみればどうだろうか。一々切っているなら、いつかは間に合わなくなるはずだ。


「水属性初級魔法、ウォーターボール!!」

今度は、いくつもの水を浮かべる。しかし――。


「あのな。俺に斬られて欲しくないんならさ、少なくとも数万個単位で浮かべてくれよ。――カーディールなら、簡単にできるぞ?」

その言葉と共に、一気に斬られて霧散する僕の魔法。あまりにも一瞬すぎて、一瞬呆けてしまった。


そんな僕に、モンパトーレ先輩は笑顔を浮かべてこう言った。


「お次は?」

「……」

「なら、俺の勝ちだ」

「亜空間収納!」

「は?何を収納する気だ?」

「アースニードル!!」

「いやそれお前使えないだろ」

僕は確かに水属性、闇属性、魔属性に適性を持っている。確かに、彼の言う通り僕は土属性魔法を使えない。


しかし、彼は、僕たちの試合を見ていない。少なくとも、僕が次鋒だという事を、彼は知らなかった。



通用するとは思っていない。けれど、何もしないのは嫌だ!たとえ、手も足も出なくとも……。



「!!」

始めて、余裕そうな彼の顔を歪ませられた。僕は、ひそかに笑った。


隙を突いたからか、彼の頬をアースニードルは傷付けた。しかし、それだけだった。


「お前、カーディールよりしぶといな」

「え?」

「カーディールなら、とっくに諦めていた。――俺、少し失望したんだよ。確かにあれに勝つのは無理だ。でも、もう少し足搔いて欲しかった」

「なにを……」

僕は、いつの間にか首に剣を突きつけられていた。


「勝者、グラジオール・フォン・モンパトーレ!!」



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



Side Ain


「ねえ、ところでアイン?」

「なんでしょうか」

「俺の対戦相手は、どんな人?」

カーティス様は、とても珍しく真剣な表情をしていた。


僕は、すぐさま相手に潜り込ませていた蝙蝠からの報告を受け取り、それをカーティス様に横流しする。



「とてもふくよかな方です。ただお気を付けを。魔力がかなり多いようです。向こうで、二番目に強いですね」

「えー、そんな人と俺が?俺負けちゃうじゃん」

「そうですね。ルーよりも勝率は低いですね」

「これ、もしかしなくても大ピンチ?」

「サティには、魔術師が当たっているため、有利ではあります」

「魔法はサティの味方だからね。……一体、どんな力なんだか」

僕は、そんなカーティス様の言葉に、曖昧に返すしかできなかった。



「わ、私ががんばらなきゃ……」

サティが奮起していたが、まだ早い。たった今、次鋒戦が終わったくらいだ。


「あまり思いつめない方がいいですよ。例えサティが負けても、マティ様が何とかしてくれます」

「それ俺が勝つ前提?」

「頑張ってください!」

僕は、カーティス様がそこそこ戦闘慣れしていることを知っていた。例え相性が悪くても、健闘してくれるだろう。


「し、辛辣~」

その言葉で、カーティス様は誤魔化しているが、冷や汗が伝っていることを僕は見逃さなかった。


いや……僕は蝙蝠から記憶共有でマティ様と何か怪しいやり取りしているのは知っているよ?僕は、内容までは知らないけど。でも、カーティス様は案外“こちら側”に近いだろうという事も。


対人戦には詳しいだろうな~。ただ、今回の対戦相手のような人とは戦ったことがなさそうだから、かなり苦戦しそうだが。



僕は“鮮血の死神”だ。知らないことはあまりない。ただ、そのことを知ろうとすると、マティ様に睨まれる気がして、深入りしていない。


流石に、突然殺気を飛ばされるのは、ね……。蝙蝠死んじゃう。

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