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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第五章 Unidentified

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解決

Side Rudeus


風紀委員の人たちに案内され、僕たちは校舎側へと逃げた。あの圧倒的なプレッシャー。なんだか、今までやっていた魔法戦がおままごとのようにしか感じなかった。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



春に入学式をした講堂。そこには、避難した生徒とその保護者が顔を曇らせていた。

誰もが不安でざわざわしている。いつ、あの恐ろしい襲撃者がこの校舎に攻めてくるのか?そんな恐怖が、生徒たちをパニックに陥らせる。


空気が割れんばかりの音が、時々届く。それも、人々の不安を助長しているのだろう。


さっそく会長が動いているらしい。風紀と提携して、生徒やその保護者たちの避難誘導をしているのだが、いつ恐怖が爆発して、この校舎から飛び出ていく人が出てくるのか、分からない。


今は、何とかぎりぎりで持ちこたえているのだが、その均衡が崩れてしまえば……。考えたくもない。



「アイン、大丈夫かな……」

「信じて待ちましょう、だって、一番強いんですよ!?」

サティが、僕の手を強く握ってくれた。


「そ、そうだよね、アインを信じよう」

僕も強く握り返し、自然と笑みがこぼれた。


「お、いいこと言うじゃーん、サティ。マティアス様も、アインのことを信じてやればいいんですよ~」

突然、僕の頭上から声が降ってきた。その声の持ち主はカーティス様で、こんな事態になっても、通常運転でなんだか安心してしまった。


「アインが負けるとは、思ってはない。俺の護衛だ、弱い訳がないだろう?」

「素直じゃないな~」

マティアス()()()殿()()にそう言うカーティス様は、心臓に毛が生えていると思う。


「おい、カーティス。マティアス殿下に失礼だぞ」

「許してくれてるんだし、別にいーじゃん?ルルもそんなにカリカリしないでよ。牛乳飲んで落ち着いて?」

「お前……人をおちょくるのも大概(たいがい)にしろ!!!」

「わ~ルルが怒った~」

「今からお前をティティと呼ぶ、以上」

「わー、それは勘弁して!!」

「知らん。もう決めた」

「ひっど~い」

ブーブー、とカーティス様が抗議しているが、ハロルド様はどこ吹く風だ。


そもそも、カーティス様って、カーティス以外の愛称が存在していたんだな、と思ってしまった。



「ルー、お前の兄は今どこだ?」

「兄さんですか?多分、戦いに向かっていると思うのですが……。すみません、お力になれず」

「いや、いい。事前に話を通しているからな。戦いに行く前に合流する手筈だ。今すぐという訳でもないし、まあいつか会えるだろう」

「え、事前にって……」

マティアス様の話に違和感があった。まるで、あの襲撃が起こることを、事前に知っていたような……。



「それよりも、あの戦いに参戦するような馬鹿が出ないようにする。あの戦いで、俺たちができることは、何もないからな」

「なにもない、ですか」

「ああ。何もない。ただ無駄に命を散らせるだけだ。王太子命令があれば、馬鹿は引きさがる他ない」

確かに、それはそうだ。



「父上にも話を通す必要がある。それとフィンレー王子も連れて行った方がいいかもな。――ああ、楽しくて仕方ない」

そう言って、マティアス様はその場から立ち去った。我が国の王太子殿下に不敬ではあるが、とんでもなく下衆い表情をしていた。



「マティアス様って、あんな風に笑うこともあるんですね……」

サティが完全に引いたような表情で語る。



――そのセリフ、小説に出てきた気がする。……反対の意味で。



「あちゃ~。あれ、本気だね。ドンマイ」

カーティス様が後頭部の髪をかき上げながら、誰かへの無事を祈っている。ハロルド様は、そんなカーティス様に首をかしげていた。



「サティさん、大丈夫ですの!?」

「大丈夫です!」

「!!??」

僕は、背後から突然人の声がして文字通り飛びあがった。


「マルティン様も、アムステルダム様も、ソルセルリー様も無事ですね。よかったですわ……!」

安心したような表情を浮かべる彼女は、たしかシスティーナ・フォン・エヴァーゼ様だ。


僕たちは、あの襲撃者たちが来た時にかなり近い所にいた。だから、エヴァーゼ様は僕たちを心配してくれたのだろう。


だが、この場にはマティアス様とアインがいない。そのことに気づくと、すぐにエヴァーゼ様の表情が曇った。



「王太子殿下とアイン君は……?」

「エヴァーゼ先輩、マティアス様は先程、フィンレー殿下と共に国王陛下にこの件について、奏上したいことがあるそうで、陛下の元に向かわれたのですわ。それと、アインとラファエルが今襲撃者と戦っているらしいですの。

ただ、安心してくださいまし。アインはあの九星ですわ。――あの九星、しかもその中でも最強のアインに勝てる相手なんて、そうそういないですわ」

カーティス様が説明しようと、口を開けた瞬間、凛とした声が聞こえた。

そちらに向くと、そこにはジェシカ様がいた。


「ふふ、皆様、この国には幸運にもとんでもなく強いお方がいらっしゃいますわ!あの方は、とても有名な都市伝説、九星所属ですわ!さらに、国に多大なる貢献をしたとして、あのステラ王国で公爵位を叙爵(じょしゃく)される予定なのですわ。そんな方が、守ってくださっているのです。

皆さまも知っているのではなくて?九星は、戦場をたった一人で勝敗を変えることができることを。たかが二人。襲撃者二人に負けるほど、九星は弱いのでしょうか?」

一際大きい声で、ジェシカ様がそう言った。その言葉に、周囲の人々の目に、冷静さが戻った。


「アインが弱い訳がない!だって、私、手も足も出なかったんですから!」

「そうだよ!魔法の腕も、僕どころか魔導士団長の兄さんですら、手も足も出ない程だったんですよ!それに、クラス皆でアインにかかっても、かすり傷も付けられなかった……」

「俺も頑張ったのにね~」

カーティス様が緩く笑う。カーティス様の実力を思い知った生徒たちは、その意味に気づいてひどく驚いていた。



「――その通りだ」

最初とは別の意味でざわめいていたこの講堂内に、一つの声が響いた。

自然と(かしず)きたくなるその声の持ち主は、この国の王、テオドール・ドゥ・セオドア国王陛下だ。その傍には、カタリーナ・フォン・セオドア王妃殿下がいらっしゃった。


壇上にいる陛下は、たった一言でこの講堂内にいる人間すべてを黙らせた。


「この度、我が息子の専属護衛であるアインが、この学園に侵入した襲撃者を撃退した」

その言葉に戸惑い、ざわめく人々の目の前に、マティアス様と一緒にアインが壇上に登場した。

その姿は、先程まであんなに激しい戦いをしていたとは思えない程、しっかりとした足で立っている。傷一つない。


だが、アインが陛下に(ひざまず)こうとすると、それを陛下が手で制止していた。



「襲撃者は、撃退しました。もう、この学園は安全です」

陛下に視線で促され、アインは涼しい表情でそう言う。それが、とても頼もしく思えたのだろう。安心し、空気が緩んだ。



「うむ、よくやった。我が国の国民を守ってくれた。感謝する」

「当然のことをしたまででございます。その上、私に助力してくださった方のお陰で、襲撃者を無事撃退いたしました」

「では、その者にも褒美をやろう。追って報せる」

「承知しました」

アインがボウアンドスクレープをし、失礼します、という言葉と共に、その場から去っていった。

ティス、カース、ティティ、スス、ティア、カティア、……結局いいのが見つからなかったんですよね……。

あとカティやスティはマティとサティがあるからなし!というのは最初から決めてありました。



読んでくださりありがとうございます!

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