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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第五章 Unidentified
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天使覚醒

Side Raphael


ひとまず、ループスを抱えて翼を広げる。空高く飛び、学園の屋上に速攻でおいていく。すぐにあの場に戻り、戦いに参加する。



「戻ったか。オレはアイツを助けたいんだがな、流石にウィキッドと戦ったことがない彼岸のみに任せるワケにもいかないからな」

そう言って、悪魔は視線でアインを示す。今のところ、健闘しているようだ。


「グレースは、魔族でも忘れるほどの大昔から生きている。それほど厄介な存在だ」

「そ、それは……」

普段という程この悪魔のことを知っている訳ではないが、それでもお茶らけた雰囲気が一切霧散している悪魔に、俺は戸惑う。


「だが、このパスティアも、幹部に選ばれるだけあって、厄介なことには変わりがない。九星なら一人で渡り合えるんだろうがな」

「なら、オレたちも……」

「まさか。オマエたちは一般人、あっちは戦闘のエキスパート。いくら力が通用しなくとも、簡単には殺せない上、もしかしたら捕縛してくれるかもな。オマエらなら確実に命のやり取りになるが」

「ほばく……」

悪魔がパスティアの攻撃をいなし、カウンターで攻撃する。それを躱した先に俺は魔法を置くが、それも簡単に魔法で相殺されてしまった。


ウルガも飛び掛かるが、避けられた上に大きな隙を晒してしまい、パスティアに攻撃されかける。慌てて俺が魔法を撃たなければ、ウルガはどうなったことか。



「男三人で、女一人と対峙するなんて。よっぽど自信がないのね」

「まさか。確実に殺せるほうを殺すのは、立派な戦略でしょう?昔、ウィキッドに戦術指南をさせていただいたのですがねぇ」

「ああ、四人だったのね」

「私を数に加えるなんて、よっぽど節穴なんですねぇ。アナスタシアと私がいなくなってから、ウィキッドの質は極端に落ちたようですね」

「あら、自信過剰も甚だしいわね」

レイモンドが煽ってる。どうやら、ウィキッドとレイモンドが知り合いのようだが、それはアインは知っているのだろうか。悪魔は、呆れたような表情をしているだけだが。



「ねえ、あ……ラファエル!彼岸の力を使わないの~?せっかく翼も広げている訳だしさ」

「あ、いや……」

俺は、言葉に(きゅう)した。俺は彼岸の力を使わないのではない、使えないのだ。


アインから確かに、彼岸の力の使い方に関して教えて貰っている。しかし、アインはあまり乗り気になっていない。

俺に半身がいないからだろう。衝動は、とても苦しいもので、場所を選ばなければ、とんでもない被害を被る。


だから、俺は天使の彼岸の力について、ほとんど知らないと言っても過言ではない。



「俺は、彼岸の力を使えない」

「はあ?つ……アインが教えてくれているんじゃないの?アイツがオマエに意地悪するワケないでしょ」

「さあ。俺はアインの真意なんか知らない」

「―――――――――――――――――、――――」

「なんて?」

悪魔が何かを言ったようだが、どうやら外国語のようで、何を言ったのか、理解できなかった。


「何でもない。それよりも、彼岸の力を使えない彼岸なんか、これから足手纏いになるよ?まさか、衝動が怖いの?」

「そ、そんな訳……!」

「だって、そうでしょ?普通は、誰からも教えて貰わずとも力を使える。だから、教えて貰わないと彼岸の力を使えない、って言うのはおかしいの。――衝動が怖いんでしょ?」

「……」

確かに、怖い。ずっと、アインから衝動の苦しみについて、教えられてきた。

衝動は、半身が見つからない限り、永遠に続く地獄であり、下手すれば多くの命を摘み取りながら、命を落とす。


情けないが、俺は罪もない人々の命を奪うことがとてつもなく怖い。その後、命を落とすのも。


俺が彼岸の力を使うか否か迷っていると、レイモンドが俺たちに声をかけた。


「終夜、ラファエル、ウルガばかりに任せるのですか?」

「天使はとにかく浄化することに特化している。だから、浄化するイメージで魔力とは違う力を使えばいいよ~」

「わ、分かった!」

悪魔の助言をもとに、俺は彼岸の力を使う。あの時感じた、力をイメージして。それで、敵の攻撃を浄化し無力化するために。



目の前には、パスティアが放った攻撃。紫がかった、禍々しい気配をまき散らす、呪い。



体の奥底に眠っている、魔力ではない力。神々しい、そんな力。それが沸き起こる。



俺の方へと近づく、万物を呪おうとする力。悪魔もそれに気づくが、これは聖なる力で浄化しない限り、無効化することができない。



俺は、手の平に力を集中させる。なんとなく、力の使い方が分かる。これが、彼岸の本能というものなのだろうか。


「――浄化」

俺の声が、存外穏やかに響く。俺の手のひらの光球が、パスティアの呪いを浄化し、無力化する。


まさか、自分の攻撃が無力化されるとは思っていなかったパスティアが、間抜け面を晒す。



「さすがだね~。さすが、オレの――」

悪魔が何か言っている。俺は、それを聞き取る余裕がなかった。



どんどん体の奥底から力が湧き出てくる。腕より少し長いくらいだった翼が、大きくなる。先ほどとは、存在そのものから違う。



「覚醒したんだね~」

「かくせい?」

「いつかウルガもしますよ、覚醒」

「覚醒……?させるかッ!」」

パスティアは俺に猛攻撃を繰り出すが、俺は翼を盾にする。

それだけで、パスティアの攻撃は、儚く散った。


それを見て、悔しそうにするパスティア。俺の頭上には、光輪(こうりん)が光り、まるで前世のアニメの天使のようだ。



同時に背後から、聖なる光が降り注いだ。魔力的に、アインの攻撃で間違いない。アインは、聖属性は持っていない筈だが、と不思議に思った。


ただ、図らずも後光のようになってしまった。それにパスティアは、とても不愉快そうだった。

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