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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第五章 Unidentified

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ウィキッド襲撃

「ウルガ、いる?」

「いる」

ウルガは短く応答し、木の上から降ってきた。


「なら、ラファエルに連絡を取ってきてほしい。――今、ウィキッドの気配がした」

「ウィキッドが?」

ウルガが疑わし気に僕を見るが、事実だ。


「たぶん、そろそろレイモンドたちが接触する頃合いだと思う。だから、ラファエルも、いつでも出られるよう、準備をしておいてほしい。もちろん、ウルガもね」

「わかった」

「片方は恐らく――。ウルガ、緑髪の女性と対峙してはいけないよ。合っても、すぐに逃げて欲しい。少なくとも、僕の異能力を見破れる手段は、向こうにはない筈だから」

「わかった」

ウルガがしっかり頷いてくれた。この後、色々と動くためにも、できるだけレイモンドの心証をよくしておきたい。そのために、ウルガの安全確保は最優先事項だ。


「行っていいよ」

「ふん」

どうやら、酷く嫌われたようだ。しょっちゅう僕がレイモンドと話しているからだろうか。僕がレイモンドと話していると、ウルガの機嫌が悪くなるように感じる。


その執着は、まるで――。

いや、レイモンドはウィキッドだ。ウィキッドの半身なんか、今まで聞いたことがない。



僕は、去っていったウルガを見ながら、思考の海に沈む。


「僕も、知らないことがあるんだな……」

「なにが知らないんだ?」

「マ、マティ様?!」

真横から顔をのぞかせたマティ様に、僕は飛び上がる。



――ま、全く気配がしなかった……。



「そこまで驚かなくてもいいだろう?」

「い、いつからそこに?」

「さっきだ。何かやましい所があるのか?」

「全く!」

面白いものでも見るように、くつくつと笑うマティ様に、僕はひどく動揺する。



――ウ、ウルガは見られていないよね?



流石にウルガと話しているところ、特に内容を聞かれているとまずい。


そっとマティ様の様子をうかがうが、特に不自然な所はない。だが、完璧に隠しているのかもしれない。


「すぐに3-Bとの戦いが始まるぞ」

「分かりました。すぐに向かいます」

僕は、マティ様と共に天幕へと戻る。どうか、レイモンドと終夜が無事でありますように……。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



Side Raymond


「頑張ってください、終夜!」

「お前も手伝ってくんない?」

「魔族共用言語になってますよ」

「久遠語だね~」

私は、離れたところの物陰に隠れながら、応援している。私ができるのは、肉壁になることだけなのだが、私は特別頑丈である訳でもないため、できればそれは避けたい。


それに、私は邪神から離反した際、邪神からもらった能力を全て剥奪されているため、下手すれば人間より弱い。


だから、ウルガを鍛えていたのだ。それに、元々強者だった時の動体視力は残っているし、少しではあるものの魔法も使える。

それを使って終夜を支援しているのだが、あまり助けになっていないようだ。


……仕方ありません、ここはグレースから冷静さを奪いましょう。



「グレース、ヌフィストは元気ですか?」

「はあ?お前がヌフィストについて、知る必要があるの?」

笑顔で話しかける私に、ぶっきらぼうに返すグレース。


「だって、弟子ががんばっているかどうか、知りたいと思いません?私はヌフィストの師匠ですから」

「お前は、邪神様を裏切った!」

私は、小首をかしげたが、グレースはそんな私の様子が気に入らなかったらしく、声を荒げた。


「アナスタシアも裏切りましたよね?」

「アナ様はあの男に脅されたのよ!あの男さえいなければ、アナ様は邪神様から離れることもなかったし、アナ様が殺されることもなかった!」

「それは、アナスタシアがあの男に負けたと。屈したとおっしゃりたいのですか?」

口元に手をやり、グレースの失言を笑う。


「お前……!」

「だから、アナスタシアの足を引っ張っていたのがグレースだと、私は言ったのですよ」

「殺してやる!!」

「終夜、アインに助けを求めましょう」

「煽るだけ煽って、あとはアインや俺に丸投げ~?」

パスティアと対峙している終夜に、私はアインがいるであろう場所を指さす。そんな私に、終夜は呆れていた。


「さすがに、私がいないとアインは困るらしいですからね」

「分かった~。じゃあ、撤退か」

「そうはさせるか!」

「レイモンド!お前を絶対に殺してやる!!」

「あんなに熱烈な告白を受けて、レイモンドよかったね~」

「あんなに殺気のこもった告白は、流石に初めてです」

私は、グレースをおちょくる終夜に乗る。それで、更にグレースが苛立つ。


「私は足が速いので、抱えて貰わなくとも結構ですよ」

「了か~い」

緩い返答は緊張感をなくす。私たちの後ろを追いかける彼女たちは、簡単に私を殺してしまえるだろう。

だが、私も終夜も、そんな攻撃を受けてしまうほどどんくさい訳でもない。グレースやパスティアの攻撃を避け、目的地へと急いだ。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



Side Ain


3-Bとの戦いは、こちらの圧勝で終わった。マティ様はもちろん、サティの出番もなく。


そして、もう一つの準決勝戦では、4-Dを下した4-Eが勝ったようだ。



「行きますね」

「「頑張って!!」」

「お前なら、簡単に勝てるだろう?」

「さすがにマティアス様鬼畜スギでしょ~。だって、相手はあの――」

「大丈夫です。ちょっと強い人間は、相手になりませんから」

「わあ、流石王太子付きの護衛だね~」

僕は、彼らからの激励と背に、ステージに上る。



「手前は、なんだか骨がありそうだな?」

「そうですか?僕は貴方よりもずっと細いですが」

「細くともしっかり鍛えてんだろ?」

「そうですね。そうでなければ、マティ様の護衛は務まらないですから」

「ああ、ジャスパー・フォン・シモンズを下したやつってお前なの?そりゃ、面白くなってきたじゃねえか」

好戦的な笑みを浮かべ、獣のように体勢を低くする。僕は刀の柄をしっかりつかみ、重心を下げる。


「用意――」

「すみません、そこのお二方!」

「邪魔させてもらうね~?」

審判の開戦の合図が出される前に、人影が二つ、空から降ってきた。


「って、片方アインじゃん」

「……斬りつけますよ?」

「おーコワイコワイ。それでさ、助けてくんない?」

「……ウィキッドですか」

あったりー!と言いながら満面な笑みな終夜に、僕は頭を抱える。


「相手はグレースとパスティア。流石に私と終夜では持て余すのでね……」

「だからって、こんなところに来てほしくなかった……」

「ああ、人間多いですね」

「レイモンドは生徒の避難を、ラファエルは、ウルガが伝言を伝えている筈なので、すぐに来ると思う」

「オレは?」

「頭上からの攻撃は僕が何とかする。だから、その後パスティアを引き受けて。僕がグレースを引き受けるから」

「オレと一緒にグレースをやってもイイよ?」

「ラファエルはパスティアより弱い」

「成程~?」

僕は終夜が納得したのを見ると、すぐに異能力を展開した。


「異能力、抹消!!」

「「!!」」

ウィキッドの攻撃は、僕の抹消の応用で作った結界により、消滅した。


「さて、グレース。君の相手は僕だ」

「へえ、なかなか生意気ねえ?」

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