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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第五章 Unidentified
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サティのスペック

「あの魔法は、なんだろう……」

「火属性光属性融合上級魔法、サンライズ……」

「そのやけに長い魔法は何」

「サティの魔法です。サティしか扱えないほど、難しい魔法であるため、固有魔法と言っても差し支えありません」

ただ()()()()()()()()()()()彼女は、その魔法は使えない筈だ。


「固有魔法!って、そんなもの、あるんだ~」

カーティス様は、無邪気そうにそう言う。


「かなり少ないですが。固有魔法の持ち主なら、この学園に特待生として入れたのも納得ですね」

僕は、そう言ってステージに目を向ける。

無事、サティが白星を得たようで、万歳(ばんざい)をして喜んでいた。


対戦相手は、そんなサティに苦笑いだ。

相手が優しかったからよかったものの、プライドが高い貴族なら、それだけで不興を買っても仕方がない。


「あれは、喜んでますね……」

ルーが、苦笑いしている。


「アイン、厳しく言いつけておけ」

「了解しました」

さすがにマティ様も思うところがあったのか、表情が固かった。



サティは、ずっと緊張していただろう。一応、戦ったことはないので。


その喜びが出たのも仕方ないと言えようが、もうちょっと堪えれば完璧だった。

それに親代わりの人に自分の活躍を見せられたのもあるだろう。現に、観客席の方に手を振っている。



「次は準決勝ですね」

「まだ4-Eと当たらないのが幸運だね~」

「当たるなら、決勝か」

「サティ……すごいですね」

「スペックだけなら、九星とどうなんだ、アイン?」

「……いい勝負かと」

「そうだよな?」

マティ様の笑顔の圧に、僕は顔をそっと逸らす。


「九星って、都市伝説ですよね?……そうですよね?」

「そいつはその九星の一人だぞ」

「さ、流石にそれは……」

「俺を疑うのか?」

「い、いえ……」

ルーが委縮する。カーティス様が、かわいそ~、と言って茶化す。そんなカーティス様は、どうやら心臓に毛が生えているようだ。


「そもそも、急ごしらえの結界は、魔法攻撃には強いが物理攻撃に弱いという特徴を持っている。だが、サティの結界は難なくそれを防いだ。――お前の知り合いの中にいそうだな、そういう奴が」

それは、オットー兄さんのことだろうか。


「九星は、あの程度の結界よりも強固な結界を張れますよ。ただ、九星は名の通り、九人です。十人目なんかいませんよ」

「そうか、一応今は納得してやる」

「事実ですよ……」

九星は九人だ。それは、ずっと変わらない。彼女がもし、九星に匹敵する実力があったとしても、九星になることはない。



「ただいま戻りました!」

「アイン」

「サティ、貴方が戦う相手は、ほとんどが貴族です。貴族は少なからず、選民思想を抱いており、中には平民にかなり厳しい方もいらっしゃいます。

今回対峙した方は、大衆派の貴族だったために、特に大きな問題にはなりませんでしたが、もしあの方が貴族派だったなら、怒りを買うことは目に見えています」

「え!勝っちゃだめってこと!?」

「いえ……ただ、喜ぶのは、天幕に戻ってからにした方が、よろしいかと」

「あ、確かにそうだね!ありがとう!」

素直なのは、美徳だ。


「僕が一番最初に対峙した方は、貴族派だったので、平民である僕にあっさり負けたのが認められず、僕の刀が魔道具ではないか、と言った嫌疑をかけてきましたね?」

「あ、もしかして、私もああ言われるかもしれない、と?」

「僕は水属性に適性がないにもかかわらず、氷魔法を使ったので、そういう嫌疑をかけやすかったのですが、サティはリレーでもう既に実力を見せていますから、言いがかりをつけられる可能性は少ないと思います」

あれはあの場だったから言い返せたものの、もし場所が違っていれば、僕は問答無用で失格になっていただろう。


いくら大衆派がいたとて、ここは身分社会。僕たち平民は、貴族に気を使うことが必要だ。



「うん、確かに、気を付けた方がいいかもしれない。ありがとう」

「いえ、マティ様も危機感を感じていらっしゃいましたし、平民はほとんどの場合、貴族と関わる機会は少ないので、これから学んでいけばいいんですよ」

「ちょっとは家でも勉強したんだけどな……」

ちょっと落ち込んでいるようなので、フォローを入れる。


「特にサティ側の大きな過失はありませんし、大丈夫ですよ」

「本当?よかったぁ」

安堵して、ほっと胸を撫でおろしていた。大体は向こうからのいちゃもんなので、難しい。今後も貴族と関わるならば、気を付けていかなければならないだろうが、ここだけの関係ならば、案外そうでもない。


この学園を出て城で働いても、貴族とほとんど会うことはないのだ。きちんと平民と貴族の住みわけがなされている結果だ。



「あ、その、試合は……」

「とてもよかったですよ。特に、あの魔法。初めて見ました」

「やった!褒められた!」

「でも、結界を信用しすぎないでくださいね」

「はい!」

サティが元気よく返事を返す裏で、カーティス様とルーが顔を見合わせて頭に?を浮かべていた。


「ん?」

「初め……て?」

「名前も知っていたのに?」



次は、3-Bとの戦いだ。

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