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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第五章 Unidentified

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魔法戦個人戦、中堅

Side Kirstis


――アイン強すぎるでしょ。



俺は、一瞬で決着した先鋒戦を呆然として見ていた。


ステージ上に、氷の華が咲く。アインは、水属性はない筈なのに、あの氷は魔道具の効果ではない。そもそも、普通に考えてあんな魔法を発動させるには、魔法陣の大きさが足りない。


少なくとも、直径身長ほどの大きさが必要だ。


しかしその魔法陣はどこにもない。だからこそ、その刀は魔道具ではない。それに、事前の審査が通っているのだから、魔道具ではないというのも明白な筈なのに、向こうはごねる、ごねる。


その姿があまりにも情けないし、何より面倒くさい。アインの実力は、シモンズ公爵家の次男をあっさり任せたほどだ。これもアインが専属護衛になった経緯(いきさつ)から有名になっているのに、なぜ魔道具を持ち込むと考えているんだろうね~?


これで、相手にかなりのプレッシャーを与えれただろう。アインほどの強者は、あまりいない。だが、普通大将にする実力のアインを、先鋒に使ったのか。それを考えて、恐ろしくなるだろう。



と思っていたのも束の間、次鋒戦では、相手はアインの圧を全く物ともしていなかった。まあ、あっさり負けてたけど。あれだけ強気なら、それ相応の実力があると思っていたけれど、そうでもなかったようだ。


それにしても……。



――まさか、4-Eと同じく、一番の実力者が先鋒を務めるなんて、案外その構成が一番よかったりするのか?



アインが吸血鬼であると、サティ以外は知っていたが、そのことをルーがうっかり口を滑らせて言ってしまった。

それで大騒ぎしているのを尻目に、俺は立ち上がってステージへ向かう。



「あれ?いいんですか、あそこにいなくて」

「困っているアインも可愛いからな」

鬼畜。好きな子を虐めて楽しいのか。


俺はマティアス様の視線の先を見ると、アインのことをなぜかルーに問い詰めるサティと、その質問攻めから逃れるためにアインの背に隠れるルー、その二人に挟まれ心底困っている感じのアイン。


「ルー、アインが吸血鬼って、どういうこと?教えてよ!」

「そ、それは……!」

「ちょ、ちょっと落ち着いて……。別に隠すこともないですから!」

「きゅ、吸血鬼って……。まさか、血を!?」

「アインはマティアス様の血を飲みます!」

「ルー、そんな大声でそんなこと言わないでください……」

「アインって、物凄く人間だけど!ラファエルさんは、翼が生えてたでしょう?!」

「蝙蝠の翼が生やせます!」

「ちょ、ルー、そんな大声で……」

少し天幕から離れているが、それでも聞こえる騒がしい声。


そんな光景に、微笑ましく思っていると、マティアス様から軽めの殺気を飛ばされる。


「俺はマティアス様の好きぴを取る真似なんか、しないですって~。あんな明らかな地雷、普通関わり合いになりたくないですよ』

「地雷……?」

「傷を負った魔族について、俺が知らないとでも?――それに、あの傷人間でも地雷だと思います」

「それを俺が癒してやるから問題はない。――お前も、俺達のことを誰にも言うなよ?例えば、ハロルドとか」

「まさか!俺が腹黒なところ、ハロルドに知られたくないんですよね~」

「まあ、いい。必ず勝てよ」

「それで、マティアス様を楽させて差し上げますよ」

「ああ。頼もしいな」

マティアス様は、笑みを浮かべる。


参照すれば、そのあとの試合は免除される。明らかな時短だが、それもあって先鋒をアインに据えたのは正解だろう。



「じゃ、行ってきますね~」

俺はそう言って、ステージ上に上る。


対戦相手も同時に上る。向こうは無口で、何も話そうとしないが、明らかにプレッシャーを感じているだろう。


「用意――始め」

「ここは俺が勝たせてもらうね。じゃあね~」

そう言って、俺は風属性初級魔法を自分の背中から出す。それで、加速して相手の背後に回り込む。


例え3年でも、魔物に対しての戦いの経験が豊富という訳でもない。

結局、強くなるには命のやり取りをする方が一番早い。そして、それには魔物退治が一番うってつけなのだ。


だから、魔物退治をしているかしていないかだけで、俺に対してのアドバンテージはない。

それに、対人戦のエキスパートから訓練を受けていたルーに対してもサティに対しても、上級生のアドバンテージなんて存在する筈がない。


だからこそ、特に目立った強者がいないクラスの相手は簡単だった。



まだ反応しきれていない相手の首に、刃を添える。ぎりぎりで相手が対応したが、相手の剣を弾き飛ばす。それと同時に相手が魔法を放ってくるので、バックステップで後退した。


「何で……なんで1年の癖に……!」

「そりゃ、俺の方が戦い慣れてるから。それ以外の理由なんてないでしょ、先輩?」

「そ、そんな訳……!」

「それに、対魔物戦と対人戦は、勝手が違うんだよね~。だから――」

俺は魔法を撃つ。足に向けて撃ったので、相手は痛む足を押さえて(うずくま)る。


「この勝負、俺達の圧勝で納めさせてもらうね~」

「そ、そんなことさせる訳……!」

しかし、片足で何ができるだろう。人相手に二の足を踏むようじゃ、ルーやサティにすら負けるだろうね。


「く、クソ!」

「わあ」

相手は、また魔法を撃ってくる。土塊が飛んでくるが、俺も魔法で対応する。

俺は剣を相手の首に突きつけた。


「勝者、カースティス・フォン・マルティン!よって、勝者、1-S!!」

がっくりと膝をつく相手を尻目に、俺はさっさとステージから降りた。


流石に、もう騒ぎは収まっていたが、どうやらマティアス様はアインを助けなかったらしい。

なんか疲れているし、マティアス様に対して、拗ねているような感じがする。


それに対してマティアス様は何も堪えた様子がないから、アインは暖簾(のれん)に腕押し状態だ。昔からそうだから、何故アインがマティアス様のことが好きなのか……。

血の味がよければすべてよしなのだろうか。


そう思いながら、俺はマティアス様以外の人物からの祝福の声を浴びていた。

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