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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第五章 Unidentified

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魔法戦個人戦、次鋒

Side Rudeus


僕の取り柄は、人よりも多い適正属性のみだった。

けれども、兄さんも同じく三属性の適性があるし、九星には、全属性適正がいるらしい。


いや、違う。とある人物を除いて、九星は皆三属性以上持っているという噂だ。


そのとある人物とは、”鮮血の死神(アイン)“。そんな彼は二属性持ちだ。


比べるものが違うが、どうしても比べてしまう。自分が、そんな彼らと――兄さんと比べて、どれだけ矮小(わいしょう)な存在なのかと、思ってしまう。



でも、アインは体を傷だらけにしてまで、強くなってきた。……違うか。あの傷は、虐待でできる傷だよね。僕にもできたよ。傷ついた傍から魔法で治したから、傷跡なんかないけれど。


それを見て、たぶん僕は色々と足りないと思う。血を吐いた経験もない。目の前で、誰かが死んだ経験もない。――誰かを、殺した経験もない。


だから強くなれないというのは、ただの僕の思い込みなのだろうか。

あの日アインに救われたように、僕は誰かを救いたい。その一心だけでは、強くなれないのだろうか。



だからこそ、僕はこっそり魔法を練習していた。いつか、アインに救われた恩を、返せるように。いつか、後悔しないように。


僕が個人戦の出場に立候補したのは、自分がどれだけ強くなったのか。それを知りたかったからだ。


どれだけ上級生に通用するか。僕は、知りたい。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「胸を、お借りします」

「へえ、貴方が対戦相手なの……。私はさっきのよりも強いけれど、痛い思いをしたくなければ、さっさと降参しなさい?」

「さっきのが先鋒で出てきて、怖いんですか?」

「……へえ、言うじゃない」

僕たちは、武器を構える。大ぶりの短剣。僕は、そもそも懐に入られたら終わる、魔術師!だから、これで十分だ。



「もっといい武器があったんじゃないかしら?」

「僕は、水属性にも適性があります。だからこそ、アインさんが持たせてくれたんですよ』

「へえ、あのとんでもない剣?でも、使い手が貴方じゃ、意味ないわね」

「さあ、やってみないと、分からないんじゃないでしょうか?」

僕は、アインに教わった通りに、虚勢を張る。オドオドするより、こうした方が強く見え、勝手に相手が委縮(いしゅく)してくれる。


それに、これは何の変哲(へんてつ)もない短剣だ。アインの武器は、どうやら精霊が宿っているらしく、その精霊とアインは契約を結んでいるのだという。

とても簡単に言うと、あの刀と短剣は、誰でも使うことはできるけれど、氷を纏わせたり、なんてことはできないのだ。


どうやら、精霊の力を使っているらしい。確かに、あの刀には、とんでもなく神秘的な空気が流れている。側にいるだけで、清らかになるような、涼やかになるような……。



そういうとんでもない武器だからこそ、ハッタリにも使える。この短剣は、装飾は豪華だ。あえてこれを持ってきたともいう。


アインが、事前にこの刀を使う、と言ってくれたから、僕だってそれに近い雰囲気の短剣を用意した。



「用意――始め」

その声と共に、僕は魔法を構築する。


「ウォーターボール」

「アースウォール」

相手の女子生徒が出した土の壁に、僕の魔法が吸い取られてしまった。


「アースニードル!!」

「亜空間収納」

「へえ、敵の魔法を仕舞ってどうする気?」

「言う訳ないでしょ!!」

僕は、相手に向かってウォーターランスを繰り出す。

しかし相手はそれをまたアースウォールで防ぐ。


乾燥した土の壁に、水の相性は悪い。


「ほら、攻めあぐねてないかしら?さっさと降参した方が、身のためよ!!」

「そうかな?僕はまだまだ魔力に余裕があるから、もっと行くよ。――驟雨(しゅうう)

この魔法は、水属性魔法の威力を上げて、その他の魔法の威力を半減してくれる魔法だ。水属性の魔術師なら、この魔法は必ずと言っていいほど使う。

けれど、それは僕のような複数属性持ちにはデメリットもあるため、相手もまさかこの魔法を撃ってくるとは思わなかったのだろう。


以前の僕なら、絶対に使わない魔法だった。僕の取り柄は、複数属性持ちだけだからだ。だからこそ、自分からそれを打ち消すような真似はしない。


でも、それが最もいい方法なのなら、僕はこれからも使っていこうと思う。



「面倒くさいわね。でも、アースドーム!これで問題……」

確かに、アースドームは形成された。しかし、想像よりも小さかったのだ。


「な、なんで!!」

「この空間は、水属性の魔術師にとっての独壇場だよ?さあ、さっさと負けを認めて――」

「――なんて言うと思った?」

その瞬間、地面から何かが出て、僕はその何かに囚われてしまった。


僕は、相手に気を取られて、地面に何も警戒をしていなかったのだ。


「これからは覚えた方がいいね。土属性の魔術師相手に、今立っている大地が味方に回る訳ないでしょ」

「くッ……」

「さあ、降参して……」

相手が、ゆっくりと近づくその足取りは、まるで自分の勝ちを確信しているかのようだった。

ゆっくりと、ナイフをこちらに向けながらこっちに来る。一向に、僕はこの拘束から()()()()


「これで貴方の――」

僕はその瞬間、水属性魔法を多重展開する。



「魔法ってね、兄さんが言うには奥が深いんだって。なぜなら、オリジナル魔法も作れちゃうから」

僕がそう言った後、相手が立っている大地が、相手を攻撃した。



「な、なんで!!」

「確かに、大地はいつも土属性魔術師の味方だ。でも、それならなんで水は常に水属性魔術師の味方じゃないの?」

「まさか!!」

わざわざ雨を降らせたのは、確かに水属性魔法の威力を強めるため。そして、土属性魔術師の得意分野を殺すためでもあるのだ。


「僕の、勝ちですね!」

「……はあ、認めるよ」

「やった!」

「勝者、ルーデウス・ディ・ソルセルリー!!」

審判が、僕の勝利の宣言を下すと同時に、僕たちのクラス席から歓声が沸き起こった。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「さすがですね、ルー」

「いや、それほどでも……///」

アインに褒められるなんて、照れる。


「それに、あの雨はよかったです。まさか、使う属性を水属性のみに限定するという、ミスリードをさせるなんて」

「あ、アインにはばれてたか……」

当然のように見破られていた。


「僕を魔法で騙すなんて、まだまだできませんよ」

「え、使ってた魔法、水属性だけじゃないの?!」

「うん。実は、魔属性魔法も忍び込ませていたんだ」

サティが驚いてくれただけでも、満足だ。


「混乱の効果を付与する魔法ですね。それで、相手の判断力を低下させた」

「嘘!そんなことをしてたなんて!!」

アインの説明は、とても的確だ。サティは僕がしていたことに驚いていた。


「心理戦だからね。警戒して、一気に来られていたら、ちょっと難しかったかも」

「でも、まさか吸血鬼の力を参考に魔法を作るとは……」

「いつか、使えると思ったんだよね」

「吸血鬼?」

サティが不思議そうな表情をする。確かに、そう言えばアインは学園に入ってから、吸血鬼らしいことはしていないかも……?


「吸血鬼って何よ、教えてよ!!」

「吸血鬼は吸血鬼!!」

「お、落ち着いてください。僕も、隠している訳ではないので……」

「あ、アインって、人間じゃないのーー!!!???」

サティの大きな声が、僕たちのいる天幕を揺るがした。

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