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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第五章 Unidentified
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無茶ぶりと危険人物

『次は、借り物競争です。この競技に出場するハリエット委員会に代わり、私シャーロットと』

『僕、モーリスがお送りします』

『さて、解説のシルクリーンさん、この競技の見どころはどこでしょうか?』

『それはもちろん!お題に「好きな人」と出され、今まで友人同士だったあの子が妙に気になる……男同士なのに、という展開ですね!!』

『どうやら聞く人を間違えたようですね、この危険人物には気を付けてください』

僕は、今日は生徒会席ではなく、クラス席にいた。そこでこんな放送を聞いたのだ。


「なんというか……個性が強いね」

「ルー、よくわからないのですが、マティ様から彼に会わないように、と言いつけられているのです」

「逆にこの放送を聞いておいて、分からないの!?」

「はい」

ルーは頭を抱える。別に、ルーもサティもあまり変わらないように見えるのだが。二人はいい人だから、そこまで酷い人とは思えないのだ。



「確か、この借り物競争に、マティアス様も、ハロルド様も、サティもフィンレー様も出ているよね?」

「はい。サティはともかく、マティ様やハロルド様、フィンレー様が出場されるとは、思いませんでした」

「そうだよね。それに、カーティス様は出場されていないみたいだし……」

「それも意外でした」

そう会話しつつ、僕は視線をグラウンドに向ける。そこには、マティ様とハロルド様、サティ、フィンレーがいた。更に、そこから離れてラファエルもいる。結構知り合いが出場している。


これは学年混同競技だからか、他にも生徒会長、シエル様、ノエル様が出場している。と思ったら、向こうも僕たちを見つけたらしく、手を振った。僕は礼でそれに返した。


また僕たちのクラスの方へと目を向けると、今度はサティが手を振っている。僕はまた礼で返す。ルーは手を振り返していた。



「借り物競争って、定員五人の筈なのに、こんなに知り合いが出るなんて……」

「そうですね。リレーよりも知り合いを見かけます」

リレーよりも定員はずっと少ないのに、なぜかすごく見かける。あ、今生徒会長がヴォンジョン様に揶揄われている。

昨日の生徒会長、風魔法も使っていたのに物凄く遅か……これ以上は何も言うまい。



『はいーさっさと定位置についてくださいねー、委員長と生徒会長』

「わ、私も!?」

どうやら、生徒会長はみんなから愛されているらしい。



『位置について、用意――――ドン』

その掛け声とともに一気に走り出した。


『まず最初に辿り着いたのは、ラファエル君ですね。お題の書かれた紙を一つ開きます。どんなお題が書かれているのでしょうか』

『用意したのは、我々放送委員会ですからね!好きな人とか、初恋の人とか……』

『誕生月が同じ人や、適正属性が同じ人とか、そういうものしかありませんから、安心してください』

『いや、一つ何とかして紛れ込ませたぞ!!』

『あとでモーリス君は教師からお話があるそうです』

『僕はその時間、絵を描くのが忙しいと言っておいてくれ、シャーロット!!』



――もう既に言ってる。



僕はそう思わずにはいられなかった。



「ええっと、自分より明るい髪の人……?無理だろ!!!」

「ラファエル、白髪なのに自分より明るい髪の人だなんて……」

「ものすごく運が悪いですね……」

「それに、白髪の人なんていましたか?」

「ぼ、僕は知らない……」

ルーは震える声でそう言った。それは、ラファエルが永遠にゴールできないことを意味する。


「おいアイン!白髪の人間知らないか!?」

「知りません」

「終わった……」

がっくり膝をつくラファエル。その哀愁(あいしゅう)漂う姿は、ただただ哀れだ。


「探しますよ。――流石に、可哀想なので」

「ありがとう!!」

僕は、こっそり蝙蝠を飛ばす。まあ、明るい髪色はいるが、そもそも白髪は見当たらない。どこにいるかな。



「頭痛い……」

「ああ、そうか。情報量が多すぎるのか」

「一気に蝙蝠とばしすぎた……」

「そこまで必死にやらなくてもいいからな」

「うん……」

蝙蝠から情報を受け取ろうとすると、一気に脳に直撃した。最近、半年前程精力的に情報を集めていないから、忘れていたのだ。


「あ、いた」

「いたのか!?」

「えっと、4-Eのところの女子生徒。頑張って」

「ありがとな」

ラファエルは僕に礼を告げて去っていった。


『生BL!生BL!』

『やめなさい』

放送委員がうるさい。言葉の意味は分からないが、なんだかイラっとする。



「アイン」

「マティ様、どうしましたか?」

マティ様は、どこか剣呑(けんのん)な雰囲気を漂わせながら、こちらに近づいてくる。ルーがちょっと委縮(いしゅく)していた。


「ちょっと落ち着いてください、マティ様。ルーが怯えていますよ」

「ああ、すまないな」

「いえ……どうしましたか?」

「なんでもない。それより、行くぞ」

「はい……?」

マティ様は、僕の手首を掴み、歩き出す。僕も慌てて歩き出した。


「マティ様、お題は何ですか?」

「秘密だ」

マティ様は、僕を掴んでいる方とは逆の方の人差し指を口に当てる。いつも浮かべる不敵な笑みは、逆光も相まって、格好よく見えた。


『生BL!生BL!』

『やめなさい』

さっきも聞いた放送を聞きながら、僕たちはゴールへと向かう。まだラファエルは白髪の少女を見つけれていないようで、誰もゴールの前にいなかった。



『ゴール!!』

僕たちは、一着だった。ファンパッション様とシルクリーン様が魔道具を持ってこっちに来る。


『さて、王太子殿下のお題は何だったのでしょうか?』

『最も信頼できる人、だ』

マティ様がシルクリーン様から魔道具を強奪(ごうだつ)し、魔道具に向けてそう言う。

僕は、マティ様の言葉の意味が理解できると、顔が真っ赤になってしまった。


「最も、信頼できる……」

「ああ。俺の命は、お前にしか預けられないからな」

マティ様が、そう言って、僕の頭を撫でる。僕はやや俯いていたので、慎重さも相まって、マティ様が穏やかな笑みを浮かべていることに気が付かなかった。


「生、B…L……!!」

そう言って、シルクリーン様が倒れた。僕がびっくりしていると、マティ様が僕とシルクリーン様の間に割って入る。


「こいつは危険人物だ。お前は近づかない方がいい」

「わ、分かりました……」

僕たちは、そのまま全員がゴールするまで、その場で待機していた。


ハロルド様は、お題がハーフアップの男性で、カーティス様を連れてきた。

サティは、お題が眼鏡をかけている人で、ルーと一緒に来た。

フィンレーは、お題が茶髪の生徒で、ジェシカ様をエスコートしていた。

会長は、お題が適性が水属性のみの人で、クァッド様と走ってきていた。

シエル様は、お題が不真面目そうな人で、ロレンツォを引っ張ってきていた。

ノエル様は、お題が土属性魔法を使える人で、2年の先輩らしき人を引っ張ってきていた。



「何で、不真面目そうで俺なんだよ」

「だって、ホスト教師は不真面目そうでしょ?」

「誰がホスト教師だ!!」

ホスト教師と言われたくなければ、きちんとした服装をすればいいのに。


ちなみに、ラファエルは三着だった。ようやくの思いで見つけた白髪の女子生徒を、横抱きにして走ってゴールしていた。

何とかゴールできたようでよかった。

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