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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第五章 Unidentified

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リレーで無双

開会式が始まり、学園長の話や、保険医の話が終わった後、生徒会長が壇上に上がった。


「これから、魔法祭の開催です!ルールを守り、互いの魔法を切磋琢磨して、実力を高めていきましょう!」

生徒会長の挨拶も終わり、諸注意も終わり、開会式が終わった。



「最初は……リレーですね」

「行ってきます!!」

サティは、いくつかの種目に出ることになっている。元気だな……、と年寄りじみたことを考えながら、元気よく生徒会席から飛び出していったサティを見送る。



「わあ!?」

「キャッ、ご、ごめんなさい!!」

「うん、いいけれど……気を付けてよ?」

「はい!すみません!!」

「「「「「……」」」」」

サティが、生徒会長にぶつかったらしい。

思わず、そこにいた全員で、顔を見合わせた。



「サティさんは魔法祭、楽しみにしていたんだね……」

笑いながら、生徒会長がやってきた。


「……大丈夫なんでしょうか」

「あれでも美形だからな。案外何とか……なってないか」

マティ様が苦笑いしながら、言い直す。なってないから、いじめにあっていたり、僕にサティを見守らせたのに気が付いたのだろう。


「あら、マティ様はああいう子がタイプかしら?」

「まったく。見ていて楽しいと思うがな」

「確かに~。ああいう元気っ娘、可愛いよね~」

「でも、僕たちとちょっと被るんじゃない?」

「キャラ被りだね~」

「先輩方はむしろ、俺と似てるでしょ~?」

「「確かに~」」

ウィリアムズ様兄弟は、どちらも背が低い。声も男性にしては高めだ。

確かに可愛いのかもしれないが、僕はどちらかと言えば、カーティス様に雰囲気が似ている、と思っていた。


「それをよく自分で言えるな」

「こういうことは――」

「自分で言わなきゃね!!」

クァッド様は、ウィリアムズ様兄弟に、呆れかえっているようだ。



「あ、そろそろ最初の種目が始まるね」

会長が穏やかに微笑みながら、そう言った。



リレーは、魔法を使える方と、使えない方の二通りある。


魔法を使える方は、他走者への妨害は初級魔法のみ可能。重傷を負わせることは反則だ。自分に対しては、中級魔法以上も使ってもいい。観客からの妨害、助力は禁止。

だからこそ、足が遅くとも、魔法の使い方を工夫すれば、優勝を果たすこともできるのだ。


魔法を使えない方はとても簡単で、魔法を使わずに、単純な脚力で競い合う。ちなみに両方とも、魔道具の使用は禁止だ。


それぞれ学年別で競い、一年生からリレーをする。



サティは、魔法が使える方にエントリーしていた。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



選手が入場し、全員が配置につく。サティは、トップバッターのようだ。



「位置について!――用意……ドン!!」

スターターの魔法が打ちあがるのと同時に、全員が一気に走り出す。

生徒が自クラスを応援し、あたりが喧騒(けんそう)で包まれる。


『始まりました、今年の魔法祭!そのスタートを飾るのは、毎年恒例一年生のリレーです!』

『解説を送るのは、私、副報道委員長であるシャーロット・フォン・ファンパッションです』

『実況は、報道委員長のハリエット・ディ・ヴォンジョンです!!!』

報道委員会は、こういう行事ごとの放送や、この一週間で学園で起きたことを記事にしている新聞の発行などをしている。


テンションが高いヴォンジョン様と、淡々としているファンパッション様の実況解説を聞きながら、僕はリレーを観戦していた。



これは当然、魔法を使えるので、身体強化魔法を全員自分にかけた。


『あれ~?開幕他の選手が身体強化魔法を使うなか、サティ選手、一切の魔法を使っていませんね~?』

『何か考えがあるのでしょうか。しかし、段々遅れているのは認めざるを得ません』

「何故サティは魔法を使っていないんだ?」

ハロルド様が不思議そうに言う。


「これって……」

「恐らくそうだな」

僕たちは、なんとなくサティが何をする気なのかに気が付く。



「融合!!」

『おおっと!!突然、サティ選手以外の身体強化魔法が解除されました!!代わりにサティ選手にかなり強力な身体強化魔法が!!

一体どういうことでしょう、シャル君!!』

『サティ選手は、特待生としてこの学園に入学した経緯があります。その内容は、確か融合魔法があるからだとか。

恐らく、他選手の身体強化魔法を融合し、自分に適用したのでしょうね』

『なんとわかりやすい解説!!おおっと、他選手の魔法を応用し、他選手の足止めに活用していますね!』

サティは、Bクラスの選手が使った風属性魔法と、自分の火属性魔法を融合し、それを妨害に使っていた。


『彼女にとって、この競技はまさに天職ですね!!おおっと、圧倒的大差をつけ、サティ選手、次の選手にバトンを渡す!!』

『さらに自分にかけた魔法を次の走者にかけていますね。ルール上それをするのは禁止されていませんが、サティ選手の融合魔法は、とんでもないものですね』

「ワンサイドゲームだな」

圧倒的な試合展開に、ハロルド様が苦笑いする。


「これ、サティを侮っていらした貴族に対して、とてもいい脅しになるでしょうね。遠回しに、サティに魔法は通じないどころか、自分のものにしてしまえるのですから」

友達の活躍に嬉しいのだろう、ジェシカ様がとても満足そうに笑っていた。


「さ、流石Sクラスになれるほどの実力持ちだな……」

ラファエルは、完全にひきつった表情をしていた。



ちなみに、一年生のリレーで優勝したのは、僕たちSクラスで、次点はラファエルが所属しているAクラスだった。

サティが作った大きな差を、他クラスは全く埋めることができずに終わったのだ。

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