変わらぬ会話
ep.27で、おかしい所を訂正しました!
今日は、魔法祭当日だ。魔法祭は、二日間かけて行われる。
「わあ、楽しみです!!」
サティが、楽しそうにはしゃいでいる。
「いっぱい頑張ったし、大丈夫、大丈夫、大丈……」
「ルー、もうちょっと落ち着いてください」
「あらあらルー、これを飲んで、落ち着きなさいな」
ルーが目を回していると、ジェシカ様からの救いの手。ルーは、ジェシカ様から手渡されたグラスの中の水を飲み干し、一息ついた。
「あ、ありがとうございます、ジェシカ様!!」
「お嬢様なのに、準備がいいね~」
勢い良く頭を下げるルーと、ジェシカ様の準備の良さを感心するカーティス様。
「ルーは若干あがり症気味だから、事前に用意しておいたのですわ」
「あれ?そんなにルーと仲良かったっけ?」
カーティス様の疑問に、僕も言われて初めて気になった。確かにあまり、一緒にいないような……。
「カーティス、敬語だ」
「別にいーじゃん~。ね~ジェシカ」
「カーティス!!」
「なに嫉妬?怖~い」
ハロルド様とカーティス様のいつもの掛け合いが始まった。サティも、よく生徒会で見ているから、慣れたものだ。
「ハロルド、諦めろ。カーティスは昔からああいう男だ」
「はあ、もっとちゃんとしてほしいんですがね」
「きちんとしなければならないときには、きちんとしているから、問題はないだろう。……それにもう既に、痛い目には合っているからな」
「今、何を?」
「なんでもない。お前も、もう少し砕けたらどうだ?」
「さすがに王族相手には……」
「お前も、相変わらずだな」
これもまた、何度も聞いたことのある会話だ。こういうやり取りをするたびに僕は、カーティス様とハロルド様は似た者同士だと思ってしまう。
「アイン、期待している」
「はい、ご期待に沿えるよう、がんばります」
僕は胸に手を置き、一礼する。それにマティ様は、満足そうに頷いたのが分かった。
「あ、もうそろそろ生徒会専用の席にいかなきゃですか!?」
「あ、そうなんだ……。サティ、がんばってね」
「はい!ルーこそ、がんばってください!!」
この二人は、訓練を重ねて、より仲良くなった。やっぱり、ちょっと遠慮していた部分もあったのだが、等しく僕に叩きのめされているうちに、何か通じ合うところがあったのだろう。
ちなみに、聖水を何度も作っているうちに、僕の表情が引きつっていることに気づかれた。そこから、僕が聖水をかなり苦手にしているという事も、芋づる的にばれてしまったのである。
それはもう、かなりの笑顔で僕に聖水を放ってくるのが怖すぎた。僕、そんなに二人を傷つけていたかな……?
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
Side Gabriel
私は、生徒会席に座る殿方をじっと見つめていた。
「ああ、今日も麗しいですわ……!」
「そうですわね、マルティン公爵令息様にアイン様……!あ、こちらを向きましたわ!」
「最初は愛想のない、つまらない男だと思っていたのに、ここまでハマるなんて計算外ですわ……。こ、今度、私の専属護衛にならないか、提案してみるのはいかがかしら!?」
「ああ、いいですわ!とてもいいお考えです!」
「あら、ガブリエル様、ずるいですわ。私も、あの方にも守られたいですわ!!」
取り巻きとそんな話をしながらも、決して目線はカーティス様とアイン様に釘付けだ。
――ああ、本当に麗しいですわ……!
私がアイン様の麗しさに気づいたのは一月前のこと。食堂を利用しようとしたその日にさかのぼる――。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「今日は何を食べようかしら」
「そうですわ、私は――あら、食堂が何やら騒がしいですわ」
「あら、貴族の癖にはしたない。どうせ、自らが貴族という自覚がない、下級貴族が原因に間違いありませんわ」
「それか、平民ですわね」
「あら、平民なら、私たち貴族に阿って、ここで食事をしないのがマナーでしょう?食事の時まで平民の卑しい顔を見ないといけないのは嫌ですわ!!」
「そうですわ。ここで食事など、図々しいですわ。流石、空気の読めない平民、と言ったところでしょうね」
「うふふふふふ」
私たちは、平民の陰口を言い合いながら、いつもより騒がしい食堂の中へと入っていく。するとそこには、王太子殿下と、その婚約者であるグラッチェス様、そして王太子殿下の専属護衛であり、平民のアインがいた。
あの私のカーティス様を誘惑しようとする平民女を庇った平民男だ。何をそんなに騒いでいるのかと、目を向けると、あの普段から仏頂面の男が笑っている!?それに、それが幼くて、可愛い……いや、相手は平民で……!
しかも、なでなでしている……のですわ!王太子殿下が笑顔で、平民男に!!
「破壊力抜群ですわ……」
「あんな表情、できたんですのね」
「可愛い……可愛いですわ!!」
「猫みたいですわ……。ああ、なでなでしたい……」
「殿下の表情も、普段より柔らかで!!それを見つめるグラッチェス様も素敵……!」
「ああ、もう……限界ですわ………」
「ガブリエル様!!」
あまりの眼福さに、私はとうとう気絶してしまった。
目を覚ますと保健室におり、取り巻きたちが涙目だった。ちょっとすまない気持ちが湧いたが、その日、私たちはそろって平民男――アインに恋をしてしまったのである。