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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第五章 Unidentified

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悪魔の性質と天夜の息子

Side Shuya


「やあ、久しぶり」

「お、お前は……!」

「そんなに警戒しないでよ、カナシイなァ~」

オレは、前に吸血鬼と一緒に戦っていた天使に声をかけた。


「何でここにいる……!」

「何でって……たまたま?」

適当に返すと、天使は明らかに嫌そうな顔をした。ここで攻撃しないのは、賢い選択だ。

ただ、なんか過剰に警戒されてるような……。



「あれ?吸血鬼から聞いてない?」

「なにを?」

「政略結婚のハナシ」

「誰と誰が」

「オレと吸血鬼が――」

にやにやと笑みを浮かべながら、そんな衝撃の事実を言おうとした瞬間だった。


急に視界がぶれて、体に衝撃が走った。


「あ……ラファエル、大丈夫!?」

「あ、ああ……。大丈夫だが……」

「本当に?なにもされていない?」

「いや、それより……」

どうやら、天使はオレが言ったことが気になるのだろう。



「悪魔、さっさとここから去れ」

「なあ、アイン――」

「うーん、どうしようかな~?」

「なあ、さっき――」

「どうする?今すぐここで戦ってもいいけれど」

「アイン、お前――」

「お、楽しそう~」

「ちょっとは俺の話を聞け!!」

吸血鬼は無意識だろうが、オレはあえて天使をムシしていた。

ソレに腹に据えかねたようで、天使が怒った。


「アイン!政略結婚ってなんだよ?!」

「……政治や経済の観点から、有益な人間と姻戚関係を結ぶことを目的とした結婚です」

吸血鬼は、突然の質問に混乱したのか、辞書の文のような言葉しか返していない。


「いや、そうじゃなくて、お前と!悪魔が!結婚って!!」

「冗談でもやめて。そんな気持ち悪いことを言うの」

「傷つくな~。そんなこと言われるなんて」

「は……?」

天使が大きく顔をしかめる吸血鬼と、ゲラゲラ爆笑しているオレを見比べて、呆気に取られている。


「たとえ僕の半身がこの悪魔でも、僕は絶対に拒否する。そもそも僕の半身はこの悪魔じゃない」

「ツレないな~。オレ、泣いちゃうよ?」

「安心して、泣く前に殺してやる」

「……」

天使は理解したのだろう、さっきのはオレのウソだという事に。



「悪魔の言う事は、九割信じない方がいい」

「そんなウソつきみたいな……」

「事実でしょ。――ラファエル、行くよ。こんな奴と、話している時間がもったいない」

吸血鬼が天使の手を掴んで、歩き去ろうとしていた。

オレは、その背中にこう言ってみた。


「返事、待ってるよ」

「待つ必要はない」

「わあ、情熱的ィ~」

「死ね」

吸血鬼は、ホンキでオレのことが嫌いなのだろう。とんでもない殺気を放たれた。



「グッバ~イ~♡」

「さっさと学園から去れ」

俺は、満面の笑みで手を振った。吸血鬼は舌打ちをし、天使とともに歩き去っていった。



「あんなにガラが悪くなっちゃって……。キミのお兄さんやお姉さんたちが悲しむよ~?」

まあ、オレには関係ないか。美人の舌打ちって、割とご褒美になるんだよな~。



オレは、まっすぐ学園の外へと歩き出す。


「さすがに、天夜は月影様には負けるよな、顔は。あの人が負ける美形は、御影様、雨影様――いや、珠玉(しゅぎょく)様の方がお美しいか。流石に一度顔を見ちゃったのが痛かったな~」

そう久遠語で言いながら、自分の足を見て、苦笑いを零す。


「別に、強制的に追い出さずとも、俺は素直に出ていくのに」

吸血鬼の能力の一つ、操声術は彼岸の力に耐性がないか、一度でもその吸血鬼に見惚れたら、かかってしまう。ということは、その吸血鬼が美しければ美しいほど、操声術は強力になる。


オレはむかし、月影サマの顔を見たことがあった。半身じゃないのにもかかわらず、見惚れてしまったのだ。

よく親族の悪魔どもが騒いでいたのが、理解できた。これは騒ぐ。



「あ~あ。天夜にも会いたかったのにな~」

学園の外に出た。そこで足は止まったが、また学園に侵入する気はなくなった。



いくら月影サマが美しくとも、天夜の許可がなければ妻に迎い入れる訳にはいかない。それに、身分的に正妻は月影サマ、側妻は天夜になってしまう。流石に、半身をそんな扱いにはしたくないが、月影サマを娶った以上、そうしなければならないだろう。

それに、月影サマと天夜は仲がいいから、それでも天夜がなじられる訳はないだろうけど。



「でも、息子に会えたからいいか。やっぱり、天音は天夜に似てるな~」

オレは、天使――ラファエルの顔を思い浮かべる。あまりに天夜に似すぎている我が息子は、オレに似ている所を探しても、全く見当たらない。



「少しは俺に似てもいいだろ」

まあ、天夜は線が細かったが、天音はそうでもない。そこはオレに似ているのか……?



「ああ、いつか一緒に暮らしたいなァ~」

そのためには、やらなきゃいけないことがある。だからオレは、裏切り者として、情報を集めることにした。簡単に、邪神を倒せるように。



「天使は契約を必ず守ろうとするから、天夜との結婚も、時間の問題か……」

思わず、笑みがこぼれる。自分の半身を娶れるのだ、それ以上に幸せなことはない。


「天夜も、月影様も、あまり政治のことは詳しくないのに、なんでこんなにも複雑に巻き込まれているんだろうな。――まあ俺には、天夜と天音以外はどうでもいい」

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