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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第五章 Unidentified
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悪魔はここにいた

魔法祭まで、残り二週間だ。だれがどの種目に出るのか、もう既に決まっている。



僕とカーティス様は、他の種目に出そうとするマティ様にどうにか頼み込んで、魔法戦のみの出場にさせて貰えた。


明らかにマティ様のご機嫌取りをする僕たちを見て、サティやルーからもちょっと冷たい目で見られた。


流石に、なりふり構わず過ぎた。だが、そのかいあってか、マティ様は僕たちを他の種目に出させることはしなかった。


本当にマティ様には感謝している。クラス中から、僕に出て欲しいと説得されるのだ。

でも、僕が出るのはあまりいいことではない筈だし、これでいい。


ちょっとしたブーイングを聞き流しながら、カーティス様と勝利の喜びに浸った。

2人とも、マティ様の浮かべていた笑みには気づかずに。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「さて、これが申請書だ。順番も必要だが、どの順番にするか?」

「そうですね……恐らく、身のこなしからして、僕、マティ様、カーティス様は確実に勝てるのではないでしょうか?」

「お、俺……?」

「そう思うか?」

カーティス様はバツが悪そうに、マティ様は面白いものでも見たかのように、そう言った。


「はい。そもそもマティ様なら、殺気を出すだけで十分でしょう?カーティス様も、魔法を使った身のこなしはかなり上手そうですし。

ただ、ルーやサティは戦闘経験というものがないため、直前でひるむ可能性があります」

「戦いのスペシャリストに褒められるなんて、光栄だな」

「隠しているつもりだったんだけど」

「確かに、人に向けて魔法を撃った経験がないからな、僕は」

「私も!」

皆、僕の言ったことに納得したらしい。


「この中で一番強いのは、お前だ。だから、お前が大将だ」

「マティ様、流石に王族や貴族がいるのに、平民が大将なんて、聞いたことがありません。ぜひ、先鋒をやらせてください。必ずや圧勝して、敵方に圧を与えましょう」

「うわ、お相手かわいそ~」

僕は胸に手を置き、自信満々に言い切った。マティ様は顎に手を置き、何かを考えている。カーティス様は、とてもいい表情を浮かべている。悪魔の表情とも言える、そんな……。

僕の本気が伝わったようで何よりだ。


「わかった、それでもいい。だが、確実なのはもちろん、派手に倒せ。いいな?」

「了解いたしました。いくつか手を用意いたします」

マティ様が、意地悪く笑う。ちょっぴり、僕はまだ見ぬ僕の対戦相手に、ひっそり同情した。



「となると、次鋒はルーだ。いいな?」

「は、はは、拝命いたします!!」

「ふ、緊張しすぎだ。お前は、魔法の手数で相手を黙らせろ」

「分かりました!」

「次にカーティスは中堅だ、頼むぞ」

「俺は副将の方がいいのでは~?」

「副将はサティだ。それは変わらん。

それと、お前の上目遣いは何も感じない。アインの爪の垢でも煎じて飲めば、何かは変わるかもな」

「ぼ、僕……?」

確かに、僕はマティ様より背が低いから、自然と見上げる形にはなってしまうが……。上目遣いが可愛いと言われるのは、女性ではなかっただろうか……?



「アインには甘いのに、俺には厳しいんだ~。もうちょっと、オレに優しくしてくれても、よくな~い?」

「アインが先鋒にこようが大将にこようが、大して変わらないからな。だがお前は変わる」

「そんな訳……」

「中堅に来るような奴が、碌に実践経験もない女子生徒に相手ができると思うのか?副将なら、まだ戦いようがある。たったそれだけだ」

言うことを聞かない子供に言うことを聞かせるように、マティ様はカーティス様にそう説明した。だが、まだカーティス様は不満そうだ。



「俺ならできると?」

「俺が間違っているとでも?」

「いや、そういうんじゃ……」

本当に、マティ様は追い詰め方が上手いというかなんというか……。答えを、自分が望むように操っているのだ。有無を言わさない気迫、それこそ、九星の僕ですらひるむほどの殺気の一部だ。



「どうせ、マティ様には誰も逆らえませんよ。――ところで、戦闘訓練をしませんか?」

「もちろんだ。お前がいるからな、俺はなかなか剣を握る機会がない」

「ありがとうございます」

そもそも、護衛対象に武器を取らせる時点で、護衛失格だ。


「せ、戦闘訓練……」

「はい。クラス全体で行った方が効率がいいかと思いますが……」

「効率がいい、か。それを言えるのは、お前くらいなものだ」

マティ様は笑いながらそう言う。そうして、昼休憩中のクラス全体に声をかけた。



「戦闘訓練がしたいものは、今すぐ申し出ろ。他国の軍人が、直接手ほどきしてくれるそうだ」

「他国の軍人……?」

「一体、どなたなのでしょう?」

「王太子殿下のコネクションか。面白そうだな」

ざわざわと、そんな会話が教室中から聞こえる。それが収まると、ほとんどの生徒が手を上げていた。

ちなみにその中に、ジェシカ様とハロルド様、フィンレーはいなかった。



「お前らは、もう少し自衛を学べ」

「それは優秀な護衛に任せますわ。私は、その護衛の邪魔にならないよう、逃げる方法の方を教えていただきたいわ』

「はい。俺も、あまり武道や魔術に才能がないので。下手に学ぶより、学ばない選択を取ります」

「俺の周りは()()性格をした人間ばかりだな?」

「「……」」

僕とカーティス様は、咄嗟にマティ様から目を逸らす。何とかして、出る種目を一つに制限して貰ったのだ。それが、マティ様の意向にそぐわないのは、僕たちは痛いほど理解していた。


「普段しない荷物持ちをしたり、食堂の席を取ったり……。面白かったぞ、お前らがそこまでするとはな」

僕は、マティ様の護衛であり、従者ではない。そして、カーティス様は、従者として仕えるというよりは、仕えられる側だ。



「話が脱線したな、今日の授業が終わった後、すぐに訓練場に武器を持って集まれ。いいな?」

「「「「「承知しました」」」」」

綺麗に返事が重なる。その時僕は、どんな武器で訓練をするか、思い悩んでいた。

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