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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第五章 Unidentified

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鬼人の底力

Side Lars


俺は、酒場でエールを煽っていた。ぐびぐびジョッキの中のエールを飲み干し、おかわりを要求する。


「プハーっ、もう一杯!」

「兄ちゃん凄い飲みっぷりだな」

「みていて気持ちがいいぜ」

「この俺と飲み比べしてェって奴はいねェのか?」

俺は酔ったようにそう騒ぐ。


「俺が負かしてやらァ!!」

「この俺に勝てたら、お前の酒代、全部(おご)ってやるよ」

「じゃあ俺が負けたら、俺と飲み比べした奴全員奢ってやるよ!」

自信がある男どもが次々にエントリーする。俺は、エールの追加を頼み、次々に飲み干す。対戦相手の男どもも負けじと飲み干すが、結局俺に勝てずに次々と潰れていった。



「まじか、さっき潰れたやつ、ここいらで一番強いやつだぞ!?」

「一体どれくらい酒が強いんだよ……」

流石に引かれてしまったか。それに、もうそろそろだな。

俺は、人知れず酒場全体を観察する。


「じゃあ俺もう出るわ。飲み比べ、楽しかったぜ」

そう言って、俺は金を置く。


「この金で飲め!俺の奢りだ!!」

「「「「「うおおおおおおぉぉぉぉぉおおおおお!!!!」」」」」

「兄ちゃん格好いい!!」

「太っ腹な奴は好きだぜ!!」

たちまちどんちゃん騒ぎになる。俺は、こういう酔っ払いの空気が好きだ。騒がしくて、楽しい。



俺は、どことなくおぼつかない足取りで、暗い裏通りを歩いている。どことなく不吉な予感を完全に無視し、俺はそのまま歩いていった。



「お兄さん、大丈夫ですか~?」

「ああ!俺はまだ飲める……」

「肩貸しますよ~」

急に見ず知らずの男が話しかけてきた。俺はそれに返すと、男はオレが酷く酔っていると判断したのだろう、俺の腕を取り、自分の肩に回した。


「よっこらしょっと。さあ、どこに送りましょうか」

「んん~ここじゃないところ~」

「わかりました」

男は、俺がまともに返していないのに、男はどこかへとずんずん歩いている。ちなみに、俺の屋敷とは正反対だ。



「ほら、着きましたよ~」

「ああ、もうか~」

ついたのは、寂れた雰囲気が漂うところだった。そこにある宿の中に入っていき、男はハンドサインで何かを指示していた。


すると、カウンターの奥に誘導される。そこには、地下へ通じる階段があった。その階段を下った後、素朴で古びた宿の雰囲気が一変し、清潔で不気味な雰囲気が漂い始めた。

内心ちょっと今の状況を楽しんでいると、とある部屋の前に辿り着いた。


その部屋のドアを開けると、拷問器具に囲まれた空間の中央に手錠が付いた椅子がぽつんと一つ。床は鉄臭く、赤いものがこびり付いていた。

そして、その中に一人、男がいた。



「はあ、警戒した割には、簡単だったなw」

「それでいいじゃねえか。奴らに一泡吹かせれるぜ」

「だな」

そう話しながら、俺を慣れたように椅子に括りつける。



『ノア兄、拘束された』

『分かった。こっちも待機できたよ』

『じゃ、一暴れするわ』

俺がテレパシーをしているともつゆ知らず、にやにやとこちらを見ている。


「なあ、まず手始めは何にするか?」

「これがいいんじゃないか?ほら、コイツ、拷問された跡がないしさ、拷問されたことがないんじゃねえか?」

「楽しそうだなァ。俺も混ぜてくれよ?」

「「なっ!!」」

まさか、一瞬視界から外したときに、拘束を抜け出すとは、思わなかったのだろう。


「こンな安物(ヤスモン)じゃァ、俺を拘束することなンかできねェよ」

そう言って俺は二人の目の前で、椅子についていた手錠をプラプラさせた。

それを見た男たちは絶望の表情をする。


「お、お前……あんなに酔っていただろ!!」

「たったあれだけで、酔えるかよ」

「エールを二十杯飲んでただろ!!」

「いや、三十。俺、鬼人だからさ、酒にめっぽう強いんだよなァ」

そう言いつつ、角を生やす。



「「う、うわあああぁぁぁぁぁああああああ!!!!!!!」」

「うるせェな」

俺は二人を殴る。ぐちゃ、と音を立てて二人が倒れる。倒れこんだ二人は、首から上がなかった。



「さァて、暴れるとするかァ」

俺は手の骨を鳴らし、部屋から飛び出した。薄く開いた口から、鋭くなった犬歯が鈍い光を反射していた。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「やりすぎ」

「すみませンでした……」

俺は、出会うやつ全てを殴り殺しまわった。

ノア兄は、流石に数人くらいは生かしておいてほしかったらしく、返り血に染まった俺を見て、そう苦言を呈した。


そんな俺を見て、ノア兄の後ろにいた騎士たちは怯えていたが、今は職務を全うしている。そんな中、俺はノア兄に正座させられて、延々と叱られていた。



「今日は、ウィキッドの拠点破壊と同時に、他の拠点を炙りだそうとしていたでしょ?だから、生け捕りをする必要もある、って何度も説明したよね!?」

「すみませンでした」

「まあ、こっちの方で生け捕りにしたやつもいるけどさ、ラース君の方が事情を知っている可能性が高いでしょ?だからそっちでも生け捕りしてほしかったのに……」

「すみませンでした」

「いい?今ちょっとウィキッドの動きが活発になっているから、拠点はできるだけ潰しておきたいのに……」

「……」

ちょっと、足がしびれてきた。


「あ、あの……」

「なに?」

「イエ、ナニデモアリマセン……」

ノア兄がガチギレしている。これは、逆らわない方がよさそうだ。

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