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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第五章 Unidentified

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見直した途端……

Side Cyril


コンコンコン。窓からノックの音が聞こえ、不審に思ってカーテンを開ける。

そこには、黒髪の青年がいた。


「――て、アイン君じゃないか!なんでここに?」

「ちょっと用があったので」

急いで窓を開け、アイン君を招き入れる。今日は休日、学園は授業がない日だ。


「そもそもなんで窓……?正面から入ってこないの?」

「正面には騎士がいるので」

「あ……」

そういえばこの子、まだ男性恐怖症が治ってなかったんだった。


いつの間にか失声症が治っていたから、男性恐怖症もそうだと思っていたが、何とかしただけで、治ったとは言われてないからね……。

アルフに対しても、今でも不意にあったときに固まっているみたいだし。アルフが嘆いていた。



それにしても、自分よりガタイのいい男が苦手というのも、戦闘をするとき大変そうだな……。だから、無理やりにでも大丈夫にしたのだろうが。



「それにしても、用って?僕は全く思い当たりが……」

「シリルさん、禁書の閲覧(えつらん)許可をください」

「いいよ。どういう内容を知りたい?」

「歴史書です。ちょっと、行き詰っている所があって……」

なんとなく、アイン君は疲れているように見えた。


「アイン君が行き詰まるって、珍しいね」

「いえ……行き詰っていないときなんか、ほとんどないですよ」

アイン君は首を振りながらそう言う。


僕は、アイン君を禁書庫に案内した。


禁書は、本当に取り扱いが難しいもの、考え方が危険なものが主に収納されている。だから、急に禁書を見せろと言われても、見せることができない、というのが関の山だ。


アイン君は、マティによく懐いているようだから、信頼している。アイン君にとって、マティは命の恩人だからだろうね。



「僕はここにいるね。読み終わったら声をかけて」

「はい。ありがとうございます」

アイン君は、もう既に本に半分意識を取られていた。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「シリルさん、起きてください」

「ん……?あ、いつの間に寝てたか……」

「おはようございます。色々と、ありがとうございました」

「いいよ。アイン君は禁書の内容、変なことに使わないと、信頼しているからね」

僕は禁書庫の鍵をしっかり閉め、図書館から外に出た。



「アイン君、学園はどう?」

「楽しいですよ。今まで、こういうことをしたことがなかったので、新鮮です」

「マティが迷惑かけてない?」

「そんなことないですよ。血も定期的に分けて貰っていますし……」

「それならよかった」

どうやら、マティはアイン君に手を出していないようだ。僕がそんなことを心配しているのもつゆ知らず、アイン君はホッとしている僕を不思議そうにしている。


「そうだ、もう魔法祭の時期でしょう?今、生徒会は忙しいでしょう」

「はい。でも、僕は生徒会長や副会長よりも仕事が少ないので……」

「マティは将来、この国の王になるんだから、今のうちにこき使っておく方がいいんだよ。これから公務も始まるし、仕事をすることに慣れておいた方がいい」

「僕は……」

「そもそも君は専属護衛でしょう。書類仕事なんて、本当はしなくていいの」

アイン君は、結構献身的だ。それに報いるようにマティが色々と手を回している。


ノア陛下がアイン君に叙爵する準備は、一応できている。あとは、本人の意思くらいなものだ。そこまで手を回すのは、アイン君が将来自分の出自で頭を悩ますことがないように、だろう。



「でも、貴族になれば、少なからず書類は書かなければならないので、僕にとっても貴重な経験ですよ」

「あれ?貴族になりたくないんじゃ……」

「なりたくないですよ。でも、ノア兄さんの胃痛の原因にもなっていたらしく、本気で泣きつかれたので……」

遠い目をするアイン君。本当に嫌なんだろうな……。


「それに、それ以外のものも強制的に受け取らされたので、元々無駄なあがきだったんです」

「ああ、だからか……」

「だから……?」

「ああ、こっちの話だから」

流石に、マティにも外堀を埋められているとは思うまい。アイン君、本当に抜けている所もあるから。いや、流石にそういうところもなくなっちゃったかな。



「アイン君、魔法祭は何に――あ」

「あ」

「きゅぅ……」

やっぱり、男性恐怖症は全く改善してなかったか。


曲がり角でアルフと鉢合わせしてしまい、アイン君は気絶した。それを見てあたふたするアルフ。そういえば、ここはよく騎士団員が使う通路だった。別にアルフでなくてもよかったのに、アルフと鉢合わせた挙句、気絶。


流石に、ここまでよく気絶されて、アルフが可哀想になっていた。



「あ、アインは大丈夫か!?」

「貴方が受け止めてくれたから、大丈夫だよ」

「団長……」

僕がアルフを落ち着かせていると、後ろから声がした。振り返ったら、そこには副団長や他の騎士団員も……。



「団長が子供を虐めて……」

「うわあ、そんなことをする人だったんですね……」

「あれ、その子って……」

副団長が、こそこそと取り巻き?の団員と話し始めた。しかし、しっかりこちら側に声が聞こえている。


ちなみに、副団長は性格は悪いがアルフと仲が悪い訳でもない。堅物なアルフをいつも揶揄って遊んでいる。副団長はアイン君のことも知っている。前にアイン君に気絶されなかったので、揶揄う種ができたと笑っていた。他の団員は、あまり知らなさそうだ。



「しばらく寝かせていたら、回復するからアルフ、診療所に連れて行ってくれる?」

「分かった」

アルフは繊細なものを取り扱うようにアイン君を抱き上げていた。多分、そこまでしなくてもいいと思うが……とは言わず、いつまでも笑い続けている副団長を置いて、看病のためにアルフについていった。

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