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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第五章 Unidentified

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せめて一撃は!

Side Sattie


――ふ、不安だ……。



私は、そこまで強くないと思う。確かに、複数属性持ちで魔法を融合することができる。

魔法を融合することは、かなり難しいが、それをやるだけの価値はある。


まず、複数の魔法の相乗効果がある。

例えば、火属性と水属性を混ぜると、霧を生む爆発を起こす。水属性と風属性では氷魔法を使えるし、光属性と聖属性では、回復と浄化の効果が付与される。


それによって、手札が増えるのだ。だから、一般的には魔法を融合できる人物はかなり強力になる。


魔法の扱いが難しい分、少ない魔力で高い威力を生み出すこともできる。

難易度に目をつぶれば、本当に強力なのだ。



それでも、実戦経験がない私を、マティアス様が選んだ理由が分からない。



それともう一つ。武器必須なのだ。いや、別に盾だけでも武器になるらしいけれど、それでも私はそんなものを持つこともなかった。それに、テンもサージェントもヒューも包丁より大きい刃物を持っているのを見たことがない。


だから、私はものすごく不安なのだ。



最近、アインの槍捌きを見たからかもしれない。


流石にそれと同じようになることは一切考えていない。流石に無理だし。……どうしよう。



という事を、アインに相談してみた。結局、そういう方面で一番頼れるのはアインなのだ。

学園にある食堂で、スイーツという名の賄賂(わいろ)を贈る。アインには、自分が食べたいだけなんじゃ、とジト目されてしまったが、無視することにした。


テーブルの上に合計四つ。そのうち一つはアインのケーキだ。



「成程、確かに、女性は普通武器を振り回すことはないですからね。それに、初めてなら気後れもしてしまいますし」

「そうなの。短剣でいいのかな……。でも、持ったことないし……」

よく貴族の女性が持っているイメージがある。……小説の読みすぎ?


「武器なら、短剣より槍の方が扱いやすいですよ。初心者向けの武器です。しかし、やっぱり刃がついているので、杖の方がいいかもしれません。杖は槍より間合いは狭いですが、槍より軽いですし安全です。それに、素材を工夫すれば魔法を強化できますし」

「別に、魔法主体の人って、武器とか持たないんじゃ……」

「ナイフは普通に持っていますよ。刺し違える覚悟で持っているんです」

「そうなんだ」

全部魔法で解決するから、何も持っていないと思った。でもそうか、杖も武器になるなら、魔法使いはみんな武器を持っていることになるのかもしれない。ほら、魔法使いはみんな杖を持っているイメージがあるから。


自分が杖を持っていないのは、この際無視しておく。



「どっちにします?僕は、杖の方がお勧めですよ」

「学園は、武器を貸し出してくれたりとか……」

「してくれますが、どうやら長剣か槍くらいらしいですよ。貴族は自分で武器を持ち込みますから」

「だから、武器を持ち込むこと前提だったんだ……」

なんとなく納得した。私は平民だから、武器なんか一切持っていないけれど、貴族なら持っていてもおかしくないのか。



「武器は、自分で調達するしかないのか……」

「困ったら言ってくださいね」

アインの優しい声が心にしみる。本当にアインっていい子だよね……。



ちなみに私はケーキ三つを食べ終わっていて、アインは半分くらいしか食べ終わっていなかった。ケーキをもう一つ頼もうとしたら、流石にやめておいた方が……と言われてしまった。

私は渋々アインが食べているのを眺めているにとどめた。アインはものすごく食べづらそうだった。



「本当によく食べますね……」

「甘いものは別腹でしょ!!」

「あまり食べすぎないでくださいよ?それに、夕食入りますか?」

「入らなそうなら、走るから!!それに、ここのご飯美味しいから、ついつい食べ過ぎちゃうんだよね~」

「……」

何とも言えない表情をするアイン。マティアス様とか、ハロルド様とかなら、太る、とか言いそうなものだけど。



「アイン!」

「なんでしょうか」

食堂のどこかから、聞いたことのある声が聞こえた。そこへ視線を送ると、ラファエルさんがいた。


「俺はお前に絶対勝つ!」

「そもそも戦えるといいですね」

「それを言うなよ……」

「対戦表を見ましたが、ラファエルががんばっても厳しいと思いました」

「え……」

それで、やや呆然としていた。


「4年生と当たらなくて、よかったと思うべきなのか、すぐに僕のクラスと当たらなくて不運というべきか……」

「……だが、相手は3年生だろ?」

「そうなる可能性が高いですね」

「……」

「Aクラスに、もう二人強者がいれば、たぶん大丈夫だと思います」

「が、がんばって!」

あまりに可哀想だったから、応援してしまった。


ラファエルさんは、Aクラスの魔法戦の代表になるらしいから、敵になるだろうけれど。ラファエルさんも、物凄く強いよね……。



「アインは、やっぱり大将なのか?」

「言っていいのかどうか不安ではありますが、恐らく違いますね。メンバーに確認した上、お教えしますよ」

「頼む。――倒す、なんて夢物語は言わない。だが、せめて一撃は入れる!」

「楽しみにしています」

ラファエルさんは、アインにそう宣言する。アインは無表情のままではあるものの、強者の余裕というものが漂っていた。

なんだか、こういう空気いいな、と思った。

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