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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第五章 Unidentified
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ラファエルの気になること

Side Raphael


俺の半生は、全てペスケ・ビアンケだ。


物心つく前に、母親がまだペスケ・ビアンケを設立する前のギルマスに俺を預けた。

ギルマスは、前世では一児の父だったらしい。だから、まだ赤ん坊だった俺を育てることができた。


その話を聞かされ、俺は母親に捨てられたとショックを受けたものの、ギルマスへの恩義を感じた。

当時のギルマスも、俺より2,3歳くらいしか違わなかった。


そこで、オレに前世の記憶があると気づいたギルマスは、急遽ギルドの方針を変え、転生者のみのギルドにした。


そうして入ってきた奴らは、気のいい奴らだ。早とちりでやらかすこともあるが。

……いや、かなりやらかすと言い換えてもいいだろう。



ギルマスは、俺の母親について、ほとんど教えてくれなかった。


俺が知っているのは、天使であること、父親はいないという事。そしてその母親の名前が――テンヤであるという事だ。

女性なのに、男性名なのはちょっと気になるが、そこの地域では一般的なのだろうか。


一応、俺の母親は白髪赤眼らしい。



それに、どうやらアインによると、俺は彼岸の本能がかなり薄いのだという。力の使い方もわからない、自分が死ぬ方法もわからない、魔障を察知できない。

血はかなりいいと言われたが、全く生かせていないらしい。まあ、ウルガは混血らしいが、俺とほとんど差はない。



俺は、何かを忘れている気がする。いや、気のせいか。



ともかく、俺はほとんど前世の延長線で生きてきたようなものだ。今まで魔法の魔の字もない日本で生きてきたのだ。

だから、魔法が使える世界に興奮して、魔法を使いまくった結果、魔法を複数展開できたうえに、魔法を融合する技術も身に着けた。


それに、魔法を撃つのに必要な魔力量も少なくなった。この世界では、魔法の腕が上がった、と言うらしい。

ギルマスが俺の魔法を見てドン引きしていた。だが、俺が天使だから魔法が強力なのか、と思った。


「うん、動きはよくなっているかも。魔法だけはなんでこんなにうまいのか……」

そうアインが小さく呟いたのを知っている。俺は、アインに身体能力で全く敵わないらしい。



これ、もし俺が本能とかあれば、どれくらい強かったんだろうな……。少なくとも、翼生えていることに感動して空を飛びまくってよかったと思う。

空中戦は及第点らしい。ウルガはあまり空を飛んで戦っていなかったから、空中戦が下手だった。


過去に俺の興奮と感動の犠牲になった魔物に大いなる感謝を。



そんなこんなで俺はこの異世界転生生活を過ごしていたのだが、学園に侵入した悪魔で、なんとなく不穏さを感じ取った。

なんとなく、誰かに似ているような……。だが、俺が知っている相手と言えば、ペスケ・ビアンケの連中か、生徒会の奴ら、Aクラスの奴らしか知らないが、そこに奴に似ている人物なんぞいない。


アインが一番悪魔らしいが、案外優しい上に多分ちょろい。アインが悪魔と化すのは、鍛錬している間だけだ。

それに、悪魔のベクトルが違う。アインは鬼畜的な悪魔だが、奴は不気味さが勝る。


それに、見知った顔。一体誰のことだろう。俺は見覚えがなかったし、サティさんは誰かわかっていないらしい。

アインは、問答無用で攻撃していたし、案外知っているのかもしれないが、あのアインが後を付けられるへまを犯すだろうか?


なんだか、今まで平和だった生活が、加速度的に崩れていくのを感じていた。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「悪魔の殺し方……?それは、ちょっと……」

アインに悪魔の殺し方を聞いた。別に、殺す気はない。まだ、俺は人間に近いやつを殺す覚悟は、ない。


「彼岸なら、他種族の殺し方なんて、聞かないのがマナーだ。僕が知っているのはたまたま天使とちょっと約束事を交わしたことがあるからね。悪魔は――自分で調べた」

「他は?大体聞いたらすぐ出るだろ」

「聞いたらすぐ出ると言っても、たまたま関わる機会があった彼岸くらいしか知らない」

「じゃあ、吸血鬼の殺し方は?」

「僕から一本取れたら教えてあげる」

そうは言うものの、絶対取らせてくれないだろうな、と考えながら、またアインとの鍛錬に戻った。



「ああ、そうだ。まああまり関係ないと思うけれど、悪魔は本当に気を付けて。――悪魔は、衝動があまりないんだ」

「はあ!?ズル!!そういう俺もまだ衝動を経験したことないけどさ!!」

「だから、半身を拒否して他に行くこともよくある困った種族なんだよね。それに、一番被害を受けるのは、妖狐とその血を引いている魔族――特に吸血鬼と天人も被害にあう」

ちなみに目の前の男は吸血鬼だ。あまり公言していないが。



「妖狐はとても美しい容姿を持ち、あまりの美しさに人間社会に混乱をもたらすほどだ。そして吸血鬼も美を保つことにかなり意識を置いている種族だ。

天人は、血で美しさが決まる。それに妖狐も天人も、吸血鬼も物凄く弱い。その上美しいものだから、力づくで囲って娶り、侍らす。その方法がかなり強引だから、その三種族と天使に物凄く嫌われている」

「なんだかわかるな。話を聞いただけで嫌いになった」

「だから、少なくとも悪魔に敵うくらいには強くなって」

「至急強くならなければならない理由ができた。アイン、さっさと鍛錬開始するぞ!!」

その後の鍛錬は、物凄く集中したのは言うまでもない。

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