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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第五章 Unidentified

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可能だが、したくない

「この小説、面白いね」

「そうですね、僕はあまり小説は読まなかったのですが、これは本当に面白いです」

「ならアイン、これはどう?はまると思う」

「試してみます」

そう言って、僕はルーから一冊の本を受けとる。タイトルは、”精霊探偵クロエの事件簿”。精霊と話せる主人公クロエが、身の回りで起きた殺人事件を解決していく……。


「……」

僕は無言でルーを見つめた。



僕は、ルーと共に学園の図書館にいた。ルーから、図書館に行こう、と誘われたのだ。


「あれ?あまりこういうの、好きじゃなかった……?」

「いえ、そんなことはないですよ。ただ、それをおすすめされたのは、二人目なので」

「成程」

ルーがほっとしたように笑う。


正直、精霊を題材にした小説は少ない。先日サティから紹介されたときも、驚いた。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「生徒会、忙しい?」

しばらく小説について話し合ったあと、突然ルーがそんなことを言った。


「いえ、今はそこまでですよ」

「あ、そうなんだ。アイン、毎日生徒会室に通っているから、忙しいのかな、って遠慮してたんだ」

「それはすみません」

生徒会長曰く、あと1、2ヶ月で繁忙期に入るらしい。


僕は、精霊たちがうるさいから、毎日通っているだけだ。でも、精霊たちがいないと成り立たないことかあるから、日々の感謝の習慣なのだ。他国で言う、宗教と似たようなものだ。


それが忙しく見えていたのかもしれない。精霊は一匹一匹が小さいが、量がとんでもない。

それに話せることをいいことに、リクエストがうるさい。

これでなにもしないなら、僕はキレてたと思う。



「なら、ちょっといい?実は、相談したいことがあって……」

「なんですか?」

そうは言うものの、ルーはもごもごと何かを言うだけで、一向に話し出さない。

僕は、ゆっくりルーが話し出すのを待つ。


一分くらい経っただろうか、ルーが覚悟を決めた様子で顔を上げた。



「適正属性を増やす方法は、ある?」



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



Side Rudeus


「適正属性を増やす方法は、ある?」

僕がアインに聞きたかったのは、これだ。



僕の家、ソルセルリー家は秘密裏に魔物の研究を行っていた。その際、適正属性を増やす方法についての記録もあったのだ。


知識がなく、ほとんど内容は分からなかったものの、恐らくそう書いてあった。



僕がじっと見ていると、アインは厳しい表情をして、こう言った。


「――あります。しかし、僕はそれをする気はありません」

「何で――!」

「ルー、ソルセルリー家の二の舞になりたいのですか?」

「二の、舞……?」

「人間の体は、とても脆い。ソルセルリー家は、人体実験に手を出していないとでも思いましたか?」

「まさか……」

「あの時から、ソルセルリー伯爵は実権を失い、名ばかりの当主となっています。それも全て、あの件を闇に葬り去ったからです」

「はい……」

突然そんなことを言い出したアインに、少なからず、冷や汗がでる。


「ソルセルリーの隠し部屋には、いろんなものがありました。それも、口にするのははばかれるものまで」

「……」

「人間は魔法を使える者が限られますが、魔族は違います」

「はい……」

魔族は、確か全員魔法を使うことができると、聞いたことがある。


「人間と魔族の違い。それは、体の構造です。魔族は、特別体が強い。だから、魔法を使える者が多い」

「体が強いから、魔法が使える……?」

「そもそも、強力な力はそれなりに代償があります。あまり有名ではありませんが、魔法についても同じです」

そこで、アインは言葉を切る。少しの間、沈黙が支配した。



「そもそもルーは、適性がかなり多い方です。それも、僕よりも」

「それは、そうだけど……」

「光属性も、闇属性も、汎用性は低いけれど、水属性はかなり汎用性が高くて羨ましいですよ」

「ありがとう……」

「魔属性は、光と闇よりも珍しいですし」

「確かに、そうだね……」

「魔法は、適性の多さではなく、使い方で大きく変わります。何故適正属性を増やしたいのかは、無理に聞きません。

しかし、強くなりたいだけなら、魔法を練習すればいいですよ。同じクラスにラファエルがいますよね?彼に魔法を教わればいいですよ」

「ありがとう!」

アインは本当に優しい。本当に、アインと友達でよかった。


涙で視界がぼやける。アインがハンカチを差し出してくれた。



「僕、兄さんと比べて、適正は同じくらいだけど魔法はあまりうまくなくて……。ずっと、兄さんと比べられていたんだ……」

サティさんを助けた時も、そうだ。あそこにいたのが兄さんだったなら、素直に彼女たちは言うことを聞いただろう。

半分は同じ血を引いているのに、兄さんは本当に格好いいし……。



「あれは……変態だと思いますが」

アインが小さく何かを呟いたが、僕には全く聞こえなかった。



「ともかく、変えたいのなら見た目から変えるべきかもしれません……。僕も、マティ様の護衛の任につくならば、それ相応の振る舞いをすべきだ、と。そう言われたことがあります」

「それ相応の振る舞い、か……」

確かに、アインが平民と侮られることはない。堂々としていて、下手な貴族よりも貴族らしい風格があった。

それに、兄さんも高位貴族だらけの中でも全く霞んでいない。

やっぱり、そういうところなのかな……?



「ただ、僕もあまりそこについて詳しくはなくて……」

「そうなんだ……」

「で、でも、ジェシカ様なら詳しいかもしれません……!」

やや控えめに言われた言葉に、僕はふと不思議に思った。



――あまり詳しくない、という事は、自然にあの風格を出している、という事?確かに強いだろうけれど、どこか高貴な雰囲気もあるのは、元々だった?

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