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必ず死ぬ君を救うには  作者: 七海飛鳥
第一章 初めの第一歩

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アインを攻略する方法

ジェシカの髪と瞳の色が間違っていたので変更します!


深紅の髪に、琥珀色の瞳→ベージュの髪に、紫の瞳

Side Matthias


「マティ!大丈夫なの!?突然倒れて、何か悪い所はないかしら?」

「大丈夫です、母上。ところで、俺はどれくらい寝ていました?」

「3,4時間位よ。ねえ、マティアス。本当に大丈夫なの?明日の顔合わせで倒れられたら困るわ」

「大丈夫です。体もいつもより快調です。お気になさらずに」


この押し問答は絶対数時間は続く。はっきり言って面倒臭い。母上が心配なさっているのは嬉しいが、でも本当に大丈夫なんだ。……というか、明日なんだな、ジェシカ・フォン・グラッチェスと会うのは。



彼女は所謂悪役令嬢だ。そんな彼女は、常に未来の王妃として努力を惜しまなかった。そして何より、彼女はマティアスを深く愛していたのだ。


だが、婚約者であるマティアスは、ヒロインと恋に落ちた。幼き頃からずっと一緒で初恋の相手でもある婚約者を、たかが会って数ヶ月の少女に奪われたのだ。



しかし未来の王妃として、婚約者を取られたからと、物理的に嫌がらせをすることはできない。よって、会うたびに嫌味を言っていた。

ただそれだけだが、プレイヤーの心を確実に抉る嫌味ばかりだった。彼女は努力する天才だ。その類稀な彼女の頭脳が、嫌味へと向いたら当然、どれも効果絶大な言葉のナイフとなるのだ。



正直俺は、彼女を愛することはできない。俺は同性愛者だし、好きな人はいるし。どうやって彼女との婚約を回避しようか。いや、そもそも王太子である俺が、男と恋愛するのは許されない。



――気が重いな。



俺は人知れず溜息を吐いた。ちなみに、アインが嫌いそうなこの性格については、今は目を瞑らせて欲しい。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



――翌日


「今日はお日柄もよく――」

「誠に嬉しゅう申し――」



定型文から始まるお見合い。はっきり言って、乗り気じゃない。記憶を取り戻す前はこんなんじゃなかったんだけどな……。



「じゃあ、あとは本人たちだけで」

その言葉と共に、俺とジェシカ嬢は二人きりにされた。

俺は、母上の言葉通りに、幾つかある庭の一つである薔薇園へ彼女をエスコートする。



彼女は乙女ゲームの主役格であるために、やはり美しい。ベージュの髪に、紫の瞳。今はあどけなさもあり、可愛らしいが勝っているが、十年経つ頃には、美しい令嬢に育っている事だろう。

はあ、そんな彼女を愛せないのが心苦しい。



「マティアス様。私からお話がございます」

やはり彼女は聡明だ。6歳でありながら、もう既に落ち着いた物腰だ。俺も6歳ではあるが、中身は大人なので、例外ということで。



――というか、ジークも物凄く落ち着いているよな。5歳だぞ?普通はもう少しやんちゃで賑やかなんじゃないのか?



「なんだ?」

彼女からの話。緊張する。だが、聞かない訳にはいかない。


「私、他に好きな人がいますの。ですので、この婚約はお断りしたいのです」

「好きな人、とは?」



――初耳だな。ジェシカ・フォン・グラッチェスには、俺以外に好きな人がいたのか。……そんな話、ゲームでは聞かなかったけどな。



「言えませんわ」

ニッコリ笑いながら、口元に手を添える。その姿は、そんじょそこらの令嬢にはない、淑女らしさがあった。



「俺ではないのだろう?」

「ええ、違いますわ」


王子にこういう態度をとれる豪胆さは、淑女らしさとはかけ離れているが、それでも彼女の淑女、という印象は薄れない。



だが、ゲームの中のジェシカ・フォン・グラッチェスは、ここまでの女傑ではない。確かに優秀で天才だ。しかし、それは同年代にしては、という域を離れない。俺は彼女に小さな、しかし確かな疑問を覚えた。



――一か八かの大勝負を仕掛けてみるか。



「そうか。ではジェシカ嬢。一つ質問がある。転生者、という言葉を知っているか?」

「―――!!――ええ、知っているわ」

彼女の言葉使いが変わった。俺は、予想が的中したことに、口角を上げた。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



Side Jessica


「転生者、という言葉を知っているか?」

私は、マティアスの言葉に驚いた。何せ、私自身が転生者だったから。



私の前世は、乙女ゲーム『白愛』の製作チームだった。私はゲームのプログラムを担当していて、ゲームの内容は全て頭に入っている。ゲームでは書かれない裏設定も熟知していた。例えば、ヒロインの出生の秘密なんかも。



ヒロインは、桃色の髪に白い髪が混ざっていた。これは、黒髪に金と赤が混ざっているアインと、同じ理由だ。つまり、ヒロインとアインは顔見知りだった。


それだけではない。ゲームでは九星はでてこない。その理由も。あのゲームは、まるで続編があるかのように、何もかもが中途半端に終わったのだ。



まあ、続編は存在した。その内容は、マティアスルートハッピーエンド後の、子供たちの物語だ。そこで明かされていなかった裏設定が全て放出される。親世代の物語は、布石だったのか!と言いたくなるような内容で、これを思い描いたシナリオライターは、才能がある、と思った。



そのシナリオライターは、どこか現実離れしていた。なんとなく、この世ならざる者だと思っていた私の勘は、当たっていた。私は交通事故に逢い、命を落とした後、他ならぬ彼に、とあることを依頼された。



「あそこにテーブルと椅子があるわ。そこに座ってゆっくりと話しましょう」

私はマティアスに転生した人に向けて言った。



――ああ、彼がジェシカ推しだったらどうしようかしら……。



私には、推しがいる。その人物は、目の前にいるマティアスじゃない。彼の一つ下の弟、ジークハルト様である。



「そう警戒するな。別にこちらだって好きで婚約したい訳じゃない」

「本当?じゃあ、誰と一緒になりたいの?サティ?それとも他の誰か?」

「……あまり言いたくはないが」

「いいじゃないの。それに、私、貴方と貴方の推しがくっつくの協力するわよ」

私は言い渋る彼を言いくるめる。そこまで言いたくないなんて、特殊性癖抱えているのかしら?


「ハァ、いいか、笑うなよ。――アインだ」

「――成程。だから()()()()()()()()

納得した。どうしてマティアスが転生者なのか。どうして私はジェシカだったのか。



――やってやろうじゃない。



「協力するわ。私の目的と一致しているし。それに、下手したら一筋縄じゃいかないわ」

「それはありがたいな。では、こちらは貴様の好きな相手と婚約させてやろう。誰だ?婚約したい相手とは」

「――その口調は意識してなのかしら。それとも無意識で?まあ、いいわ。私の推しはジークハルト様。じゃあ、交渉成立ね」

「ああ。――これは仕方なくだ。誰も嬉々としてこういうのをやっている訳じゃないからな」

少し不満げにマティアスは言うが、アインを攻略したいなら、はっきり言ってそういうキャラになった方がいいのを私は知っている。

あの子、裏設定を見た時に、ドン引きする位設定が盛り込まれてた。あの子の性癖を見た時に、じゃあ何で仲違いしたんだ、あの主従!と叫んだ記憶は懐かしい。



「アインを攻略するにあたって、色々と教えてあげるわ。だから、頑張ってアインを落としてよ」

「ああ。勿論だ」

「じゃあまずは俺様の勉強を――」

「なんでだ!」

だってアインは、好きな人に対してだけ、ドMなんだもの。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆






















「どうか、私の好きなあの世界を救って欲しい」

いつも風に漂う布のような彼は、嘆くように私に願う。薄緑の髪は、風がないのにはためいていた。



「ゲームでも救われてるでしょ?」

「本来、結ばれるべき者達が結ばれなくなった影響で、大きな歪を生んでいる。それによって、世界が崩壊してしまうんだ!」

「え……?」

絶句した。あのゲームで結ばれるべき者達……。一組しか思い当たらない。



「あの二人は、一緒だと、物凄いパワーを生み出す。愛の力だ。だが、それがないと魔王――いや、邪神を完全に亡ぼせない」

「ただ、倒すだけじゃ駄目なの?」

「うん。()()もそれで逃してしまったから。だから、今から君に依頼する。どうか、邪神によって引き離された運命の恋人たちの仲を、どうか取り持って欲しい」

私の意識はそこで途切れる。

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